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恨みは水に流してあげる。一人目 三浦澪


 私はミズチさんに力を貸してもらい彼女達に会いに行く。なぜ私をいじめたのか?それを問いただすつもり。


 神社から出たあと、最初に誰に会いに行こうか悩んだけど、結局ここから家の近いみおに会いに行くことにした。




▼まずは一人目 三浦みお


  みおとは小学生からの付き合いで、いつもどこへ行くにも一緒、私は親友だと思っていた。なのに…なのになんであんな事をしたの。



「お前さん、そんな顔をしてどうする?恨みを晴らすのであろう」


 私は不安そうな暗い顔をしていたので、ミズチさんが声をかけてくれた。


「うん。大丈夫だから」

 本当は大丈夫じゃないけど、今はそう言うしかない。


「ふぅ〜そうか、ならいい」

 ミズチさんは何も言わないでくれた。

 私と同じで空気が読めるヘビみたい。


 私は声をかけられたからか少し気が紛れたみたい。

 

 道中、やっぱり私って幽霊になったんだな〜と実感することになる。すれ違う人達は誰も私を見ていない。さっきなんて曲がり角から出て来た車がゆっくりと私を引いて行った。私は「キャー死ぬ〜助けて〜」とついリアクションをとってしまい、またミズチさんに呆れられた。


 私は恥ずかしさから「なにこいつ最低なんなんだけど!」と怒ってみたが、少しして、見えていないんだからしょうがないと納得する。





 そうこうしているうちにみおの家に到着。

 はぁ〜どうしよう緊張する〜。


 私は家の前でインターホンを押すのを躊躇してしまう。


「はぁ〜怖い!押せないよ〜」

 嘆く私に一匹のへびが近づて来た。


「お前さん、わざとか?それとも学習せんのか!」

 ドシッ……へびの華麗なジャンプ蹴り?が私の背中に炸裂、アワワワワと慌てる私は体勢をなんとか整えようとするが耐えられず、前のめりになり一歩二歩と進み玄関のドアに衝突………はせず、そのまま中に入った。


 玄関で倒れている私の横をニョロニョロとミズチさんが横切る。


「お前さんはなんだ?」

「幽霊でした……」

「正解だ。おバカさん」

 

「え〜!おバカさんはひどいよ〜ミズチさん、私はまだなりたての幽霊なんだよ。幽霊に慣れていないだけだって」

「確かに人は、自分の死を認めることがなかなか出来ないものだ。それが理由で幽霊になったことを認識出来ず成仏しない者は多い。だがお前さんは違うな。ただのおっちょこちょいだ」


 ムッ!私…おっちょこちょいじゃないもん!

 私はメッチャむくれた。( ̄ヘ ̄;)





みおご飯が出来たわよ!降りて来なさい」

「お母さん今日は食欲がないから、ごめん」

「……うん、そうね!分かったわ。お腹がすいたらいつでも言ってちょうだい」



 玄関に居ると喪服姿のみおのお母さんが階段越しにみおと話をしている。



「はぁ〜大丈夫かしらあの子、突然のことだし陽葵ひまりちゃんが亡くなって落ち込むわよね。しばらくはしっかりと見ておかないと」


 心配そうに二階を見上げるみおのお母さん、そっか、今日私のお葬式があったんだ。みお……私が死んで悲しんでいるのかな〜。


「お前さんまたバカなことを考えていそうだね」

「ミズチさん………私は」

「お前さんは恨みを晴らすために来たんじゃないのかい。なんでその女を心配するような顔をするんだ。理解できないね」



 ミズチさんは不機嫌そうに言う。


 確かにミズチさんの言う通りなんだけど、でもみおは小学生からの友達で親友だし、それに実はみおには大したことはされていない。無視されていただけ、ほとんどは斎藤莉子りこと佐々木かえでのせい、だけど二人からイジメられていた時、私はみおに手を差し伸べて欲しかった。もしも声をかけてくれれば、こんなことにはならなかった。


 でも今なら私も少し冷静になれている。いじめと言えるほどのことはされていないし、嫌われたならそれは仕方がない。だからあの時のことを謝ってくれたらみおは許そうと思っている。




