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Divine Gift Online  作者: チャン太
第二章 一週間のスーパーラック
31/32

第31話

 第二の町に着いた俺達は今、エルさんの案内の元、隠れ家カジノがあるという場所に向かっている。

 

 「・・・エルさん、ホントにあそこから入るんですか?」

 「うん、って言うかあそこからしか行き方わかんない! ほら、早くいこ!」

 

 エルさんが裏カジノへの道のりに選んだ場所は、普通のカジノをやっているお店のすぐ横にある路地裏だ。・・・・・・ヤバイ、一気に帰りたくなってきた・・・

 エルさんに引っ張られながら入ったそこは、薄暗くどこか湿った感じがするいたって普通の路地裏だった。・・・いや、少し綺麗になってるかな?

 俺はほんの少し綺麗になっている道を、エルさんに引っ張られながら進んでいく。真っ直ぐ10メートル進んだところで右に曲がり、次は左、また右と、グネグネに曲がっていき、それが5回ほど続いたところにそれはあった。

 位置的には、町の通りにある武器屋の裏側だろうか。ワノールの町とは明らかに毛色の違う純日本風の建物、俗に言う長屋と呼ばれる建物がその場所に鎮座していた。


 「・・・エルさん、ホントに行くんですか? 見るからにヤバそうなんですけど」

 「大丈夫だって、ほら、行こ!」


 ぐいぐいとそのまま腕を引っ張るエルさん。

 長屋の扉の前には見るからの強そうな強面の門番が2人。・・・・・・おいおい、さすがにこれはヤバイって・・・

 しかし、ふと思ったのだが、俺達って入れるのか? こういうところって普通は会員証とか知り合いの推薦が無いと入れないと思うんだけど・・・

 

 「入れてくださいな~」

 「・・・ダメだ。お前のような子供の来る様な場所ではない」

 「え~、いいじゃん。大丈夫だから、お金ならちゃんとあるから入れてよ~」

 「・・・ダメだ。所在の分からん貴様など入れられるか」


 ・・・・・・ほっ。良かった、どうやら予想通り誰かからの紹介が無いと入れないようになっているみたいだ。


 「ほら、諦めて行きましょうよエルさん。表のカジノも面白いですって」

 「・・・? 何を言っている。お前は町長からの証明があるから入れるぞ。さあ、来い。ああ、それとそこのお前、特別にコイツの勝負を見ているだけなら入っていいぞ。着いて来い・・・」

 「わーい、さすがヨヤ君、抜かりないね!」


 ?? あれ? 何で俺入れんの? ん? 町長からの証明・・・・・・!? ・・・・・・そっか【町長お墨付きチケット】の効果か。うっわ最悪、今までNPCの店から割引してもらえるだけのものかと思ったら、まさかこんな効果もあったなんて・・・

 正直、こんな見るからにヤバそうなところ入りたくない。

 しかし、俺の腕を掴んでいる強面の門番さんはどう見ても話してくれそうに無いし。・・・どうしよう・・・

 俺の心配をよそに門番の人は長屋の襖を開ける。

 

 「ほら、ここが会場だ。チップは使わん、全て現金のみのやり取りだ」


 強面の門番はそれだけ告げると長屋の入り口に帰っていく。 

 開けられた襖の先には50畳程の畳の部屋に20人ぐらいの人がさまざまな賭け事をしていた。・・・・・・おおー、すげーなこれは。

 見た感じここには、花札や賽子さいころ株札かぶふだを使った日本古来の賭け事しかないようで、まるで昔の賭博場に足を踏み入れたような感覚に襲われる。


 「おおー、見て見てヨヤ君。なんか、あそこに凄そうなの置いてあるよ~」


 エルさんが指差す所を目で追って見れば、そこには床の間に飾ってある一冊の本と一本の長ドスが置いてある。・・・・・・もしかしてあれって・・・

 エルさんは、たぶん長ドスのことを言ったのであろうが俺が注目したのはその横に置いてある本。

 俺の予想が正しければあれはまだ見ぬこの町の【スキルブック】。

 しかし、こんな目立つところにあるのではいつか誰かに取れれてしまう。――――そうなる前に、この俺が・・・ヤベェ燃えてきた~。


 「すいませーん。あれって、どうやったらもらえるんですか?」


 俺が【スキルブック】に熱い眼差しを向ける中、エルさんは近くにいたNPCに入手方法を聞いている。・・・エルさん。あなたはここでは賭けに参加できないんですよ・・・


 「ん? ああ、あれはうちの親方に丁半勝負で勝てたらもらえるぞ。まあ、そんな奴見たことねえけどよ」

 「だってよヨヤ君、がんばって!、それにお姉さん知ってるんだぞ~。ヨヤ君がものすごくギャンブルに強いこと」

 「・・・・・・いえいえ、そこそこですよ」

 

