ブラ・キューピッド・ラブ
〈ブラ・キューピッド・ラブ〉
沈みかけた夕陽を背負い、人気のない小路をとぼとぼと歩く。
一度きりの十七歳の夏、なぜ俺がこんなにも憂鬱な気分で家路に就いているかと聞かれれば、ずばり先刻まで一緒に遊んでいた友人との喧嘩が原因だ。
言い争いのきっかけはなんだったか、もう記憶にすら残っていない。つまり、それだけの些末事だったんだ。
けれど男同士、つい意地を張って和解する機を逃してしまった。
ああ、本当に最悪だ。早くあの野郎と仲直りしなくちゃ、残りの夏休みが台無しになってしまう。
胸中に滞留する暗い黒雲を溜息に換えて吐き出し、俯いたまま歩いていると、不意に前方から声が聞こえた。人生の酸いも甘いも噛み分けた、壮齢の男前らしい貫録のある声だ。
「――愛を見失った迷子よ」
自分が声をかけたれた――とは当然思えなかったが、俺は意図せず顔を上げた。
そして困惑する。眼前に仁王立つ男性の双眸はまっすぐ俺を見つめており、後ろを振り返っても人影はない。彼が異様に独り言の激しい人物でないのなら、どうやら俺に話しかけているらしい。
……怪しい宗教家かなにかだろうか。
そっと気づかれない程度に観察すると、男性は真夏だというのに、上等そうな黒いスーツを着込んでいた。年相応の皺を刻んだ顔にはたっぷりと髭を蓄え、柔和な表情で俺を見据えている。
「きみが望むなら、温かく、柔らかな気持ちを、私から少しだけお裾分けしよう」
意味不明な内容はともかく、口調や容貌から俺に善意で話しているのは理解できる。
が、俺は愕然のあまり彼に言葉を返せなかった。視線も意識も、彼の頭頂部に集中する。
理由は簡単――
「ブラ・キューピッド、参上」
彼が純白のブラジャーをかぶっていたからだ。
本来ならば即座に通報すべきだったのかもしれない。しかし俺は生憎と圧倒されて微塵も動けずいた。並外れた存在感だ。
放心状態になった俺へと、男性はゆっくりと歩み寄る。
「これできっと、きみも愛を取り戻せるはずだ」
そしてジャケットの内側からまた別のブラジャーを取り出すと、至極優しい手つきで俺の頭に乗せた。薄い桃色でやたらとフリフリした、かわいらしさを前面に押し出したデザインだ。端的に言えば、俺好みである。
「では、さらばだ」
顎の下できっちりとホックを止め、彼はカツカツと規則的な足音を鳴らしながら、夕焼け空の向こう側へと歩き去っていった。
「――は?」
残されたのは、ブラジャーをかぶって間抜けな表情をした俺ひとりだけだった。
悶着はあったものの無事に帰宅した俺の携帯に、一通の電話がかかってきた。
ただでさえ友人との仲違い、突如として現れたブラジャーかぶり男(他に表現しようがない)のことで、もう俺の脳みそは限界だった。――いっそ無視したい気分だったが、一応送り先の名前を確認する。
そして画面に表示された名前に瞠目し、俺は慌てて通話ボタンを押した。
「もしも――」
『青葉! 大変だ大変大変大変態だ!』
切羽詰まった声音で俺の名前を呼びつけたこの男は、下関。数十分前に喧嘩別れしたばかりのはずの友人だ。
「……変態なのか。いったいどうした?」
受話器越しからも伝わる彼の動転ぶりに、胸裏で少しだけ安堵する。どうやらこの様子だと、俺との確執なんて忘却の彼方にぶん投げてしまったみたいだ。
『変態じゃなくて大変なんだ! ……いや、変態でも間違ってないのか』
「――なに言ってんだ、おまえ」
連日の猛暑で頭がイカレてしまったのか。喧嘩を理由に縁を切った方が得策だったのかもしれない。
下関の言動も不可解だが、俺だって、もっと理解に苦しむ事態に出くわしたばかりなのだ。
なかば投げやりな気分で下関の言葉を待ち――しかし、彼の独白は俺の全身を驚愕に震わせた。
『さっき、見知らぬ男にブラジャーを渡されたんだ。しかもその野郎、頭には違うブラジャーをかぶっていやがった』
