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魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》  作者: 昼ライス
Season 1 ~ヒーロー誕生~

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第13話 提案

毎日20時投稿

東京、防衛省。


地下会議室。


重厚な扉が閉まると、外の音はほとんど聞こえなくなる。


長い楕円形の会議卓。


その周囲には、防衛省幹部、内閣官房の担当者、自衛隊の将官たちが並んでいた。


壁面のモニターには、東北沿岸の戦闘映像が映っている。


港町。


巨大な侵略体。


そして。


その足元を走る、黄色い機体。


映像が停止する。


しばらく、誰も口を開かなかった。


やがて、防衛政策局の幹部が言う。


「……状況は明らかです」


手元の資料をめくる。


「あの化け物は、すでに三度出現している」


「出現地点はランダム」


「事前兆候は、直前の空間歪曲だけ」


別の幹部が続けた。


「そして現在の戦力では、対応が後手に回っています」


モニターには、戦闘の被害状況が映る。


破壊された港湾施設。


避難する住民。


幹部が言った。


「今回は幸運でした」


「しかし、次も同じとは限らない」


会議室の空気が重くなる。


一人の将官が言う。


「問題は二つあります」


指を立てる。


「第一に、敵の正体が不明」


「第二に、出現地点が読めない」


別の幹部がモニターを指した。


黄色い機体。


「そして、三つ目」


「この存在です」


会議室の視線が、画面に集まる。


二メートルほどの人型機体。


巨大な侵略体と戦った存在。


「所属、技術、目的のすべてが不明」


幹部が言う。


「この機体については、現在も調査中です」


一人の政治家が腕を組んだ。


「自衛隊の装備ではないのか?」


即座に否定の声が上がる。


「違います」


「我々の装備ではありません」


別の将官が言う。


「米軍にも確認しましたが、該当技術はないとのことです」


会議室が静かになる。


未知の侵略体。


未知の機体。


すべてが不明。


やがて、議長役の官僚が口を開いた。


「この状況を踏まえ」


「政府としては、新たな対処体制を検討する必要があります」


資料が配られる。


その表紙には、仮の名称が記されていた。


対異常現象対応部隊(案)


