異世界の入り口はハローワーク!?
お仕事小説コンに応募しました。
この応募の為に一からプロットを練ってみました
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ここは都内に存在する普通のハローワーク。別名、職安とも呼ばれいる。ここでは毎日、多くの人が仕事を求めて訪れる場所。だが、此処には一カ所だけ普通では有りえない部門が存在する……
「次の方お待たせしました」
受付に並んでいると、前の男性が話を聞き終えて自分の番が回ってくる。
「……求職者登録を頼む」
現在、受付で対応してもらっている男性はハローワーク初心者である。高卒で就職していたが、数年で自主的に退社してニート生活を送っていた若者だ。この男は仕事は出来るが、コミュニケーション能力というか、人付き合いを苦手としている。相手の気持ちを読み取れない。てか、他人に興味を持てない人間であった。その瞳には生気を感じられない。死んだ魚の目を表現している。身長は173センチと平均的であるが、全体的に線が細い……インドア派だ。
「はい。それでは、この用紙に必要事項の方を明記して下さい」
この男性の担当をする事になった職員は30代半ばの女性だ。
①職安からの連絡方法の選択
②氏名 (フリガナ)、生年月日、現在住所
③希望職種、希望収入
④学歴
⑤免許・資格
⑥今まで経験した仕事
受付から用紙を渡された男性は面倒そうにしかめっ面で受け取り、用紙に記載していく。無事に記入が終えた男性は用紙を受付に提出する。
「相田千尋さんですね。希望職種は特に希望は無しですが、接客業以外で……高収入でとの事ですが、少しだけ厳しい条件ですので、難航すると思いますよ」
受付は少し難しい表情で言葉を紡ぐ。高収入の仕事は
「そうですか」
男性―――――いや、相田は冷めた感じで職員の言葉に頷く。
「では、奥の部屋のパソコンをお使いください。気になる求人がありましたら、印刷をしてから受付までお持ちください。その後に、簡単なカウンセラーの方とのお話がありますので、その時に聞いておきたい事などがありましたら、お聞きください」
受付の女性は相田に手順を説明した。そして、仕事を探すのに利用するパソコン室に案内する。本日は利用者数が少ないので、番号札を配る必要もない。利用者数が多い時にはこうはならない。下手すれば、パソコンを使うまでに待ち時間が在る事もある。
相田はタッチ式のパネルを器用に操作して、求人情報を探す。色々な求人情報を眺め始め一時間程の時間が流れる。すると、そこに騒ぎ出す者が現れた。相田も視線をそちらに向けた。そこには、髪を金髪に染めた短髪の青年が居る。耳には左右2つずつのピアスを付けている175センチ程の男が騒いでいた。
「いい仕事が見つからんじゃねぇぇかぁぁ!!」
この男も相田と同じ理由でハローワークに訪れていたのだ。そして、自分の望む仕事が見つからずに騒ぎ出した不届き者である。そこに受付の女性が駆け寄る。
「お客様、当施設ではお静かにお願いします」
「何が、職安だよ! 希望の仕事が見つからねぇぇじゃんか!!」
男の希望する仕事は高収入で楽な仕事であった。具体的に言えば、週休三日。月給は五十万以上である。そんな仕事がゴロゴロとある筈もない。その為、見つからない。
「でしたら、少しグレードを落とされたらどうでしょうか?」
受付の職員は騒ぎの沈静化を図る為に奮闘するが、男には意味が無かった。
「これ以上も落とせるか! お前じゃ話にならねぇ! 責任者を呼べ! オレが直接話をつけてやるからよ!!」
男の中では、これが最低限なレベルであったのだ。驚くことに。いくら宥め様としても男は引き下がらない。これに観かねた他の職員が上司に連絡を入れる。
男が騒ぐ事、十分弱が経過した頃にその男は現れた。
「前田ハン、後はワイが引き受けるさかい。あんさんは先に業務に戻ってや」
「青野課長! 分かりました。後はお願いします」
ずっとチンピラのお守りをしていた職員――――前田は一礼して業務に戻る。
「誰だよ? ここの責任者か?」
急に出てきた青野という男にチンピラは訊ねる。
「責任者は前原主任やけど、今は不在や。だから、ワイが代理ってわけや。まぁ立ち話もなんやし、お茶でもどうや?」
男は妙にフレンドリーな青野という壮年な男性に視線を向ける。男性にすれば、小さ目で170センチには届いていない。少し中年太りといっただけで何の特徴もない関西弁のオヤジ。それでも、課長という単語を耳にしていたので、黙って男は青野に付いて部屋を出ていく。
場が静かになり、職探しに来た者達も自分の机に戻り、仕事を探す。相田も同じようにパソコンに視線を戻す。その時に画面に違和感を感じる。
トップページに戻り、ページの開いてる部分をクリックして、そのままスクロールする。すると、文章の背景が青く表示される。構わずページ全体を範囲にする。
「……本当にあった」
トップページの一番右下にそれはあった。白い文字、背景と同じ色の文字で書かれた項目。普通にしていたら見れない文字。スクロールすることでそれがあらわになる。
『隠れ項目』
隠れ項目の内容に相田は目を見開く。その項目とは――――異世界人材派遣というものであった。相田は悪戯とも考えたが、ハローワークのサイトにその様な悪戯があれば、信用問題にも繋がる。それだけ、リスクのある事だ。だが、怪しい。しかし、相田の好奇心と直感がこの項目をクリックしてしまう。