「な、なんだと……っ⁉」
さすがに予想の埒外だ。まさか“俺と寸分たがわぬ経験をした”なんて……、通常じゃ有り得ない。
横目にちらりと足元のバッグを見る。この中には、俺がブラ・キューピッドと自称した男から譲渡されたブラジャーが丁寧にしまわれている。
得体の知れない男への不安に息を呑み、俺はカラカラに乾いた喉から強引に声を絞り出した。
「……とにかく直接会って話したい。明日また会えないか?」
『賛成だ。正直俺も、電話でうまく説明できる気がしないぜ』
下関の方も頭が混乱しているのだろう、俺は自分も同じ男性に出会ったという事実は伏せておいた。話す機会はいくらでもある。
――計らずもブラ・キューピッドのお陰で、下関との摩擦は自然消滅してくれた。
彼に関しては不審な点だらけだが、そこだけは感謝していいのかもしれない。
★
「青葉もブラ・キューピッドに会ったのか⁉」
詳しい事情を下関から聞いた後、俺もまた昨日の出来事を赤裸々に語った。至極当然、驚きのあまり大口を開きっぱなしにしている。
対して俺はといえば、下関と俺が遭遇した男性は同一人物だと、改めて確信していた。
服装や容姿も一致するし、なにより下関相手にもブラ・キューピッドと名乗ったらしいのだ。そんな奇天烈な野郎がご近所に何人もいてたまるか。
「ブラ・キューピッド……いったい何者なんだろうな」
高校二年生なんてのは、好奇心の塊だ。俺たちはすっかり、謎めいたブラ・キューピッドの正体に心惹かれていた。
「さあな。素性も目的も不明。手がかりといえば、このブラジャーだけだ」
俺の言葉に頷いて、下関は足元に置いたリュックを拾い上げ、中から黒い女性用下着の一端を覗かせた。俺が受け取ったブラジャーとは異なるデザインだ。
「あ、阿呆! こんなところで堂々と出すな!」
俺は慌てて下関の手首ごとリュックに押し込む。誰も注目していないとはいえ周囲の視線が気になるのだ。
ここは、地元の商店街の入口。俺たちの住む街で待ち合わせ場所となるのは大体この近辺である。ゆえに、同じく夏休みを満喫する同級生と出くわす可能性も高いのだ。
……それに知人でなくとも、ブラジャーを携帯している場面など当然見られたくはない。
「お、おう悪いな」
「気をつけろ、まったく……」
不注意極まりない彼の行動に呆れて嘆息したその瞬間、ざわめく街の喧騒の中、一際元気な声が響いた。
「あれ、青葉くんと下関くんだ! 久しぶり!」
名前を呼ばれて振り向けば、黒いショートカットの髪を健康的な汗で輝かせた少女が、俺たちに手を振っていた。
「八ッ橋さん、ひ、久しぶり」
この京都の名物菓子みたいな名字をした少女は、俺たちの級友だ。あと一歩遅ければ、彼女にブラジャー所持を見咎められていたのか……そう考えると、意図せず唇が引き攣ってしまう。
盛大にキョドる俺を尻目に、下関が楽天的な笑顔で話題を繋ぐ。
「誰かと待ち合わせか?」
「うん、クラスの女の子とね。それよりふたりとも、難しい顔してたけど――なんの話してたの?」
「えっ……!」
しかし――この役立たずめ――不意の質問に言葉を詰まらせる。まさか馬鹿正直に“ブラ配りのおじさんを探している”などと、口が裂けても言えるわけがない。
返答に困った下関と、さっきから緊張しっぱなしの俺の視線が下を向く。彼女と目を合わせていられない。
「――っ!」
と、そこで俺たちは、さらに別の意味で沈黙した。
刺すように激しい日差しを受ける八ッ橋さんのブラウス、その胸元に――薄い布地に、淡い黄色が透けていたのだ。つい先ほどまで話題の中心でもあったそれは――
紛れもないブラジャーだ。
狼狽して双眸を上げると、今度は屈託ない八ッ橋さんの笑顔が目を焼く。
――同級生の下着に興奮する背徳感と罪悪感で死んでしまいそうだ!