会議室がざわつく。


「専門部隊ですか」


「化け物退治専用の?」


議長が頷く。


「その通りです」


だが。


別の幹部が静かに言った。


「問題があります」


「敵の情報が足りない」


「装備も足りない」


「出現地点にも対応できない」


つまり。


現状では、作っても機能しない。


その時だった。


議長が視線を上げる。


「……そこで」


資料を一枚めくる。


「本日は、民間から協力者をお招きしています」


会議室の扉が開いた。


秘書官が言う。


「如月インダストリ代表」


「如月直哉様です」


部屋の空気が、わずかに変わった。


会議室の扉が静かに閉まる。


入ってきた男は、ゆっくりと会議卓の前まで歩いた。


如月直哉。


如月インダストリ社長。


年齢は三十代前半。


この会議室にいる誰よりも若かった。


並んでいるのは、政府高官と自衛隊の将官たち。


年齢も経験も、彼よりはるかに上の人間ばかりだ。


その視線が、一斉に直哉へ向けられる。


若い社長。


その事実だけで、場の空気にはわずかな緊張が生まれていた。


議長が口を開く。


「お忙しい中、お越しいただきありがとうございます」


直哉は軽く頭を下げた。


「こちらこそ、お時間をいただき感謝します」


穏やかな声だった。


落ち着いている。


その様子に、何人かの幹部がわずかに表情を変えた。


議長が続ける。


「今回の件ですが」


モニターを示す。


東北沿岸の戦闘映像。


巨大な侵略体。


そして、その足元を走る黄色い機体。


「貴社から情報提供の申し出があると聞いています」


会議室の視線が集まる。


直哉は小さく頷いた。


「はい」


短く答える。


そして静かに言った。


「まず最初に申し上げます」


「現在、日本が直面している事態は」


わずかに間を置く。


「未知生物の出現ではありません」


会議室が静まる。


直哉はモニターを見た。


「これは」


「侵略です」


その言葉に、何人かの幹部が顔を見合わせた。


直哉は続ける。


「この存在には明確な目的があります」


「資源確保」


「環境制圧」


「拠点構築」


一人の幹部が腕を組んだ。


「……ずいぶん断定的ですね」


直哉は落ち着いたまま答える。


「理由があります」


彼は小型端末を机の上に置いた。


新しい映像がモニターに表示される。


侵略体の行動分析と構造データ。


会議室がざわついた。


「これは……」


「どうやって入手した?」


政府が持っていない情報だった。


直哉は答えない。


ただ静かに言った。


「我々は、一定の情報を保有しています」


沈黙。


議長が慎重に尋ねる。


「その情報を」


「政府へ提供していただけると?」


直哉は頷いた。


「はい」


「ただし」


会議室の空気が引き締まる。


「条件があります」


議長が言う。


「伺いましょう」


直哉は資料を一枚取り出した。


「侵略体対策の専門部隊を設立してください」


会議室がざわめく。


将官の一人が言う。


「専用部隊ですか」


直哉は続ける。


「情報」


「装備」


「機動力」


「すべてを侵略体の対処に特化した部隊です」


そして言った。


「その部隊に対して」


「我々は技術協力を行います」


幹部が聞く。


「具体的には?」


直哉は答える。


「敵の情報」


「対侵略体兵装」


そして。


少しだけ視線を上げた。


「即応展開手段です」


会議室が静まり返る。


議長が言う。


「……どういう意味ですか?」


直哉は短く答えた。


「どこに敵が出現しても」


「数分以内に部隊を投入できます」


沈黙。


幹部の一人が呟く。


「そんなことが……」


直哉は穏やかに言った。


「可能です」


彼は机の上に一枚の資料を置いた。


そこに書かれていた文字。


ARC――Anomalous Response Command


対異常現実対応部隊。


直哉は静かに言った。


「これが、私の提案です。」


会議室は、しばらく静まり返っていた。


机の上に置かれた資料。


そこに記された三つの文字。


ARC


対異常現実対応部隊。


幹部の一人が、ゆっくり口を開く。


「……専門部隊の設立」


「それ自体は理解できます」


腕を組む。


「しかし」


「数分以内に部隊を投入する、というのはどういう意味ですか」


別の将官が言う。


「輸送機では間に合わない」


「ヘリでも同様です」


「ましてや、出現地点は予測不能」


つまり。


現実的ではない。


会議室の誰もが、そう考えていた。


議長が直哉を見る。


「あなたは」


「それを可能にする手段を持っていると?」


直哉は小さく頷いた。


「はい」


短い答え。


一人の幹部が言う。


「仮に可能だとして」


「なぜそれを民間企業が?」


直哉は少しだけ考えた。


そして言う。


「研究の成果です」


その言葉に、何人かが眉をひそめる。


「研究?」


直哉はモニターへ視線を向けた。


先ほどの戦闘映像。


巨大な侵略体。


そして。


その前に立つ黄色い機体。


直哉は静かに言う。


「皆さんも、気づいているはずです」


「この機体」