クリックして次のページに飛ぶと、そこには注意事項が書かれていた。
1.異世界の事を他言してはならない。
2.異世界の物を無断で持ち帰ってはならない。
3.こちらの世界の物を異世界に持ち込んではならない。
4.こちらの世界の情報を教えてはならない。
5.異世界で性に関する関係を持ってはならない。
6.異世界での法律を破らない
【YES / NO 】
相田は少し悩むが、YESを選択する。ページが飛び『584s7jk1478』の文字が出てきた。これを入力しないと次に進まない。面倒と思いながらも手を動かす相田。
次の画面に飛ぶ。
「これをコピーして受付に出せばいいのか」
これにて一応は終了とのこと。
言われた通りに印刷した用紙を手に持ち、受付に向かう。受付には誰も並んでいなかった。待つことが嫌いなので、相田はラッキーと思いながら用紙をを無言で受付に出す。
「っ!? ……少々、お待ちください」
用紙を見た受付は驚きながらも用紙を受け取り、職員専用の奥の部屋に駆け込んでいった。
(この反応は、本物みたいだな)
相田自身も半分は悪戯だと考えていた。
「お待たせしました。これから担当者の場所にまで案内させていただきます」
五分ぐらいの時間で先程の受付嬢が相田の案内の為に戻って来た。少しして応接室に辿り着く。受付嬢がノックする。
「失礼します。先程に申し上げた方を御連れしました」
扉の奥から「入ってくれ」と返事が来てから受付嬢が扉を開ける。
相田もそれに続く形で部屋に入る。
「いやぁ~、あんさんか。自力でアレを見つけてきたっちゅうんか。自力で見つけれる人は珍しいんやで。凄いやんか」
見覚えのある男性が部屋の中に居た。パソコン室で騒ぎ出した男を連れて部屋から出て行った男だ。名前は青野だ。たしか、課長と呼ばれていた男だ。青野は関西弁で喋りかける。
「あれは、やっぱり本当だったんだな」
「異世界ってことは本当や。
ハローワークでは異世界での仕事を施錠する部門が存在する。
「では、自己紹介といこっか。ワイは青野っちゅうモンや。よろしゅう頼んますわ。役職は課長やけど、使いっ走りに近いもんやけどな。あはははは」
右手を差し出して陽気に笑う青野。
「相田です」
陽気な青野に陰気な相田という、真反対な二人が手を握る。
「それにしても、相田ハンは暗いなぁ……昔の自分を見ているみたいやさかい」
過去の自分と相田を比べながら、感傷に浸る青野を無視して話を進める相田。
「そうっすか。正直、話を進めてもらえると助かるんだが」
空気を読まずに催促する。
「おっと、そやったわ。仕事の話といこっか。ワイらの仕事を簡単に説明すれば、現代日本とファンタジー世界の架け橋の様なもんや。そんで、あんさんの様に仕事を求めへはってる人に仕事に紹介するんが、ワイら異世界人材派遣課の仕事やで。なんか、質問とかあるかいな?」
青野は渡し忘れてていた、名刺もついでに差し出す。名刺を受け取った相田の表情が固まる。名刺には……普通に異世界人材派遣課、課長と表示されていた。
「そうだな、この名刺を普段から使っているのか?」
本当は仕事の事を真っ先に訊ねたかったが、さすがの相田も気になり、最初に訊ねてしまった。
「そんなワケないやろ。ちゃんと使い分けとるよ。国のお偉いはん方やあんさんの様な事情を知ってる者だけやさかいに。表では人事課長やで」
今の説明で相田は理解した。国の偉い人は異世界の存在を知っている。だが、それを国民に伝えていない。理由までは見当も付かないが、金だろう。
「そりゃ、そうだよな。すまない、本当の質問は別にある。青野さんは異世界としか言わなかったが、異世界にもいろいろな種類があるだろ? どんな世界なんだ?」
異世界と口にしたら簡単だが、魔法の存在する世界、科学の発達した世界、魔物の跋扈する世界、地球も他の世界からすれば、異世界に分類される。
「そやなぁ~、簡単に言うたら、魔法ちゅうん凄いもんがある世界や。それに魔物なんて呼ばれる危険な生物もぎょーさんと居る世界やな」
それから文明レベルなどの話も続けて説明する。魔法とは通常では在りえない現象のこと。炎を操る。魔物と心を通わす。無から有を生み出す……色々な種類の魔法がある。ゲームの様だが、本当だ。
「なるほど。簡単に言えば、中世ヨーロッパ風で魔法が存在する分、生活水準は高いんだな。それと、その魔法ってのは俺にも使えるのか?」
「まぁそーゆうことや。理解が早うて助かるわ。どやろな、適性次第では使えまっせ。ワイも適正を持ってましたさかいに」
何事にも冷めてた相田も魔法が使えるカモしれないというだけで、少しワクワクしている。
「そうか。それで、肝心の異世界での仕事ってのはどんなんだ?」
この時に既に相田は異世界に行ってみたいと考えていた。
「ちょいと、待ってはれよ」
青野は机の上から何枚かの紙を持ってきて、相田に見せる。それを見た相田は少し驚いた。
その仕事の内容とは……
ハローワークについてや関西弁がおかしいところがあるかもしれません。
色々と調べたり、聞いたりしたんですけど・・・不安で<m(__)m>
詳しい人が居りましたら、ご指摘をお願いしたいです。