唐突に悶絶する俺たちの姿に、八ッ橋さんは目を白黒させていた。駄目だ、もう限界だ。
「うわああぁ急な用事を思い出したああああ!」
「ということで、また会おう八ッ橋さん!」
踵を返し、ふたり全速力で疾走する。戦略的撤退だ。
「う、うん、ばいばい……?」
走り去る無様な俺たちの背中を眺め、八ッ橋さんは怪訝な表情で首を傾げていた。
★
あれから一週間。
俺たちはインターネットを駆使して、ブラ・キュービットに関する情報を幾つか仕入れていた。それによると、都市伝説じみた語られ方ではあるが、意外と世間に知れ渡っている存在らしい。
いわく、彼はブラジャーを通じて世界中の男に愛情を運ぶ。出没場所は日本に留まらず、アジア諸国や米国、果てはオーストラリアの方面にまで目撃情報が出ている。まるで、ブラジャーの温もりに国境などない、とでも宣教するように。
そして、彼の渡されたブラジャーを転機に愛や幸福を手にした、という体験談も数多い。
穿った見方をすれば俺たちも例外ではなく、仲違いの際に不貞腐れてしまった心に、ブラ・キューピッドが再び愛を灯してくれたと言える。過程はどうあれ、下関と和解できたのは彼の功績だ。
――という風に、興味本位でブラ・キューピッドについて調査するうちに、俺と下関の胸中で、とある心境の変化が訪れていた。
「なあ」
冷房の効いた快適な室内。連日のブラ・キューピッドの研究は俺の部屋に集まっておこなっていた。八ッ橋さんの一件から、外はすこぶる危険だと判断したためだ。
自前のスマートフォンと睨めっこしながら下関は、
「ブラジャーって、いいよな」
満面の笑みで、そう宣言した。
「ああ、素晴らしいな」
幾度も頷き同調する俺。スマホの画面を覗けば、ブラ・キューピッドの情報なんかじゃない、女性下着専門の通販サイトを閲覧しているではないか。
そう、俺たちは彼の背中を追っているうち、自身も熱烈なブラジャー大好き人間へと変貌していた。当然、了解の意志を示す際は『ブラジャー』と言う。こっそりと。
それだけで話題は途切れ、また下関との間に沈黙が降りた。さっきはなぜ突然俺に同意を求めてきたのか。
横目に彼を観察すると、双眸はスマホに向いているものの、どこか上の空。脳内は別の考えに支配されているようだ。
気になって、しかし熟考の邪魔をするのも悪いので無言で下関を見つめること数分。
不意に、決して第三者に会話が漏れることのないこの空間で、しかし下関が声量を抑えて呟いた。
「……海にいかないか」
「なに?」
脈絡のない発案に、思わず眉根を寄せる。
時期はお盆過ぎ、海水浴の旬は過ぎている頃だ。なにか他の目的でもあるのだろうか。
一応、下関とは高校生になって二年間のつきあいだ、ある程度は彼の人格を把握している。人並み以上のスケベだと理解している。
しかし、女性の艶姿を見物にいくにしても妙だ。先述のとおり、俺も下関もブラの魅力に心奪われてしまった。白日の下に堂々と晒された水着姿になんぞ興味はないのだ。
そう思って尋ねると、下関は呆れたように大仰な仕草で肩をすくめ、不気味な笑みを口元に浮かべた。邪悪で不埒な容貌。
「ふん、俺だって水着ごときで欲情するほどガキじゃない。もっと胸躍る存在が、海にはあるだろうが」
「――おまえ、まさか……!」
勘づいて瞠目する俺の肩を、ゆらりと立ち上がった下関が抱き寄せた。そして、まるで悪魔のように、俺の耳元で囁きかける。
「そう、真の目的は――」
青い空、白い雲、彼方遠くまで続く美しい水平線――に海パンの尻を向けて、俺たちはどこか近寄りがたい、荘厳な雰囲気の建造物と対峙していた。慎重な足取りで、けれど先頭を争うように、ふたり内部へと歩を進めていく。
中は潮風の香りとは違う、甘い匂いが充満していた。その発生源は眼前に並べられた籠に入っていた。
女性たちの衣服だ。
そう、ここは門高き楽園、女子更衣室。俺たちは、禁断の園へと足を踏み入れてしまったのだ。
「……さすがに緊張するな」
「ああ……」
息を呑む下関に、生返事しかできない。なにせこれまで微塵も女っ気のない人生を送ってきたのだ。未だ経験したことのない独特な“メス”の香りに、俺は圧倒されていた。
しかし条件は俺と同等なのだろう。下関もこれ以上無駄に台詞を発したりはしなかった。
早々に目的(もちろん、使用済みブラジャーの入手だ)を達して退散しなくては。
静寂の中、ただ無心に下着を物色していく。傍から見たらさぞ異様な光景だろう。
「いいか、拝借していいのは精々ひとり分だ。それ以上は大騒ぎになる可能性が高い」
「わかってら」
とはいえ、自分好みのひとり分を選定するやり方は単純だ。着替えの隣には大抵お財布や携帯電話が置いてあるもので、プリクラや自撮り写真が一枚くらいある。そこから眼鏡に適った綺麗な女性のブラジャーを頂戴するだけだ。美女も災難である。
ちなみに、財布の中身やその他個人情報に関するものには一切手をつけない。無駄に罪を重ねるつもりはないのだ。
