第26話
始まりの町に戻った俺はそのまますぐタルサにワープする。
ホントはエルさんのところで武器の耐久値を回復させたかったのだが始まりの町はいまだに多くのプレーヤーが闊歩していて歩きづらい。
別にタルサの武器屋でも耐久値の回復はやってくれるので今日はそれで我慢だ。
「すいませーん、耐久値の回復お願いします」
「あいよ、すぐ終わるからちょっと待ってな」
タルサの武器屋に着いた俺は真っ先に武器の耐久値を回復をお願いする。
武器屋で耐久値を回復してもらう場合は生産職に回復してもらうように一瞬と言う訳には行かない。と言っても、精々2,3分ほどで終わってしまうのだが。
「ん~ やっぱり、ガーベラに攻撃が集中した時に守ってやったほうがいいよな・・・」
正直、どのくらいの時間絞めていればいいのか分からないのでアークの回復だけでは不安なのだ。幸い、武装転換のスキルで戦闘中の武器の交換は可能なことだし、ここは丁度いい盾を買っておくのも悪くは無いだろう。
そう思い、武器屋の中を散策する。しかし、盾と言ってもかなりの種類があった。木の盾やバックラーなどの定番なものからスパイクシールドと言う盾に棘がいくつも生えている不思議なものまでたくさんだ。
俺はその中なから今回のボス戦に合いそうな盾を買う。
武器名【大盾】レア度★★
記述:人一人すっぽりと入りそうな大きな盾。素材は鉄で持ち運びには相当の力が必要。
武器種類:盾
防御力:300
耐久値:100/100
そのときには耐久値の回復も終わっていたらしく盾と一緒に武器も返してくれた。
その後、町でポーション等の必要なアイテムを買い打倒ネメアライオンに出発する。
ネメアライオンまでの道のりは出来るだけ戦闘をこなしていった。
正直、回復アイテムの量もバカには出来ないのだがレベルが上がればHPは全快するので極力我慢してアークを使って回復する。
出発から1時間。俺のレベルは1つ上がり28になり。戦闘は出来るだけ避け、ボス部屋前のセーフティーエリアまで急ぐ。
セーフティーエリアに着いた俺達は目の前のボス部屋が空いてることに気付いた。
どうやら、ネメアライオン攻略には先客がいるみたいだ。
先客のパーティー編成はアタッカー1人に遠距離3人、タンク役2人とちょっと遠距離攻撃に比重を置き過ぎな気がする。
たぶん、このパーティーの作戦は遠距離攻撃の3人が状態異常攻撃を仕掛け他のメンバーは囮をして持久戦に持ち込むつもりなのだろう。
ちなみに、ネメアライオンが今まで討伐されてなかったのには理由がある。それは、正規版のボス戦でレイドが組めなくなったからでβテストのレイドを組んで物量で押し切ると言う方法が出来ない。なので、ボス発覚から結構な時間が経った今でも討伐されていないというわけだ。
・・・・・・あ、タンク役の2人が死んだ。
ネメアライオンの噛み付きからの連続攻撃を受けたタンク役の2人が同時に死ぬ。・・・・・・なるほど、確かにこんなの食らったら死に戻り決定だわ・・・
連続攻撃は、噛み付き→投げ飛ばし→火球ブレス→火炎ブレス→岩投げ→突進の順番で確実にプレーヤーを葬りに来る。しかも、運良く岩投げまで逃げ切れても最後に突進の面での攻撃があるため避けきるのは不可能だろう。・・・・・・きっとこのパーティーはダメだな。
さすがに防御力の低い遠距離プレーヤー3人をアタッカー1人で支えるのは無理がある。
現にアタッカーもたった今死んで、ターゲットになった遠距離攻撃の3人組が扉の方に逃げてくる。
当然、ネメアライオンも逃がす気は無いらしく速攻で追いついて蹂躙していた。・・・・・・さて、ついに俺の番か。
アークにくっついてHPも全快させたので準備は完了だ。
パートナー2匹には既に今回の作戦を伝えてある。
その作戦は、俺が女龍帝の隠し刀の毒攻撃で奴の注意をひきつけ、その間にガーベラは首に巻きついて窒息させる。当然、そのときにネメアライオンの攻撃がガーベラに向くことは容易に想像できるのでアークはガーベラに引っ付いて回復と壁役だ。
正直、かわいそうかな? とは思うがこの際仕方が我慢してもらう。・・・・・・あとでたっぷりと肉、食べさせてあげるから許してくれ。
最後に《ラクシュミーの生まれ変わり》を発動させ【武装転換】の設定武器を《骨薙刀【角改】》からさっき買った《大盾》に変更し装備武器を女龍帝の隠し刀にして準備完了だ。
周りに誰も居ないことを確認し(万が一今回で倒しちゃったのを誰かに見られたら後々面倒なので)ボス部屋に入り扉をきっちり閉める。
『ガアアァァァォォォォオオオ!!!!!!!」
ボス部屋に入った俺達を真っ先に出迎えてくれたのはネメアライオンの咆哮だった。
