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魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》  作者: 昼ライス
Season 1 ~ヒーロー誕生~

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第7話 ドローン

毎日20時投稿

「次は、機動支援の基礎訓練だ」


直哉が端末を切り替える。


背部ユニットの表示が拡大される。


複数の蜂型ドローンが、格納状態で並んでいる。


【Honeycomb Drone  待機】


『六機展開します』


SARAの声と同時に、背部装甲がスライドする。


カチ、という軽い解放音。


次の瞬間、小型の蜂型ユニットが順に射出された。


ブン、と空気を震わせる高周波音。


六機が、悠真の周囲を旋回する。


軽い。


速い。


だが――


「うわ、ちょ……!」


一機が急上昇し、視界を横切る。


もう一機が急停止し、別の機体と接触しかける。


HUDに警告が点滅する。


【隊形崩壊】

【制御遅延 0.34秒】


「思ったより、速い……!」


『ドローンは思考補助ではなく、意識拡張制御よ』


「なんですか、それ!」


観測席から、直哉が淡々と補足する。


「腕を動かす感覚で動かそうとするな。視界の延長として扱え、ということだ」


言うのは簡単だ。


六つの視点が、一斉に流れ込んでくる。


前方視界。


右上。


背後。


上空。


それぞれの高度、距離、速度。


情報量が多すぎる。


一機が、模擬ターゲットにぶつかった。


カン、と軽い衝突音。


【軽微損傷】


「すみません!」


『謝罪は不要です』


SARAの声は変わらない。


だがHUDの数値は乱れている。


旋回半径が揃わない。


高度がばらつく。


【フォーメーション維持率 42%】


「……くそ」


スティンガーブレードは、腕だった。


これは違う。


六つの“別の生き物”を同時に扱っている感覚だ。


焦ると、途端に散らばる。


『精神波形、分散傾向』


リゼリアが静かに言う。


「ドローンは、あなたの意識の“分身”です。命令ではなく、意図で動かしてください」


意図。


悠真は、深く息を吸う。


一機ずつ意識しようとするから、破綻する。


六機を“まとめて”見る。


蜂の群れとして。


円を描くように。


六機が、ぎこちなく円軌道に入る。


まだ歪んでいる。


一機が遅れる。


【フォーメーション維持率 58%】


「揃えろ……揃えろ……」


声に出すと、逆に乱れる。


思考を減らす。


中心を決める。


自分の周囲、半径五メートル。


そこに、透明な円があると想像する。


ドローンが、その円をなぞる。


今度は、衝突しない。


高度が揃う。


【維持率 71%】


『改善しています』


だが、油断した瞬間。


一機が急降下。


床に接触し、バウンドする。


【再同期処理】


「……っ」


拳を握る。


近接戦より、ずっと難しい。


敵を斬るより、群れを保つ方が難しい。


直哉が腕を組む。


「開拓獣相手に、単体で突っ込むつもりか?」


「……いや」


「なら、群れを使え」


短い言葉。


悠真は、もう一度視界を広げる。


六つを一つに。


一つを六つに。


時間がかかる。


十数分。


二十分。


何度も衝突し、何度も隊形を崩す。


フォーメーション維持率は、なかなか80%を超えない。


額に汗はないはずなのに、妙な疲労感がある。


精神を使う。


ようやく。


六機が、ほぼ均等な距離で円を描く。


【高度差 ±3cm】

【維持率 83%】


まだ完璧ではない。


だが、崩れない。


『基礎安定域へ到達』


SARAが告げる。


悠真は、息を吐いた。


「……これを、戦闘中にやるんですか?」


直哉が即答する。


「やれ」


ため息が漏れる。


スティンガーブレードは、慣れれば振れる。


だが、ドローンは違う。


気を抜けば、即座に崩壊する。


そして。


リゼリアが静かに告げる。


「魔法陣の展開は、このハニカムドローンによって構築するの」

「つまり、この制御精度を高めることが前提になるわ」


悠真は、六機の群れを見上げる。


まだ、ぎこちない円。


だが、確かに自分の意志で動いている。


「……きっついな」


誰にともなく呟く。


だが、逃げるつもりはない。


群れを扱えなければ、守れない。


悠真は、もう一度意識を広げた。


六機が、再び旋回を始める。




最初の三日は、ひどかった。


六機のうち一機は常に遅れ、一機は過敏に反応し、

残りはその影響で微妙に軌道をずらす。


フォーメーション維持率は、良くて65%。


移動を加えた瞬間、崩壊する。


「止まってるとできるのに……!」


『移動時は、機体重心変化とドローン相対座標が同時に更新されます』


SARAの説明は正しい。


だが、身体感覚が追いつかない。


歩く。


旋回する。


ジャンプする。


そのたびに、群れが波打つ。


直哉からは容赦ない一言だけ。


「慣れろ」


それだけだ。




――四日目。


静止状態での円陣維持率が、初めて90%を超えた。


【高度誤差 ±1cm】

【維持率 92%】


六機が、ほぼ完全な六角形を描く。


空間に、見えない枠が浮かび上がる感覚。


「……いける」


だが訓練終了後、融合を解除すると視界がわずかに揺れた。


頭の奥がじんわりと熱い。


実際に汗はかいていないはずなのに、呼吸が浅くなる。


訓練後は、融合解除するとしばらく椅子から立てない。


リゼリアが静かに告げる。


「意識の帯域が拡張しているわね。むしろ好転反応よ」


それでも、きついものはきつい。




――六日目。


移動を加える。


ゆっくり歩く。


ドローンは追従する。


【維持率 68%】


まだ揺らぐ。


旋回を加える。


外側の一機が遅れる。


修正。


【維持率 71%】


呼吸を整える。


足裏の圧力。


腰の回転。


