第13話
初めて入ったボス部屋は真っ暗だった。
「おい、どうなってるんだ」
俺がつぶやくと周りの松明が、ボッ!と火が灯る。それは連鎖的に繋がり最終的には部屋全体を明るく照らす。部屋の奥には、下半身が蛇で上半身は女性の背中に翼が生えたモンスターがこちらを睨みつけていた。その頭上には二本の長いHPゲージとこのモンスターの名前なのだろうエキドナと表示してある。
『キシャアアアアアアアア!!!!』
松明が灯りきったのが戦闘開始の合図なのだろう。エキドナは、オルトロスにも引けを取らない大きな咆哮で部屋全体を揺らす。
俺を除いたメンバー全員はそのあまりの音の大きさに耳を塞いで耐えている。しかし、俺は【防音のイヤリング】を装着済みなので咆哮なんて効かない。
すかさず、エキドナの元へ行き《ツインバッシュ》を発動する。ツインバッシュは昨日、オルトロスとの戦闘後に覚えていた新しいアシストだ。
ツインバッシュのアシストにより2連撃の攻撃がエキドナを直撃。この攻撃で、1本目のHPバーが一割の半分ほど減った。
エキドナは、咆哮中だったからだろう大きく怯む。そこに、通常攻撃を何回か当てクールタイムが終了したのでもう一度 《ツインバッシュ》を発動、きっちりHPゲージを一割減らし深追いはせずみんなの元に指示を仰ぎに戻る。
「みんな、大丈夫か?」
「はい。何とか」
「こっちも大丈夫です」
どうやら全員無事みたいだ。まあ、ただの咆哮だしダメージはないか。
「なんで、姉さんは咆哮大丈夫なんですか?」
「いや、今それどころじゃないだろ」
それもそうですね。と言って、リーサはエキドナに向かっていく。どうやら、そのまま作戦通りに行くつもりらしい。
今回のボス攻略の作戦はとても単純だ。単に、殴って殴って殴りまくる作戦と言うにはあまりにもお粗末なものだ。しかし、気をつけなければならない所はしっかりと抑えてある。まず、エキドナの攻撃で食らってはいけないのが毒攻撃だ。しかも、その攻撃自体がかなりの威力を持っているので下手したら回復する前に毒でやられる可能性もあるらしい。あとは、近距離での連続攻撃。これを、食らうとどんなプレイヤーでも死に戻り決定なので絶対に当たらないでくださいとリーサに念を押されてしまった。
そうこうしている内にリーサとカグヤ、ユキとスイがペアになって攻撃を開始している。ちなみに、ミコトは前衛にエキドナの攻撃が集中しないよううまく矢を放つ役目だ。
「こりゃあ俺も参加しないとな」
やはり、後輩達だけに任せるのはなんだか忍びない。てか、普通にカッコ悪いし。俺は、まず日光玉を取り出しエキドナに投げつける。
「みんな、目を瞑れ!」
合図と共に太陽が生まれたような激しい光があたりを照らす。これにより、エキドナが混乱状態になり、攻撃が大振りになって避けやすくなった。
俺は、《ツインバッシュ》を出来る限り放つ。ちなみに《ツインバッシュ》のクールタイムはかなり長いので日光玉の効果中に発動できて2回だ。それに、硬直時間があるアシストを使っても動きが単調で大振りになったエキドナの攻撃をかわすのは容易い。
さらに、いつもより早く動けると言うのも大きいのだろう。やっぱり、StrとAgiの3倍は伊達じゃない。他のみんなもがんばっているようだがあまり大きなダメージが入っていない。やはりここは、紙装甲なのが心配だが俺がダメージディーラーになるべきだろう。
日光玉で動きを鈍らせていられる時間は1分ほど。それに対して残りの日光玉は10個。
エキドナのHPゲージは一本目がギリギリ三割削れているかどうかなのでこの調子で行けば時間はかかるがなんとか倒せるだろう。
俺は、次々と日光玉を投げていく。メンバーのみんなとも息が合ってきて日光玉を投げると俺の声かけなしで、目を瞑ってくれる。
そして、残りの日光玉が4つになったときにやっと1本目のHPゲージがなくなり2本目に突入した。
『キシャアアアアアアアア!!!!』
HPゲージが2本目に入った瞬間開戦時よりも大きな咆哮が部屋を大きく揺らす。
「そんなの、効かないんだよ!」
俺は、咆哮中のエキドナに《ツインバッシュ》を放つ。しかし、エキドナに《ツインバッシュ》は当たらなかった。なぜなら、エキドナは咆哮と同時に空へ飛び立ったからだ。
確かに、翼があるのに今まで翼を使うアクションが何一つないのはおかしいと思ってはいたが。ここにきてまさかの空中戦である。
こちらには、空中戦に対応できるのはミコトの弓矢だけ。・・・・・・さて、どうしようかな・・・
「姉さん、なかなか大変なことになりましたね」
「あ、ああ」
悩んでるところに咆哮から復活したパーティーメンバーがやってくる。エキドナは空中を優雅に旋回中だ。
「おい、リーサどうするんだ?」
リーサは、βテスターだきっと空中での攻略法も知ってるはず。今は、まだ空中を飛んでるだけだがそのうち攻撃も仕掛けてくるだろう。そうなったら攻撃手段がミコトしかない俺達は容易く蹴散らされてしまう。
「ど、どうしましょう?」
