プロローグ
2作目の作品となります。
え?1作目?知らないなぁ~
それはさておき、まだまだ拙い文ですが、
楽しんでもらえたら、こっちも嬉しいです。
感想は辛口でばっちこい!!
来栖新人の手元には1枚の古びた地図が。
『夢の宝地図』と書かれた地図を見て新人は残念そうに頭を落とす。
「さすがにこれは……ないな」
夕方といわれる時間にも関わらず、空は群青色を催していて、吹く風が寒さ対策を万全にした厚着にもかかわらず寒く感じるようになってきた。
とある神社の近くの雑木林に来ていた新人は数時間に及ぶの発掘作業で,
『夢の宝地図』なるものを発見した。
『夢の宝地図』と粗末で安直な言葉で表現されたものが新人が探し求めているものだとは到底思えなかった。
「まぁ…いつものことか」
トレジャーハントを始めてからすでに1年が経とうとしていたが、いまだめぼしいものは発見できていない。
だが、新人は金属探知機のように実体の見えない宝を予感していた。いや、どこかで耳にしたのかもしれない。
いつどこでそれを見聞きしたのかはすでに記憶の海に埋もれてしまってたが、
それが人生を大きく変えることができるのは覚えている。
ありもしないそんなものを追いかけるのは時間の無駄だとほかの人なら笑い飛ばしてしまうようなことだが
新人はそうは思わない。なぜならこんなにもわくわくしているのだから無駄だなんて思えるはずがない。
新人は自他ともに認めるトレジャーハンターだった。
しかしまだめぼしいものを見つけるには至っていない。
幼いころから新人は好奇心旺盛だった。
自分がやりたいと思ったことは全てやらせてもらえ、好奇心旺盛で要領のよかった新人は瞬く間に技能を身に着けていった。
いわゆるちょっとした天才だった。
新人の家庭はそれが出来るほどに裕福だった。
だがそれが裏目に出た。
新人は好奇心旺盛で、また飽き性でもあった。
次から次へと物事を吸収していく新人は物事の軽易さから、
徐々に何かを習得することに興が冷め、その後は時間を無為に過ごした。
時間は流れ、新人は大学受験生になった。
楽しみの最後の砦であった、夢のキャンパスライフを目指して新人は日夜努力していた。
だが、ふたを開けてみれば、そこには何もなかった。
地元の難関大学を時間つぶしにと挑戦し、新人は難なく第一志望校に受かった。
県外を探せばレベルの高い大学はいくらでもあったが、遠出してまでやるのもな、と思い
県内の志望校に収まった。
大学に入った先輩達皆が口をそろえて、「今思えば受験勉強の時間がとても有意義だった」「充実している」、「今までとはまるで環境が違う」などと
絶賛していたので、期待に胸をふくらませていたのに、まるでそんなことはなかった。
あえて言うなら、たしかに高校とはまるで施設環境は違った。
部活やサークルなども盛んに行われ、大学全体が活気に満ちているように見えた。
その先輩たちはたまたま自分の入りたいサークルがあったのかもしれない。
運命の出会いがあったのかもしれない。
しかしそれらは新人求めているものに成り得なかった。
もちろん新人も人並みにサークルで盛り上がったり、部活で汗をかき青春したり、恋愛もしてみたい。
そんな願望はあるのだが、大学に入っても興味の引かれるものはなかったし、新たな出会いがあったわけでもない。
最後の砦が陥落し、気を落としていた新人の目にふと留まったのは何気ないテレビ番組だった。
それは世界のお宝発見というトレジャーハンターの特集だった。
テレビに映るハンターたちは日々どことも知れぬ地に埋もれた宝に思いを馳せ、宝を発見することを夢見て、生き生きとしていた。
そんな簡単にみつかるもんか、と思いつつも新人はやってみるのもありかなと、心が傾いたのだった。
確か子供の時にも嫌に宝に対して執着していた時期はあったが、なぜだかは思い出せない。
けれども新人はいい機会だと思い、軽い気持ちで宝探しを始めた。
そして事ここに至る。
古びた木箱の中にある紙といっしょに地図は入っていたのだが、地図は痛みがひどく綴られている何かをは読み取ることはできなかった。
新人は痛んだ地図を見てふと気が付いた。
(夢の宝地図と呼称しているのに宝の位置を示すような図が全くない?)
その地図に記されているのは霞んでよくわからない文字のようなものがびっしりあるだけだ。
これははずれだなと思いつつ、記念に持ち帰ろうと腰に下げているにポーチに地図をしまおうとした瞬間、
視界が突然揺らぎ始め、ついには新人は立っていられず、地面に倒れてしまった。
倒れても以前、視界は揺らぎ、徐々に視界は黒に浸食されてきた。
「なん…で?」
そしてその解をはじき出すことなく新人は意識の底に沈んでいった。
その地図がこの世界で新人が見つけた最初で最後の宝物となった。
気が付けば地面に横たわっていた。
背中に感じる感触は先ほどの土のような柔らかいものではなく、人の手が入ったことを感じさせる
きれいに整えられた石畳のものだった。
そこで初めて新人は自分が倒れたことに気付いた。
起き上がって周りをみるとそこはさきほどの雑木林となんら変わりないように一瞬思えたが決定的に違うことがあった。
まず自分の立っている場所に石畳が長く遠方に続き、その両脇を灯篭のようなものが道なりに立ち並んでいること。
先ほどまで雑木林を寂寥感漂わせる西日で赤く染めていた太陽は頂にまで登り、激しく自己を主張している。
降り注ぐように木漏れ日が射し、とても温暖な気候だった。いや、厚着をしている新人には少しばかり暑いぐらいだった。
このことから新人がいたと思われる場所と違うことは確かだろう。
しかしこの状況をノータイムで呑み込めるほど新人の順応性は高くなかった。
「どこだ……ここ?」
考えるよりも先に暑さに耐えきれず、新人は羽織っているダウンジャケットを脱いだ。