その中心を軸に、群れを回す。


命令ではない。


流れを作る。


HUDに数値が表示される。


【移動制御完成度 73%】


「……七割か」


決して高くはない。


だが、崩れない。


走らなければ、保てる。


急旋回をしなければ、維持できる。


一週間前の自分なら、歩いた瞬間に全機衝突していた。


今は違う。


静止状態。


六機が完璧な六角陣を描く。


【維持率 96%】


移動開始。


【歩行速度 40%】


【維持率 74% → 73% → 73%】


安定。


『現時点での実戦許容下限を満たしています』


SARAの冷静な評価。


直哉が観測席で頷く。


「及第点だな。だが、戦場では73%は足りないと思え」


厳しい。が、正しい。


悠真は、六機の群れを見上げる。




一週間。


刃よりも、ずっと時間をかけた。


それでも、まだ完璧じゃない。


「……でも、てんでダメってわけじゃない」


最初は、42%だった。


今は73%。


確実に前に進んでいる。


群れが、静かに旋回する。


その中心に立つ自分が、少しだけ変わったと感じながら。


「次、いきましょう」


まだ先がある。


「――次は飛行しながらのドローン制……」」


直哉が言いかけたところで、悠真は思わず声を上げた。


「いやいやいや、待ってください!」


訓練区画の中央で、六機のドローンを旋回させながら振り向く。


「そもそも俺、ちゃんと飛ぶ練習すらしてませんよ!?」


一瞬の沈黙。


観測席で、直哉が眼鏡を押し上げる。


「……そういえば、低高度ホバリングしかやってないな」


「やってないですよね?」


リゼリアが端末から視線を上げる。


「では、飛行訓練とドローン制御を並行してやりましょうか」


「同時!?」


『合理的です』


SARAが淡々と告げる。


「戦闘時、飛行とドローン操作は同時に発生します」


正論すぎる。




背部スラスターが、低く唸る。


ブゥゥン――


足裏の接地圧が軽くなる。


【高度 0.5m】

【推力 22%】


低高度でのホバリング。


ここまでは問題ない。


だが――


「……浮いてるだけで集中削られるな」


床が遠い。


身体の重心が、常に微妙に揺れている。


SARAが微調整を行うが、最終的な姿勢決定は悠真の意識だ。


『高度を上げます』


【推力 31%】

【高度 2.0m】


視界が一段変わる。


床のラインが斜めに見える。


その瞬間。


六機のドローンが波打った。


【維持率 66%】


「うわっ」


一機が高度を取りすぎる。


一機が下がる。


「飛ぶのに意識取られる……!」


直哉が即答する。


「そりゃそうだ。今まで地面に頼ってたんだからな」




結局、まずは三日間、飛行単体訓練を挟むことになった。


直線上昇。


減速。


着地。


高度制御。


最初の着地は、ひどかった。


ドン、と膝から落ちる。


『衝撃過多』


「いてぇ……」


痛覚はないが、精神的にくる。




十一日目。


再び、並行訓練。


【高度 3.5m】

【前進速度 20%】


ドローン六機が周囲を旋回。


維持率 69%


まだ揺らぐ。


飛行は、常に三次元。


地面という基準がない。


「中心……中心を決めろ……」


空間に、見えない球体を思い描く。


自分が中心。


その周囲を、群れが回る。


急旋回。


【維持率 61%】


崩れる。


二機が接触。


再同期。


息が荒くなる。


融合状態で、ここまで疲労感が出るのは珍しい。




二週間後。


飛行時間、累計約六時間。


【高度 5.0m】

【前進速度 35%】


ドローン維持率


【静止時 96%】

【地上移動時 73%】

【飛行移動時 68%】


まだ低い。


だが、初日の崩壊状態とは違う。


旋回。


減速。


急停止。


【維持率 71%】


「……上がった」


SARAが即時補足する。


『飛行時制御完成度、70%域に到達』


直哉が腕を組む。


「ようやく実戦で“使えるかもしれない”レベルだな」


褒めてはいない。


だが、否定でもない。


悠真は、空中で静止する。


【高度 6.2m】


六機が、きれいな円陣を描く。


微細な揺らぎはあるが、崩れない。


足場がなくても、群れは維持できる。


「……飛びながらって、こういうことか」


地上とは、負荷が違う。


だが同時に、視界が広い。


見える範囲が広がるということは、守れる範囲が広がるということだ。


ドローンを魔法陣描画に回すには、まだ制御精度が足りないだろう。


しかし、確実に基礎は積み上がっていた。


高度を下げる。


着地。


衝撃、最小。


ドローン帰還。


背部へ格納。


静寂。


悠真は、小さく息を吐く。


「……次、やりますか?」


直哉が、わずかに笑う。


「焦るな。飛びながら73%の制御率を安定して出せるようにしろ」


リゼリアが静かに続ける。


「次に習得を予定しているスワームシールドは、ドローンの完全静止が前提よ」

「移動制御が揺らぐ現状では、形成は不可能ね」


つまり。


まだ早い。


だが。


二週間前より、確実に進歩している。


悠真は、天井を見上げる。


守るための空。


そこへ至る道は、まだ先が長い。

いつもありがとうございます。


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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


現在、別作品として

『不遇スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する』

というダンジョンファンタジーも連載しています。


意味不明と言われたスキル【球術】で戦う主人公と、鍛冶職の少女がダンジョンを攻略していく物語です。


もしよろしければ、そちらも覗いていただけると嬉しいです。

今後ともよろしくお願いします。

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