 ・・・・・・たぶんそのこと言ったの姉さん達だな。

 そう、俺の得意ゲームは賭け事。他のゲームの才能は皆無に等しい俺だが賭け事だけは家族の誰よりも圧倒的に強い。

 ちなみに、うちの家族の全員がゲーマーなのには理由がある。

 それは、俺の父さんと母さんが異常なゲーマーだからだ。母さんは主に将棋、チェス、オセロなどのボードゲームに。父さんは麻雀、競馬、パチンコなどのギャンブルに異常なほど詳しいし強い。

 そんな2人の間に出来た俺達は、当然の如く幼いころからいろいろなゲームを教えられてきた。

 そして、俺達が小学校低学年のころには全員がゲーマーにされていたと言うことだ。

 物心つく前から多種多様なゲームに触れさせ才能がありそうなジャンルをとことんやらせる。それが家の、いや、父さんと母さんの教育方だった。

 そんな不思議な教育をされた俺達の得意ゲームは、風姉さんが母さんと同じボードゲーム、凛姉さんはシューティング系のゲーム、理沙は格闘ゲーム、そして俺が父さんと同じギャンブル。

 まあ、才能と言っても姉さん達3人は精々セミプロが良いとこらしい。しかし、俺は違った。

 父さん曰く、『お前の運の良さは異常だ。ぶっちゃけ俺はお前が怖いよ』とのこと。俺は、父さんからその言葉を頂いて以降、あまり賭け事をしなくなった。――――だって、小学校高学年でギャンブルが得意な親からお前強すぎて怖いなんて言われたやっぱり遠慮しちゃうじゃん。


 「おい、坊主。もしかして、アレがほしいのか?」

 

 俺が物思いに耽っていると後ろから野太い声が飛んできた。  

 

 「え? あ、はい」


 声のした方を振り返ると、そこには、俺の身長を遥かに超える大柄の男が立っていた。その大柄の男は、髭がもじゃもじゃで顔には斜めに大きな傷跡がある。―――まるで、ブラック〇ャック見たいな傷だな・・・


 「がはははっっ! いいぜ、早速やろうか。最近は活きのいい若造がいなくて暇してたところなんだ」

 「えっ!? は、はあ・・・」


 そう言って、腕を取られどんどん奥に引っ張られていく。・・・・・・もしかして、この人が親方?

 確かに、他の賭けをしている人とは纏ってるオーラが全然違う。

 そして、案の定この人がここの親方らしく俺達が奥に進む間にほぼ全員から『親方!』と声をかけられていた。

 

 「ほれ、坊主お前も座れ」

 「お邪魔します・・・」


 一番奥にあった丁半勝負用の場所に親方さんが座ると俺を横に座るよう指示する。正直、横からの威圧感が半端じゃないのだが仕方ないので座る。

 

 「よし、じゃあやるか。 おい坊主、丁半のやり方分かるか?」

 「はい、あ、でも、念のため説明お願いできますか?」

 「それもそうだな、まずはこの賽子を使って――――」


 親方から聞かされた説明は俺が思っていたのとほぼ同じだった。勝負の方法は、まずツボ振りが二つの賽子をつぼに投げ込みそれを伏せ、その後、俺達が丁か半を当てると言う流れだ。勝ち逃げを防止するために黒い布の下で丁か半と書かれた札のどちらかを相手に見えないように置き、同時に布を取ってどちらに賭けたかを表す。この勝負を20回繰り返し的中数の多い方が勝ちになるとの事。


 「―――――どうだ、分かったか?」

 「はい、でもあの・・・つぼ振りの人がいないんですけど・・・」

 

 そう、この場所に座ったときからつぼ振りの人が一向に現れ無いのだ。それに、なんだか妙にギャラリーが多いし。しかも、みんながみんな緊張しているようにも見えるが気のせいだろうか?

