早めのメリークリスマス
季節は12月。都会の夜はイルミネーションに彩られ、早くも街はクリスマス気分。
「もう年末かぁ、早いわね」
小柄な女子高生、立花美宇は塾帰りの途中。
親友と一つのマフラーを巻き、肩を寄せ合って寒さに耐えながらである。
その親友、美宇より頭一つ分背の高い芽衣子が、
「クリスマス、楽しみだねっ!」
凍える手を、強く握りしめて温めてくれながら、にこっと笑い掛けてくる。
「今年も皆で集まって、大騒ぎして……楽しい夜になりそう♪」
美宇と芽衣子の家は隣同士で、家族ぐるみの付き合い。
毎年毎年、クリスマスは互いの家族が集まって一緒にパーティーなのだ。
でも美宇は、中学生どころか小学生に間違われる幼い顔をぷくっと膨らませ、
「ばっかみたい。私は皆で集まるのなんて、嬉しくもなんともないわ」
「ええー、なんで?」
首を傾げる芽衣子を、ちらちら見上げながら、小声で。
「……だって、クリスマスは二人きりがいいんだもん」
「美宇、なにか言った?」
「な、なんでもないわよッ!?」
気持ちを分かってほしいけど、聞かれるのも恥ずかしい。
美宇は赤くなって手をばたばたさせるが。
「ははーん?」
芽衣子、悪戯っぽくにやにや。
「もしかして、美宇ってばクリスマスは私といちゃいちゃしたいとか。やらしいんだー♪」
満更でもなさそうに、美宇に抱き付いてくる。
「ふふ、私達恋人同士だもんね。クリスマスは恋人らしく、キスとかしたいよね♪」
そう、今年のクリスマスは。二人が親友から恋人にステップアップして、初めて迎える聖夜なのだ。
「ば、ばか……っ!」
簡単に図星を指されて、美宇の頬は更に赤く、熱く。この寒さでは、芽衣子に伝わってしまう。
やっぱり、芽衣子にはお見通しで。
「ふふ、じゃあ、そんな寂しがりの美宇ちゃんに」
駅前、一際ロマンチックなイルミネーションの下。
「……ちょっと早いけど。私からの、クリスマスプレゼントをあげよっか」
芽衣子に肩を抱き寄せられ、甘く蕩けるキスを、贈られた。
「んっ……!?」
口づけの感触。切ないくらい柔らかくて、優しい感触。
早すぎるけど、でもとても嬉しい、そんなプレゼント。
驚く美宇の口内を、たっぷりと芽衣子が、舌で愛してくれる。
「……どう? クリスマスの分の前借り、これでいいかな?」
数分後、唇を離し。上気した瞳で尋ねる芽衣子に。
美宇はこちらも羞じらいながら、ぶんぶんと首を横に振る。
「……だめ。えっちも、クリスマスの分をくれないと」
聖なる夜、世界中の百合ップルに祝福あれ。