「日光玉でも投げてみるか?」
日光玉を投げたが、エキドナのいる場所が高すぎて日光玉が効かなかった。俺はてっきりエキドナと空中戦になることを知っていて攻略法も出来ていると思っていたのだが、リーサによるとβテストではエキドナが空を飛ぶことはなかったらしい。ちなみに、俺達の前に戦っていたパーティーは一本目を半分減らしたところで全滅していたので参考にはならない。
「お、おい。ホントにどうするんだよ」
「じゃあ、あたしに任せてもらっていい?」
そう申し出たのは、カグヤだった。何でも、カグヤのギフトが《空間転移》という選択した者同士の位置を入れ替えるというギフトなんだとか。―――確かに、それなら空中のエキドナを地上に引っ張り出すことは可能だ。しかし、選択された俺達の誰かは空中に投げ出されることになる。当然だが高所からの落下はダメージ判定が通る。
「そうですね、今のところそれしかないですし」
「私も賛成です」
「わ、私も」
「うちも賛成」
「後は、ヨヤ姉さんだけですよ」
「あ、ああ。とりあえずそれしかないか・・・」
「やった!」
パーティーメンバー全員の賛成によりカグヤの作戦は決行することに決まった。
「それじゃあ、誰が空中に行くんだ?」
「は? 姉さんなに言ってるんですか?」
「いやだって、エキドナと転移する奴をこの中から選ばないといけないだろ」
「ああ、それなら大丈夫です」
俺は勘違いしていたようだ、カグヤの話では選択するものは何でもいいらしい。ちなみに、選択するのは日光玉。
理由は、入れ替えた日光玉をエキドナが食らったらラッキーってことのようだ。
話し合いの最中に、エキドナが上空から毒ブレスを放ってきた。ミコトは、話し合いの時も俺達に注意が向かないように矢を放っていたのでエキドナのターゲットはミコトだ。
「ええっ!!」
エキドナのいきなりの攻撃に矢を番えている最中だったミコトは直撃してしまう。HPゲージが、半分以下になりおまけに毒の状態異常になったミコトにあわてて駆け寄り解毒薬を飲ませる。
「ありがとうございます」
だが、エキドナの毒はかなり強いみたいで俺が渡した解毒薬一つでは直りきらずミコトは自分の持ってる解毒薬も使いやっと毒を消す。
立て続けにポーションを飲んでHPも回復させ。回復が済んだところでカグヤの準備が整いその手には日光玉が握られていた。
「いきます!」
カグヤの掛け声と共にギフトが発動しカグヤの目の前にエキドナが現れる。そこに、少し遅れて落ちてきた日光玉が地面にあたると同時に光を放ち思惑通りエキドナの視界を潰す。
「おりゃ!!」
カグヤの近くに待機していたパーティーメンバーは、一斉にエキドナに襲い掛かる。俺も、《ツインバッシュ》をありったけ食らわしていく。この攻撃で、エキドナのHPゲージが二割減った。
しかし、日光玉の効果が切れた瞬間エキドナは空中に飛び立ってしまった。
『キシャアアアアアアアア!!!!』
空中にいるエキドナが咆哮をしたと同時に低空飛行で俺達に襲い掛かる。初めにターゲットにされたのは一番近くにいたユキだ。しかも、ユキは今の咆哮で身動きがとれない。
俺は、ユキに向かって全力で走りユキと一緒に倒れこむ。次の瞬間、俺の真上をエキドナがすごいスピードで通り過ぎて行った。―――あ、あっぶねー。でも、何とか間に合ったか
「おい、大丈夫か? ユキ」
「は、はひぃ!?。だ、大丈夫です!!」
俺の下敷きになったユキはすごく噛み噛みだがホントに大丈夫みたいだ。
きっとあれが、怒り状態なのだろう。エキドナは髪を逆立てて下半身の鱗がめちゃくちゃに逆立ってた。
怒り状態のエキドナは、避けたのが気に入らないにかもう一度こちらに向かってくる。低空なので日光玉の効果内のはず・・・・・・
俺はポーチから閃光玉を取り出し投げつける。
思った通り、日光玉の光を浴びて空中から落ちてくるエキドナ。そこに、もう一度パーティーメンバーが一斉に襲い掛かりる。
日光玉の効果が切れた瞬間飛び立とうとするエキドナだが。俺は、そこにもう一度日光玉を投げ込み地面に落とす。
ここからは、まさにたこ殴りだった。空に飛び立とうとするエキドナに、日光玉を浴びせ落ちてきたところに一斉攻撃。見たところみんなここが正念場だと思ったのだろう惜しげもなくギフトを連発していた。
『パッパラパッパッパー♪♪』
『ポーン! マモンの超運が発動しました』
無双状態に入ってしばらくするとエキドナがポリゴン片になって消滅し昨日のオルトロスを倒したときのような大音量のファンファーレが鳴り響いた。しかも、今度はギフト発動のメッセージと言うおまけ付きで。
『北の林のボス初討伐おめでとうございます。これにて、第一の町へ移動できるようになりました』
機械的な女性の声と共に部屋の奥にあった大きな扉が開かれる。
「「「「「「お、終わったー!!!!!」」」」」」
歓喜の声と共に俺達は第一の町へと移動を開始した。
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