 

 「ん? ああ、それは今から決めるからな。それに、ここの奴使ってイカサマを疑わるなんて冗談じゃねえ。つうことで、ほれ、坊主はさっさと選びな」

 「なるほど、分かりました」


 親方の言う通り、うまいつぼ振りは自分で好きな目を出せるとか聞いたことがある。なんか、そう言うこと聞かされると、この勝負がどれだけ真剣なものかが伝わってくるな。

 しかし、どうしたものか。俺はこの店初めてだし誰がいいとかもさっぱり分からない。


「んー・・・・・・あっ」

  

 真剣に悩んでいる俺の視線にエルさんが手を振って頻りにアピールしている。――――そうだな、他に知り合いもいないしエルさんにしよう。


 「親方、このにいる人なら誰でも良いんですよね?」

 「ああ、構わねぇぞ」

 

 よし、言質は取った、これで心置きなくエルさんを指名できる。


 「それじゃあ、親方、あそこにいる俺の連れでお願いします」

 「おう、コイツも見ねえ顔だな。なんだ、坊主のコレか?」

 

 親方は、エルさんを指差し俺に向かって小指を立てる。それを見ていたエルさんはおっかなびっくりしながらも首と手を振って全力で否定する・・・・・・何もそんなに大げさに否定しなくても・・・


 「・・・違いますよ親方。彼女はただの友達です」

 「がはははっっ! そうかい、そりゃ悪かったな。でホントにそこの嬢ちゃんで良いんだな」

 「はい」


 そう言って、エルさんを連れてくる親方。しかし、エルさんは心なしか沈んでいるように見える。――――?? やりたかったんじゃ無いんですか? 

 初心者のエルさんに一通りのつぼ振りの役割を教え帰ってくる親方。その間に、エルさんの気持ちが回復したらしく今ではやる気に満ち溢れた顔をしている。


 「さて、つぼ振りは決まった。後は賭けに出す物だが俺はあの長ドスでいいんだよな?」

 

 あちゃー、やっぱりその認識か。まあ、別に長ドスでもいいんだけどここはやっぱり【スキルブック】狙いだ。


 「いや、俺は横の本の方がいいですね」

 「・・・・・・がはははっっ! いいな、お前ホントに最高だわ。了解だ、俺に勝ったらくれてやる」

 「それじゃあ、俺からはこれを・・・」


 親方の反応を見る限り、どうやら長ドスよりスキルブックの方が価値が上らしい。だがしかし、スキルブックより俺の提示したアイテムの方が劣っているとは到底思えない。


 「・・・・・・な!? 坊主お前これ・・・」

 

 俺が実体化させたアイテムを見た人全員がざわざわと騒ぎ出す。そう、俺が賭けとして提示したアイテムは【火竜核】。エルさんがつぼ振りのレクチャーをしてもらている時にアイテムポーチで賭けに出すアイテムを選んでおいたのだ。

 

 「お、おい、こんなすげーもんホントに賭けに出してホントにいいのか?」

 「大丈夫ですよ。絶対に勝ちますから」

 「・・・・・・へー言ってくれんじゃねえか。なら俺も本と長ドスの二つを賭けねぇとな。俺が勝つから・・・」


 そう言って、賭けの品を置く場所に長ドスも追加する親方。近くで見守っていたエルさんは、俺と親方のメンチの切り合いに少々びびってるようだ。


 「それじゃあ、嬢ちゃんはじめてくれ」

 「・・・は、はい! そ、それでは、入ります!」


 そう言って、つぼに賽子を投げ込むエルさん。

 コロコロとつぼの中を転がる二つの賽子。そして、ポンとエルさんがつぼを畳に置き賭け開始を宣言する。

 俺は、直感で丁を選択する。ちなみに偶数が丁、奇数が半だ。

 横を見ると親方の方も選び終わったらしくこちらに合図を飛ばし同時に布をめくる。

 親方が選択した札は俺と同じの丁だった。――――――初めは、引き分けか・・・

 両方とも同じ札を選んでいる時点では差が開くことは無いのでギャラリーから少し弛緩した雰囲気が伝わってくる。


 「勝負!」


 エルさんが気合と共につぼを開く。そして、肝心の賽子の出目は3,5の丁。

 まず初戦は両者共に的中。その結果をギャラリーの中にいる人が紙に書いている。

 その後、第二、第三回戦と次々に勝負が行われていき。ついに、残すとこ後3回になった。今までの勝負の結果、俺が14/17で親方が15/17と言う驚異的な的中率だ。

 現時点では、的中数で負けているがたったの1回分だ、それにまだ後3回も残っているので逆転も不可能ではない。

 

