第21話
町長さんの誕生日当日、俺はまだ花を植えている。しかし、花が植えてない所は全体の一割ほどでその他はすべて何かしらの花で埋め尽くしてある。
しかし、既に誕生パーティーが始まっているのだろう。やけに、屋敷の中が騒がしい。それに、今の時刻は23時。あと一時間で残りの一割の庭に花を植えきるのはほぼ不可能だろう。
「手伝いましょうか?」
そんな時、俺に声を掛けてきたのが町長さんのところでメイドをしているミトラさんだ。ミトラさんは、俺がログインしていない間に植えた花の水やりや手入れを手伝ってくれるそうだ。
「いや、これは俺の仕事なんでミトラさんに手伝ってもらうわけにはいきませんよ」
手入れなんかはこの際しょうがないとしてもさすがに植え付けの作業まで手伝ってもらうわけには行かない。それに、たとえ間に合わなくても何とかお願いして他の事でスキルブックを譲ってもらえればいいことだし。
「わかりました。ですが、ヘラクレス様は誕生日パーティーが終わったらすぐに見に来ると申していましたのであまり時間がないかと」
「それでもです。この仕事を、自分以外の誰かにやらせるつもりはないですよ」
「・・・・・・ふふっ、わかりました。それでは、頑張ってください」
そう言って、ミトラさんは屋敷の方へと戻っていく。と言うか、町長さんの名前ってヘラクレスって言うんだ・・・初耳だな。
しかし、それではホントに時間がない。こうしている内も花植えの作業は進めているがあと1時間でなんて終わる気がしない。―――――ど、どうしよう。やっぱりカッコつけずにミトラさんに手伝ってもらえばよかったかも。
はぁー、どうせなら誕生日プレゼントでも用意しとけばよかったな・・・・・・・・・ってそうか!!
俺は思いついてしまった。このピンチを脱出するアイデアが。しかし、そのためにはいろいろと必要なものが出てくるな。
すぐさまアイテムポーチを開き使えそうなアイテムを調べていく。・・・・・・・・・よし! 何とかなる。
ひとまず、植え付け作業を中断しピンチ脱出のアイテム作りを開始する。
幸い時間はあまりとられなかったので終わってすぐ植え付けの作業に戻り花を植え続けた。
「ほうほう、やっておるの」
植え付け作業に戻って20分ほどして町長のヘラクレスさんが出てくる。当然の如く、庭を花で埋め尽くすことは出来ていない。
「よくやっ・・・・・」
「ヘラクレスさん。誕生日おめでとうございます!!」
俺は、ヘラクレスさんが何かを言い切る前に先ほど作った花束を渡す。そう、この花束がピンチを脱出するためのアイデアだ。幸い、花自体は大量にある。包みにはケイトスの皮を使いリボンの代わりにはロープに光草を練りこんだキラキラと光る発光ロープを使った。
当然、これでスキルブックをもらえるとは思っていないがもう一度チャンスぐらいはもらえるだろう。
「お、おお。すまんの」
「あ、あと、すいません! 頑張ったんですけどこの庭を花でいっぱいにすることが出来ませんでした」
やはり、こういうときは言い訳などせずに素直に負けを認めるのが一番いいだろう。しかし、ヘラクレスさんと一緒に着いてきたミトラさんが必死に笑いをこらえてるように見えるのは気のせいだろうか?
たぶん、さっきの申し出を断っておいて植えきれなかったから笑っているのだろうな。
「おいおい、なにを言っておるんじゃ。あんな、荒れ果てた庭にこれだけの花畑が出来たら上出来じゃよ。それに、おぬしが頑張っておったのはしっかりと見ておった。ワシの誕生日にこんなに綺麗な花畑が見れただけで十分じゃ。よって、おぬしの望み通りのものをくれてやるわい」
『ポーン! 【スキルブックNO.1】、【スキルブックNO.2】、【スキルブックNO.5】、【町長のお墨付きチケット】を獲得しました』
【スキルブックNO.1】
効果:隠しスキル【隠しルートの見極め】が取得できる。
【スキルブックNO.2】
効果:隠しスキル【食材の見極め】が取得できる。
【スキルブックNO.5】
効果:隠しスキル【武装転換】が取得できる。
【町長お墨付きチケット】
記述:各町長が一枚だけ持っているチケット。このチケットを持ってる者は町人から無条件で信頼される。
【隠しルートの見極め】
・フィールドの隠しエリアを発見できる。
【食材の見極め】
・食材アイテムの詳細や調理法が分かる。
【武装転換】
・バトル中高速での武器交換を可能にする。
・・・・・・・・・・へ、ヘラクレスさんすごすぎ。たしかに、スキルブックすべてやるとか言っていたから1冊じゃないことは予想していたけど、まさかの3冊って。
【隠しルートの見極め】と【食材の見極め】はあくまで冒険の補助って感じスキルだな、ってか【食材の見極め】は完全に【調理】のアシストスキルだし・・・これは、俺に【調理】スキルを取れって言っているのか・・・
後は【武装転換】に関してはいまいちわからない。効果を見る限りだとバトル中に武器が変えれるって事らしいけどバトル中に武器を変えることなんてあるか?