「戦闘の最後に、どうなりましたか」


モニターに映像が再生される。


光。


空間の歪み。


そして。


黄色い機体が消える。


会議室が静まり返る。


将官の一人が言った。


「……転移」


その言葉に、直哉は否定しなかった。


「似たような技術です」


幹部が身を乗り出す。


「つまり」


「部隊を瞬時に移動させる技術があると?」


直哉は答える。


「国内限定ですが」


「可能です」


会議室の空気が変わる。


将官の一人が言う。


「証明できますか」


直哉は即答した。


「できます」


短い沈黙。


直哉は続ける。


「もし政府が部隊設立を決定するなら」


「我々は」


「装備と技術を提供します」


一瞬、言葉を区切る。


「そして」


「実演も可能です」


議長がゆっくり頷いた。


会議室の空気は、先ほどまでとは明らかに違っていた。


疑念はまだ消えていない。


だが。


可能性が生まれていた。


未知の侵略。


未知の敵。


それに対抗するための、新しい手段。


議長が言う。


「……わかりました」


「続けてください」


直哉は小さく頷いた。


ARC。


その構想が、現実のものになろうとしていた。






数日前。


東京湾岸地下。


HIVE。


研究区画の会議室。


壁のモニターには、戦闘データが表示されていた。


東北沿岸での戦闘記録。


侵略個体の行動ログ。


崩壊粒子の分析。


そして。


黄色い機体――ヴェスパー。


テーブルを挟んで、三人が座っていた。


直哉はスーツ姿のまま、落ち着いた様子で資料を見ている。


その向かいには、リゼリア。


端末を操作しながら、戦闘ログを確認していた。


悠真も同席している。


しばらくデータを見ていた直哉が、静かに口を開いた。


「政府が動き始めています」


穏やかな声だった。


「今回の戦闘は、かなり大きく報道されています」


「このまま調査が進めば、HIVEの存在に近づく可能性があります」


悠真が少し驚く。


「それって……」


「まずいんじゃないですか?」


直哉は小さく首を振った。


「いや」


「むしろ、自然な流れだよ」


その言葉に、リゼリアが端末から目を離した。


「問題ないわ」


あっさり言う。


悠真が目を瞬かせる。


「問題ない、ですか?」


リゼリアは椅子にもたれた。


「むしろ遅いくらいよ」


淡々と言う。


直哉が静かに頷いた。


「私も同じ考えです」


悠真は少し戸惑う。


「でも」


「HIVEの技術って……」


「国家にばれちゃまずいですよね?」


リゼリアは少し考えた。


それから、ゆっくり言う。


「私の世界は」


言葉を続ける。


「侵略が始まったとき」


「国が動かなかった」


部屋が静かになる。


悠真は何も言わない。


リゼリアは続けた。


「都市単位で戦っていた」


「軍も、国家も、動かなかった」


視線を戦闘データへ向ける。


「その結果」


「文明は崩壊した」


短い沈黙。


悠真は小さく息を吸う。


リゼリアは言う。


「ヴェスパーだけでは世界は守りきれない」


「だから、文明は文明で守る必要がある」


直哉が静かに言った。


「つまり」


「政府に情報を提供する、ということでよろしいですね」


リゼリアは頷いた。


「ええ」


悠真が聞く。


「全部ですか?」


リゼリアは首を横に振る。


「全部じゃないわ」


「核心技術は渡さない」


直哉が答える。


「ヴェスパー関連技術は非公開、と」


リゼリア


「当然よ」


悠真が少し考える。


「じゃあ」


「何を渡すんですか?」


直哉が答えた。


「敵の情報」


「対侵略兵装」


そして少し間を置く。


「転移技術も必要でしょう」


悠真が驚く。


「転移陣もですか?」


直哉は頷いた。


「ええ」


「ただし、軍事用の簡易型を」


「国内限定になるけどね」


リゼリアが付け加える。


「文明防衛のためなら必要よ」


悠真はしばらく考えた。


そして、小さく言った。


「……戦争になりますね」


直哉は静かに答える。


「何を言ってるんだか。もう戦争は始まっている」


部屋が静かになる。


リゼリアは端末を閉じた。


「構わないわ」


短く言う。


「許可する」


直哉が軽く頭を下げた。


「ありがとうございます」


そして言った。


「政府に提案いたします」


悠真が聞く。


「提案?」


直哉は穏やかに微笑む。


「侵略体対処専門部隊の設立だよ」


「名前も、もう考えてある」

いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


現在、別作品として

『不遇スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する』

というダンジョンファンタジーも連載しています。


意味不明と言われたスキル【球術】で戦う主人公と、鍛冶職の少女がダンジョンを攻略していく物語です。


もしよろしければ、そちらも覗いていただけると嬉しいです。

今後ともよろしくお願いします。

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