 私は階段を上り二階へ、みおの部屋は何度も行ったことがあるから分かる。部屋の前に行きドアを開けようとしたけど、私は幽霊なんだからそのまま入ればいい。私はドアをすり抜けた。


 部屋の中に入るとみおがベットでうつ伏せになっていた。何かに堪えるように苦しそうに唸っている。やっぱりみおは私が死んで悲しんでくれているんだ。………ごめんねみお、私、勢いでなんてことを………


 私はしばらく悲しみのあまり立ち尽くす。

 




「クッ…クッ…クフッグフッ…フフッフフッ…アハッ!ダメダメダメ!もうダメ我慢出来ないや」



 え!?なに?突然どうしたの?

 みおは口を押さえ、笑い声を抑えている。

 

 私がポカーンっと見ていると、みおはベットに座り直す。

 

「これでれんくんは私の物に、キャー!ダメダメ今は悲しまないと、れんくんに冷たい人と思われたら最悪だし、私は友達を亡くした悲劇のヒロインを演じないと、そうすればもしかして……グフフ」


 みおは思いにふけ、ぶつぶつ言っている。

 



れんとは誰だ?」

 ミズチさんに声をかけられハッとする。

 いけないボーっとしていた。


「あ、え〜っと、れんみおと同じで小学生の頃からの親友、いつも三人で遊んでいたんだよ!」


「そのれんと言うのは男だな」

「ん?そうだけど」

「なるほどそう言う関係か、分かった。それでこの後はどうする?」

「ん〜どうするって言われても……」




「明日学校に行ったら暗い落ち込んだ雰囲気を出していればれんくんが心配して声をかけてくれるはずだから思い切って抱き着いて泣くの!そしたられんくん優しいから抱き締めてくれる。キャー!なにそれ最高なんだけど!」


 みおなにを言っているの?

 私が死んで、悲しんでいたんじゃないの?

 困惑する私……



「お前さん、そいつと話してみてはどうだ」

「う、う〜ん、そうだよね。でもどうやって?」

「幽霊歴が長かったら、声を出して伝えれるくらいのこと出来るんだが、今のお前さんにはま無理そうだ。ちょうどそこに水がある。それを取り込むんだ」


 ミズチさんが言った先には水が入ったペットボトルが置かれていた。これを取り込む?どうやって?私はよく分からないながらもペットボトルを掴もうとすると、掴めた!?となると蓋を開けて飲むでしょ〜。


 グビグビ……普通に飲めた。




「よし!水を取り込んだね。そしたら喉を水を留めるように意識して声を出せば、あの子にお前さんの声が聞こえるよ。やってみな」


「うん…やってみる」

 私は半信半疑ながら、水を媒介にすることで石が拾えたことを思い出しやってみることにした。


みお聞こえる?」

 みおはビクッと反応し周りを見渡す。


 あ!聞こえたみたい。


みおみお、私だよ!陽葵ひまりだよ!」

 私は優しく声をかける。


「ひまり?……うそ!?やだ!私、幻聴が聴こえてる?」

 動揺するみお、当然だよね。私は見えていない。普通なら聞き間違いだと思う。


「違うよ!みお落ち着いて、私、みおに会いに来たんだよ」


「……………」

 みおは無言で声のした方に行き、周りの物をどかし、何かを探し始めた。


「もしかしていたずら?ふざけないで!いくらなんでも陰湿過ぎるでしょう!誰だか知らないけど訴えてやるんだから!」

 みおは誰かにいたずらされたと勘違いし激怒、私はどうしていいか分からず声をかけ続ける。




「アァ!もう!ワタシ何も悪くないわよ!罪悪感にさいなまれて幻覚を見る必要はないの。さっさと消えてよ!」


 みおが混乱して話を聞いてくれない。

 どうしょう……


「だいたいいつもいつも邪魔なのよ。のほほ〜っとしてなんにも考えてないくせに、れんくんにかまってもらってるのは、あんたがおっちょこちょいで目が離せないだけだからね!勘違いしないでほしいわ。それに意味分かんないところでブチ切れるところも最悪、空気読めなさ過ぎ、バッカじゃないの!」



…………

 …………

  …………  ………あぁ?(私はキレた)


 



▽ミズチの視点


 まったく面倒だ。話が全然進まないではないか!