「あの、ヘラクレスさん? 【スキルブックNO.5】ってどういうことですか?」
「ん? ほうほう、おぬしもなかなか見る目がある。それはのワシが昔冒険者をやっていたころ―――――――」
ここから、ヘラクレスさんの冒険者時代の武勇伝が長々と続く。何でも【スキルブックNO.5】はヘラクレスさんが冒険者時代に編み出した技術、武器を瞬時に変えて戦闘を有利に運ぶ技術が書き込んだものだそうだ。
ちなみに、他2冊も冒険者時代に培ってきた知識を書き出したものらしい。―――――ってことは、スキルブックってその人の知識をスキルにしたものってことなのか・・・
「――――――と言うことじゃ分かったか?」
「は、はあ」
ヘラクレスさんの冒険者時代の武勇伝は優に30分にも及んだ。しかも、その内容がこれから出てきそうなモンスターの攻略法だったりするのでかなり性質が悪い。
「あ! そうだ、ヘラクレスさん。ネメアライオンってモンスター知ってますか?」
ネメアライオンと言うのはこのタルサのエリアボスのことだ。つい先日、リーサが物理攻撃がまったく効かなくてどうしようも無いとぼやいていた。
数々の武勇伝を話していたヘラクレスさんなら攻略法も知っているのではないかと思いダメの元で聞いてみる。
「・・・? なんじゃ。ネメアライオンごときに苦戦なんぞしておるのか」
ヘラクレスさんはニヤニヤとしたいやらしい笑みを浮かべる。・・・う、うぜぇー・・・
「ま、まあ。どうしても教えてほしいと言うのなら教えてやらんでもないがな・・・」
「・・・・・・あ、じゃあいいです」
ヘラクレスさんの態度にイラッとした俺はそう言ってスタスタと町の方へ戻っていく。
「ちょ!? ちょっと待て! 分かったから! 言うから! 頼むから聞いてくれ~」
「はい で攻略法は?」
去っていく俺を見たヘラクレスさんは慌てて俺を呼びかける。予想通りの行動に気を良くした俺はすぐさま引き返し攻略法を尋ねる。―――――まあ、最初から町に戻る気なんてなかったしね
「・・・・・・はあ。まあよい、いいか。奴に剣や銃の攻撃なんぞきかん。それは奴の体毛が恐ろしい位の防御性能を誇るからじゃ。なれど体毛は所詮体毛、絡めての毒などを使えばある程度のダメージを与えられる」
それについてはリーサも話していた。その際、俺も一緒に女龍帝の守り刀を奮ってほしいと頼まれているのだが。
「じゃがな、そんな攻撃は決定打に程遠い。そこでワシは奴を窒息させようとロープで首を絞める方法を思いついたのじゃ。そしてこれが大当たり。奴はもがき苦しみ体毛すべてを槍のように放ち丸裸になりおった。まあ、ここからは唯のでかくて体力だけが多いモンスターに成り下がったのじゃから倒すのは簡単と言うことじゃ」
なるほど、要するに北風と太陽のもっと過激なバージョンってことか。しかし、この方法だとプレーヤーが2人以上居ないと出来ないってことになるな。
「まあ、おぬしの場合は蛇のようなパートナーがおるようだし一人でも十分可能じゃろう」
・・・・・・あれ? もしかして、ガーベラが庭直してるのって見られてた? でも、確かにガーベラなら十分首を締め付けれるだろう。
「ありがとうございました。しばらくしたらネメアライオンの討伐報告にきますね」
「おう、じゃが。その前に情報料として庭に最後まで花を生めていけ!」
「・・・はい」
俺はそう言ってヘラクレスさんの庭を3時間程使って花で埋め尽くし屋敷を後にした。
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