おにがしまの そのご
若干グロ注意です。
鬼たちは何が起こったのかわかりませんでした。
刀を持った男が動物を連れていきなり襲ってきて、殺しを始め、お宝を奪って行ったのです。
全滅は免れましたが、悲しんでいる暇はありません。
イヌに噛まれた足には添木を。
サルにひっかかれた傷には薬を。
キジに突かれた目には眼帯を。
ヤツに切られた仲間には大きな石を使って、不格好ですが慰霊碑を作りました。
無傷なのは一人として居ません。子供も、女性も。
でも、鬼です。強い鬼です。
まず、やられたボスの代わりに新しいボスを立てました。
一番に強い鬼ではありません。一番に賢い鬼をみんなで決めました。
「ヤツを、 かたきを うたないと」
キジの羽、サルの毛、イヌの毛。ヤツの来た方向。
そこから住んでいる場所を探し当てました。
一直線に繋がっています。
次に、船を作りました。
何人もの鬼も、食料も、更に取り返したお宝の全てをも載せることのできる、大きく頑丈な船です。
鬼の力があれば簡単です。
鬼たちは出発しました。敵を倒しに。
鬼ヶ島を離れ、ヤツが来た方向の島に着きました。
道中、キジの村を見つけました。
ひどく痩せ細っています。
きびだんご一つで命をかけて戦うわけです。
あれは忠誠でも友情でもありません。それほどにお腹が減っていたのです。
「くえ。ちからを つけろ。いのちをすてる かくごがあるものは ついてこい」
鬼はたくさんのお米や麦を分け与えました。
きびだんご一つよりももっと沢山、全員がお腹いっぱいになっても数週間は生きていける山のような食料です。
キジは、とても感謝して、たくさんのオスのキジが一緒に来てくれることになりました。
その後、サルやイヌの村もありました。
同じ状況です。
理由は、人間の村が大きくなることでした。人間は鬼の宝だけでなく、森の仲間の居場所も奪っていたのです。
サルには木の実を、犬には肉を与え、鬼は野菜を食らいました。
鬼ヶ島を出発してから数日。遂に人間の村に着きました。
ちょうど夜です。あの悲劇の日とは違う、新月の日です。
人の目は役に立たず、動物や鬼の目はよく見える。良い日です。
鬼が知っている人間の村よりとても大きく成長した村がありました。昔は森だった部分も広い範囲の木が切られています。
暗く寝静まった村、その中に一つだけロウソクの明かりがある家がありました。
覗くと、一人の老人が大判小判の山を数えています。
「桃太郎は本当に扱いやすいバカじゃ...あれだけ強いのに正義感だけは一丁前にある。これほど利用しやすい人間は居ない...」
「邪魔な鬼を排除して、ワシらは大金持ちじゃ...クックック...ガーッハッハッハ!」
聞くと、ヤツは村の人からの、一つの情報源からの情報で鬼たちを襲ったらしい。その村に暮らしていながら、実際に見ていないのに。
じゃあ、 しんじつに してやろう。
きづけば おれさまたちは むかしから ひどいことを されてきた。
かおがこわい。 なにするか わからない。 そんなりゆうだ。
そんなりゆうで おれさまたちは いしを なげられ、 しまに おしこまれた。
じゃあ、 おおいわを なげてやろう。
じゃあ、 つちに おしこんでやろう。
じゃあ、 にどと うそを つけなく してやろう。
にんげんは ごうまんだ じこちゅうだ。
つみのない にんげんも いる。
だが、 おにも そうだ。
それを こわしたのは だれだ。
そのこたえが いた。
あの もものはちまき。
あの かたな。
あの かお。
ヤツだ。
かたき。
みんなの。
カ タ キ。
カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ カタキ …
……あれ?
ヤツは?
これ? どれ? こっち? それ?
おれさまが やった?
やった。
やった やった。
かった。
ヤツに。
ちぬきを わすれてた。 まずい。
くえたもん じゃない。
すてよう。
へいわが おとずれた。
もりに。
おれさまたち おにに。
おさけを もて。
にくを もて。
こぶしを かかげろ。
もう たたかわなくて いい。
もう おびえなくて いい。
もう なにも うばわれない。
なんて いいひ だろう。
こんなひは うたげに かぎる。
うばわれた おたからを さがしたけど もうなかった。
おかねに かわった らしい。
べつにいい。
おれさまたちが てにいれたのは おたから じゃない。
なかまのかたき と ちのあじ。
そして いばしょだ。
めでたし めでたし
読んで下さりありがとうございます。Dolusです。
書いたきっかけとしては、「桃太郎って伏線とか考察要素しかなくないか?」と思ったことでした。
例えば、イヌサルキジはなぜきびだんご一つで命を賭けたのか。
そして、鬼が人間の村を襲撃しているところを桃太郎は見ていなかったり、逆に鬼ヶ島の様子は桃太郎一行しか知らない。
この伏線を全部回収したかったのでこの作品を書きました。
環境問題、差別問題、信頼できる情報源かどうか。そういう社会問題も入れてみました。
簡単な言葉や漢字を使うようにしたので子供にも見せられる…かも?
あとがきも読んで下さり、改めてありがとうございました。




