日常の崩壊2(編集中)
銃撃戦及びガソリンスタンドの次に目指したのは、商店街の隅にある古ぼけた薬局だった。古さと暗さが特徴のような店で、はっきり言って近寄り難い雰囲気すら醸し出している。オードムーゲという謎の物質の取り扱いを謳ったノボリからも、焼けてヒビ割れたFRPのマスコットからも、客を集めようという気配が全く見えて来ないのだから不思議なものだ。
こんな夜更けに、商店街の薬局なんか営業しているはずもないのだが、私にとってそんなことは関係なかった。これは、この薬局にとって裏商売の範疇だからだ。
「3Sっぽいエンジン音だと思ったら、やっぱりカレンちゃんだったんですね〜。お待ちしてました〜」
明るい声で私を出迎えてくれたのは、店主ではなく、この店の裏商売に寄生しているフーコだった。
「ナイスタイミングだよフーコ、修理お願いしようと思ってたんだ」
「ふふふ〜、色々と定期的なカレンちゃんですから、そろそろ車ぶっ壊す頃合いだと思ってたんですよ〜。さぁ、立ち話もなんですから中へどーぞ。温かいコーヒーもありますよ〜」
と、いうワケで、店員でもない彼女に、店の中へ通してもらう。店内の長椅子の前には、フーコが勝手にセットしたテーブルが置かれ、その上には、店主のコーヒーがフーコによって淹れられ、なぜかディーラー張りに自動車のパンフレットが用意されていた。パンフの意図が気になるところだけど、灰皿もあったので、とりあえず一服させてもらう。
「カレンちゃん、この際だから車乗り換えちゃいましょ!調度気に入ってもらえそうなブツ、用意してるんですよ〜」
やっぱりそうきたか。フーコは慣れた様子で、ボルボのパンフを手に取り、付箋の貼ってあるページを開いて見せる。
「じゃ〜ん!V40のT5・Rデザイン改、カレンちゃん向けの特別仕様ですよん♩」
「いやいや、そんなの発注した覚えはないから」
思わず真っ当なツッコミを入れてしまう。
「発注受けてから作るなんて、三流のやることです。お客さまの二手、三手先を読むのが、赤い人の教えですよ」
誰なんだ、そんなこと吹き込んだ赤い人って・・・。