第8話
最初のワイルドボアのこともあり。俺の、狩りでの役割は一撃離脱の遊撃になった。というか、一撃当てたら攻撃禁止とまで言われてしまった。・・・・・・まあいい。近くで採取とポップしてくるモンスターを狩るだけだ。
ちなみに、一度ワイルドボアとさしで戦わせてもらったときは、HPを八割ほど削られたがなんとか倒せた。そのときは、パーティーメンバー全員に苦笑いされたけど。
「よっ!」
俺は、さっきから戦っているワイルドモンキーの飛びつき攻撃をかわし偃月刀で斬りつける。これで三度目の攻撃によりワイルドモンキーはポリゴン片になって消滅した。
「おーい、ヨヤ。こっちは終わったぞ」
俺を、呼びにきたのはシュウだ。さっき、戦闘に入ったワイルドボアを倒したのだろう。
「ああ、今行く」
シュウ達と狩りをした結果、レベルがすごい勢いで上がる。やはり、強い敵を狩る方が経験値の実りもいい。結局、この数時間でレベルが4つも上がった。
俺が、合流した時にはメンバーの全員がほのかに嬉しそうにしていた。
「そろそろいいだろ。みんな、もう帰るぞ」
シュウがパーティーメンバーに向かって指示を出してる。・・・・・・薄々気付いていたが、もしかしてこのパーティーのリーダーってシュウなんじゃないのか?
今回のワイルドボア狩りは最初の目標の二倍の数10体を狩った。シュウから聞いた話では、いつもならワイルドボアがこんなに近くに連続でポップしないそうだ。しかも、毎回俺の一撃でワイルドボアの牙が折れるのでポーション系の回復アイテムの消費も抑えられたらしい。たぶん、ポップに関しては招き猫のスキルだ。自分では、実感ないけど結構便利だな。
「お疲れ。ヨヤくん。今回は大活躍だったね」
東の林の帰り道、俺に話しかけてきたのはコロンだ。コロンは、そのまま俺の隣に並ぶ。
「そんなことない。たまたまだ」
「いや、ほんとに大活躍だったよ」
「うん、うん」
さらに、サエとアウラが入ってきた。やっぱり、女の子にほめられると悪い気はしないな。
「でも、薙刀って使い難いとか不憫って言われてるけど、全然そんな感じしないんだけど」
「確かに、今日見てる感じだとどっちかと言えば強い方に入ると思う」
それは、俺も思った。選んだ時はレア感出るかなって感じの適当だったっけど。使ってみるとかなり使いやすい。そりゃ、初めの方は当たり判定ひどかったけど慣れてしまえばどうってこと無い。それに、最近は、共振スキルも使いこなせるようになってかなり使い勝手がいい。
「ああ、それな。実は、βテストの最終クエストが原因なんだよ」
話を聞いていたのだろう。シュウが遠い目をして語りだす。
まあ、めんどくさいので簡単に説明するとβテストの最終クエストは林中のモンスターが一斉に町に攻め込んで来るのを防ぐ防衛クエストだったらしい。作戦は弓や銃達の後衛部隊が数を減らして、前衛が殲滅するものだったが。前衛がすぐに乱戦状態になり、しっかりとした当たり判定が先端にしかない薙刀は乱戦ではほぼまとまった攻撃が出来ず。しかも、その長さゆえに助けに来たプレイヤーの邪魔になる始末。結局何も出来ずただの囮にしかならなかったそうだ。
イベントは、一応成功したが薙刀のプレイヤーはその後、叩きに叩かれたてクズ武器判定が下された。
「にしても、あのときの薙刀は邪魔以外の何者でもなかったなー。シュウさん」
「まあ、そう言うなって。あのときは、みんなデスペナ食らっても前線殴りこみに行かないといけなかったから気が立ってたんだよ。リョウさん」
やっぱり、なんか遠い目をしてる。虹彩に光が無いからものすごく怖いし。ちなみにサエとアウラがβテスターなのに理由を知らなかったのは後衛だったかららしい。
そうやって話し込んでるうちに、町に戻ってきていた。
俺は、別れ際にメンバー全員とフレンド登録してそのまま別れる。なんか、意外とみんな気の良い奴らだし、また何かあれば狩りに出かけたいな。
時刻は午後6時。行き帰りで1時間使ったとしても3時間はワイルドボア狩りをしていたことになる。
夕飯は母さんが作ってくれる。なので、後1時間は余裕があるが今からもう一回狩りに出かける気分でもない。だったら、昨日迷った末に諦めたスキル取得をしよう。ちなみにスキルはもう決まっている。―――そう、【調合】スキルだ。
理由は、【採取】のスキルを取ったのはいいが採取したアイテムがほとんど単品では使えなかったからだ。俺は、採取ポイントがあればひたすら採取をしていたのでかなりのアイテム数がある。しかし、半分以上が単品では効果がないものばかりなのでアイテムポーチの肥やしになってしまった。
思い立ったが吉日。俺はすぐさまSPを使いスキルを取得する。
『ポーン! スキル【調合】を取得しました』
電子音と共に、控えに【調合】が追加される。俺は、【採取】と【共振】を外し【調合】と【鑑定】を入れる。
さて、【調合】を取ったのはいいが調合道具がないのでは話にならない。とりあえず、調合セットを買って近くの休憩場所に向かった。
調合セットだが、5000Gもした。まあ、値段が高いだけあってかなりセット内容は良い。だが、スキル熟練度が低いうちはあまりたいしたことが出来ないらしいので初めは宝の持ち腐れだろう。
早速、調合して行こう。やはり、初めはポーションからかな。とりあえず、薬草とハーブの無難な組み合わせで行くことにした。
調合セットのすり鉢に薬草とハーブを入れゴリゴリとすっていく。十分にすり終ったら水を加える。すると、予想道りポーションになった。あと、メニューに調合レシピって欄が追加されてポーションのレシピが載っていた。たぶんショートカットキーなのだろう。
ショートカットキーでひとまず、作れるだけポーションを作る。結果、ポーション×12と毒物×6。3回に1回失敗だ。まあ、初めにしては上々だろう。
ついでに、失敗の毒物を鑑定したらダメージ系の毒だった。次に、イヤシダケとハーブで調合する。・・・・・・初めは、全部手作業ってかなりめんどくさい。
出来たのが、またしてもポーション。きっと、調合パターンはいくつもあるのだろう。
しかし、7時になってしまった。さすがに、そろそろ戻らないと母さんに怒られてしまう。
そう思い調合を夕食の後に回し俺はログアウトする。