悠に十数分は経過したか、ようやく両方が目当てのブラジャーを発見したとき、
「「っ!」」
更衣室の中に靴音が響いた。
予想外の事態だ。焦燥して身を隠せる場所を探すが、ない。
万事休すか――観念してぎゅっとまぶたを閉じた、その瞬間、
「――愛を見失った迷子たちよ」
鼓膜を揺らしたのは、男性のバリトン・ボイスだった。
驚きに両眼を見開くと、おおよそこの場に似つかわしくない長身の男の立ち姿があった。
とても砂浜に赴く格好ではない真っ黒なスーツに、上品な紳士を演出するように切り揃えられた髭。
そして、殺人的なまでに暑い陽光を反射するように頭部を覆った、純白のブラジャー。
「きみが望むなら、温かく、柔らかな気持ちを、私から少しだけお裾分けしよう」
ずっと探し求めていた人物が、そこにいた。
「ブラ・キューピッド、参上」
完璧すぎる登場シーンに、しばし呆気に取られる。彼の外見が明らかに不審者であることすら失念してしまう。
ようやく声が出すまでに、時計の秒針は幾度回っただろうか。
「あんた、なんでここに……⁉」
「女子更衣室に無断で侵入するとは、本当に常識破りな野郎だぜ」
動転のあまり自分を棚に上げた発言をしている俺たちを無視し、ブラ・キューピッドは以前と変わらぬ穏やかな口調で語りかける。
「ここで見知らぬ女性のブラジャーを盗み、慰みものにして――きみたちは、それで満足か?」
「え?」
「違うだろう。ブラジャーは決して、そんな歪んだ色欲を充足させるためのものではない」
彼の真摯な眼差しが、俺たちの穢れ濁った瞳を、射抜く。
「そう、ブラジャーは愛でできている! だからこそ、男の身勝手で盗難して愉しむなど……その持ち主を愚弄するような真似など、絶対に許されないはずだ!」
――熱い。
太陽よりも激しく燃え盛るその台詞に胸を焼かれ、俺と下関はほぼ同時に床へと崩れ落ちた。両手をつき、不思議と目尻に涙が溜まる。
胸裏に浮かぶのは、いつかの八ッ橋さん。眩しい日差しの下で清潔そうなブラウスに透ける、肌色と黄色の黄金比。
そして僅か上を向けば、神々しさすら覚える無邪気な笑顔が、そこにはあった。
そうだ、俺たちはこっそり眺めているだけでよかった。それだけで幸せの絶頂だった。
あの笑顔を奪ってまでブラジャーに固執するなんて、愚の骨頂だ。
「すいません……!」
「俺たちが、間違っていました……っ!」
土下座のような姿勢で、深々と頭を下げる。零れ落ちた涙は床板に滲み、すぐに蒸発した。
「わかってくれれば――愛に気づいてくれたのなら、それでいい」
その言葉に顔を上げれば、ふっと唇に笑みを浮かべたブラ・キューピッドがまたしても懐からブラジャーを取り出し、俺たちの頭へと順番にかぶせていった。
尊敬に満ちた眼差しが、彼の男前に集中する。
「では、さらばだ」
そして彼は去り際、脱衣籠からひとつのブラジャーを掴むと、優雅に、とても自然な仕草で鼻先に押し当てた。
荒々しい鼻息が俺たちの耳に届くくらい、丹念に匂いを嗅ぐ。健康的な汗とその他諸々の香りを堪能する。
最後には無言でそのブラジャーを籠に戻し、颯爽と更衣室から姿を消した。
今の行動にどんな意味があったのか、それはわからない。
さっぱり理解不能だが、とりあえずこう呟く。
「すごい人だな」
隣で立ち上がった下関も、清々しい笑顔で同意する。
「ああ。また彼に教わっちまった」
無意識に曇っていた胸中が、晴れ渡った気分だ。室内に籠もった熱気すら不思議と心地いい。
ふと、手に握り締めたブラジャーに視線を落とす。必死こいて選別した、自分にとっての理想のブラジャー。
無我夢中でこれを盗めば、取り返しがつかないところだった。本当の愛情を忘れ、きっと何度でも下着泥棒という過ちを犯す羽目になっていた。
自分たちは、打ち勝ったのだ。自分の中に渦巻く欲望に。そして手にしたのは、全身を覆う柔らかな温もり。
――これが、愛なんだな。
俺と下関は頷き合い、ゆっくりとそれを顔に近づけると、入念に嗅ぐ。貪るように嗅ぐ。香りを鼻腔に染み込ませるように嗅ぐ。
そして丁寧にたたんで、そっと脱衣籠に戻した。
読んでいただきありがとうございます!
下着泥棒はいけません。
盗難した下着を弄び、心の隙間を埋めようとしても、決して満足などできません。むしろ下世話な欲望はエスカレートし、二度三度と繰り返し下着を盗むようになるでしょう。
それに、盗まれた女性の悲しみも相当です。手元を離れた下着がどういった扱われ方をするか、想像しただけで彼女たちの胸中は不安に満ち、悲嘆に暮れてしまうでしょう。自分以外の誰かを想う感情があるのならば、決して下着泥棒なんて真似はしてはいけません。
自分の拙い文章だけでは下着泥棒が許されない理由が伝わらない、という方々もいるかもしれません。ですが一点だけ、記憶に留めておいてください。
法律でダメって決まってるからね。捕まったら怖いしやめましょ。