 「入ります!」


 勝負が佳境に入ったからだろうエルさんの声に緊張の色が見える。

 俺はいつものように直感で丁を選ぶ、親方と合図を交わし布をめくる。どうやら親方は俺とは逆の半を選んでいるようだ。それを見たギャラリーは期待と不安が入り混じった顔で勝負の行方を見守る。

 

 「勝負!」


 エルさんが掛け声と共に開けられたそこには2,6の丁。。――――よし! これで並んだ。

 この結果を見た瞬間、ギャラリーからもの凄い歓声が上がる。

 

 『ヤベェ!この勝負マジでヤベェ!』『何なんだあいつ?丁半最強の親方に一歩どころか互角に張り合ってやがる』『おい!押すなよ!見えねえだろ!』et・・・


 しかし、その歓声も長くは続かない。なぜならギャラリー全体が次の勝負を心待ちにしているからだ。

 

 「入ります!」


 コロコロ、ポン、と言う音と共に賭けがスタートする。

 ここまで来たら下手に考えせず今まで通り、自分の直感を信じ俺は半を選択。

 もう既に、選び終わっていた親方と同時に布をめくる。親方の選択は俺と同じ半。どうやら勝負の結果は最後にお預けらしい。

 この結果を見ていた周りのギャラリーも途端に緊張を解く。


 「勝負!」


 つぼの中の賽子は4,5の半。これで、両者共に16/19で的中率は約84%とぶっ飛んだ数字だ。

 そもそも、丁半なんてものは6割当たっていればかなりついている方で今回のように的中率が8割を超えるなんてことは異常だ。まあ、俺の場合は元からの才能+luc極振りでこの結果だが、親方はたぶん常時こんな感じなんだろうな・・・・・・そりゃあ、他の奴が勝てない訳だわ。


 「おい、坊主。一つ相談なんだが。聞いてくれるか?」

 「・・・奇遇ですね親方。実は俺も相談したいことがあるんですけど」


 そう言って、お互い笑みを浮かべる。――――ああ、この人も俺と同じこと言おうとしてるんだ・・・

 そう思ってるのは親方もらしくその笑みを一層輝かせる。


 「それじゃあ、先攻は譲ってやるよ。坊主の方が年下みたいだしな」

 「いや、ここは正々堂々とじゃんけんで決めましょうよ」

 「がはははっっ! いいね、ますます気に入った。だが、そうなると俺もそう簡単に譲る気はねえぞ」


 そう、俺達は最後の勝負を賽子が投げ込まれる前に両者別々のところに賭けようというものだ。そして始まる運命のじゃんけん。別に、ここで勝っても絶対勝てるというものでは無いのだがやはり、気持ちの面で幾分かリードできる。

 数回のあいこを経た結果、俺がグーで親方がチョキ。つまり俺からの賭けになる。俺は、この勝負で幾度となく行ってきた直感を信じ丁を選択。そして、必然的に俺が賭けた逆の半に親方が賭ける。


 「エルさん、初めてください」

 「ああ、譲ちゃん。頼むわ」

 「は、はい。では、入ります!」


 どうやら、エルさんは会場の雰囲気に当てられてかなり緊張しているみたいだ。―――――まあ、この1投で勝負の全てが決まるんだから緊張するのは当たり前か。

 ギャラリーのみんなも緊張した面持ちでエルさんの一挙手一投足いっきょしゅいっとうそくに注目する。

 

 コロコロ・・・ポン・・・

  

 そんな音と共につぼが畳に置かれる。

 俺達の賭けは既に終わっているのだが勿体つけるようにエルさんの視線が俺と親方の顔を交互に行き来する。・・・・・・え、エルさん早くしてくださいよ~。


 「勝負!」


 俺達をたっぷりと見終わったエルさんがついにつぼを取る。

 そこにある賽子の出目は共に・・・・・・1

 つまり、ピンゾロの丁。

 この瞬間、大喝采と共に親方との丁半勝負は俺の勝利で幕を閉じた。

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