だが、残念なことに俺がその咆哮を貰ってやることは出来ない。なので、お返しに女龍帝の隠し刀の毒攻撃をお見舞いする。
ダッシュで近づき咆哮中の無防備な顔を切り付ける。ヘラクレスさんの話では物理攻撃を防いでいるのはあくまで体毛とのことなので顔に攻撃すれば何とか刃は通る。
隠し刀の毒も刃が通っていなかったら意味がない。
俺は咆哮のあいだ中ひたすら攻撃を与え続ける。4回攻撃を振るうころにはネメアライオンに毒状態のエフェクトが発生し少しずつHPを削っていく。
攻撃が6回目に入ったときようやく咆哮が終了し引っかき攻撃を繰り出す。
これを危なげなくかわしいったん距離をとる。
毒状態にして1本目のHPバーを一割削ったのでファーストコンタクトとしては最高だろう。
「行くぞ! アーク、ガーベラ」
ついに作戦実行の時だ。
俺は正面で攻撃を振るい、アークが飛べないガーベラを首元に連れて行き、ガーベラは首を締め付ける。
ここまでは、順調に進んだ。後はどれだけの時間締め付けなければならないかだ。
ネメアライオンはまだそんなに苦しく無いらしく首もとのガーベラよりも目の前でうろちょろしている俺のほうに攻撃が集中している。
ガーベラはこれ幸いにと今までよりも強く締め付ける。
俺はガーベラに攻撃が行かないよう正面で必死に攻撃を避けつつヘイト値を稼ぐ。正直、Vitがクソ過ぎて掠っただけでもHPが三割持ってかれる今の状況でどれだけ持つか・・・・・・・・・まあ、最悪日光玉連発して足止めに専念すればいいか
ちなみに、閃光玉は調合成功確率がついに80%を超えた。
それに、素材に関しては複製スキルを使って大量生産して日光玉は所持数限界の20個まで持ってきている。
ガーベラの首絞め攻撃から20分。ついに、ターゲットがガーベラに移った。
幸い首元への攻撃手段が引っかき攻撃しか無いみたいでしきりに短い前足で首元を掻いている。
しかし、体重の乗っていない引っかき攻撃は威力があまり無いようで少しずつしかガーベラのHPを減らせていないしアークもしきりに攻撃を体で受けているので10分ぐらいは余裕で持ちそうだ。
「チェンジ《大盾》」
毒状態は続いているので俺もさっき買った大盾でガーベラ防衛に参加する。・・・・・・やっぱり買っておいて正解だったな
8分ほどガーベラを攻撃から守っているとネメアライオンが急に暴れだした。俺はネメアライオンのいきなりの行動に反応できず体当たりを食らって遠くへ飛ばされてしまう。
何とか、レッドゾーンで止まったHPをポーションを3つ使い全快させる。
すぐに戻ろうと立ち上がった俺が目にしたのは、まるで水でも払うようにして体を震わせながら体毛を槍の様に飛ばしてくるネメアライオンの姿だった。
俺は、大慌てで盾を構えて飛んできた体毛をガードする。・・・・・・へ、ヘラクレスのおっさん。話が違うぞ・・・
『ポーン! 体毛の部位破壊に成功しました』
『ポーン! 大盾の耐久値が0になりました』
『ガアアァァァォォォォオオオ!!!!!!!』
何とか体毛をやり過ごした瞬間。2つのメッセージと共に装備していた大盾がぼろぼろに壊れていく。
その後、開幕一発目より明らかに大音量の咆哮がボス部屋を駆け巡る。
もう一つのメッセージが気になるが今はそれどころでは無くアークとガーベラを探す。
そこで俺が目にしたのは、体毛を一身に浴びて穴だらけになったアークとガーベラだった。当然二匹ともHPゲージは0で今まさにポリゴン片になって消えていく。・・・・・・よし、こいつ絶対殺そう。
「チェンジ《青龍偃月刀【嵐】》」
俺はすぐさまいつものメイン武器に変更して日光玉を咆哮中の奴に投げつける。
あまりの眩しさに咆哮を中断した瞬間、顔面に《ツインバッシュ》をお見舞する。いきなりの攻撃に怯んだところにグレネードをありったけぶち込み追い討ちをかけるように偃月刀を一閃。ここまでで日光玉の効果が切れたのでいったん距離をとる。
奴のHPゲージはこの連続攻撃で1本目が二割残っていた状態から2本目の残り九割のところまで減らした。
だが、HPが半分を切ったということはパワーアップすると言うことだ。・・・まあ、ヘラクレスさんの話によれば攻撃力とスピードが上がるだけらしいけど。(物理防御力も上がるが体毛がない状態で狩ったのでヘラクレスさんも知らない)
でも、俺はあいつに好き勝手やらせるつもりは無い。幸い日光玉は19個もあるので足止めには持って来いだ。
俺は早速、日光玉を投げ《ツインバッシュ》を撃ちクールタイムにグレネードを投げる。別にスピードとパワーが上がっても何もさせなければ意味は無い。・・・・・・アークとガーベラの痛み。しっかり受け止めろよ。
それからは淡々と裸同然になったネメアライオンを痛めつけるのだった・・・