 そんなヤツさっさとやってしまえば良いものを…

 ……ん?変わったか。


 陽葵ひまりの身体からふつふつと黒いオーラが湧き出ている。初めに会った時にも出ていたが、陽葵ひまりと話をしている間にこいつに恨みを晴らすような酷い行為が出来るのかと疑問を持ち始めていたが、どうやら心配は無用のようだ。



 陽葵ひまりはスーーッとみおの耳元に顔を寄せて言った「死ね」と、その声はさっきまでの陽葵ひまりとは思えないほど冷たく静かなものだった。


「ヒィッ!?」とみおは短く悲鳴を上げる。

 そこに追撃するように陽葵ひまりは言う。


 私はおっちょこちょいじゃないと。


 結構気にしているようだ。

 たぶんよく言われるのだろう。


 さっきと違って怖くなかったのか、みおは勢いよく振り返り、そして驚き腰を抜かす。


 なぜみおが驚いたのか?

 それは死んだはずの陽葵ひまりをしっかりと視認出来てしまったから、陽葵ひまりの感情が昂ったことで霊力が上がり見せることが出来たようだな。



「うそよ!あんたは死んだはずよ。ここに居るはずはないわ!また幻?」


「幻だと思うならそれでいいけど、みおって私のこと、そんな目で見ていたんだ。私すごく悲しいよ」


 陽葵ひまりは悲しそうな顔をするが、瞳の中にある光を冷たく感じた。


「ちょ!違うのよ!さっきのはその〜なに、何ていうか〜……そう!聞き間違いよ!陽葵ひまりには変な風に聴こえたかもしれないけど、悪口とか言ってないから、私達親友じゃん!」


 おいおい、この女、土壇場になって何を言い出すのかと思えば、そもそも聞き間違いと言っている時点で、何を言っていたか認識しているではないか、恐怖で混乱しておるのか?それともただのアホなのか?知らんが、よくもま〜親友と言う言葉が言えたもんだ。むしろ感心するクズだね。


 陽葵ひまりは表情を大きく変える。ニコリと満面の笑みで嬉しそうにした。


「そっか〜そうだよね!私達親友だもんね。小学生の頃からどこに行くにも三人一緒、こんなに仲の良い人達なんてそうはいないよ。そっか〜聞き間違いか、そっかそっか、私っておっちょこちょいらしいから〜」


 陽葵ひまりはぐっとみおに顔を近づけると「ヒィッ!?」とみおが小さく悲鳴を上げた。


「うふふ冗談冗談、さっきの意趣返しだよ〜ん!だって私はおっちょこちょいじゃないもん」


 陽葵ひまりはニッコリと笑う。


「な、なんだ……も〜う陽葵ひまりはいつも冗談ばっかり言って〜、私達をからかい過ぎだよ〜」


「えへへ、ごめんごめん、それじゃ〜少しは話が出来たし、そろそろ行くね!」


「え!?……どうしたの?……もう行っちゃうの」

 みおは帰ろうとする陽葵ひまりを止めようと声をかける。


 しかし私には見せかけだけで、早く消えろと思っているのが丸わかりであった。ふ〜……これは陽葵ひまりに教えてやろうとしたが。このくらい分かるだろうと思い言うのをやめた。



みおごめんね!死んだ私に残された時間は、あと僅かなの、れんや家族とも話がしたいから、行かないと」


 はて?こいつにそんなものはない。

 自然と嘘をつきおったか、意外だ。


「あ!それは急がないとダメだよ!私なんか気にしないで行って!」


「うん、それじゃ〜ね!みお


「バイバイ……陽葵ひまり

 薄く消えていく陽葵ひまりを見て、みおは顔を覆い隠し、まるで泣いているような声を漏らす。


 バレバレだな。この女。




「お前さん、この後どうするつもりだい」

「ん?そんなの決まってるじゃん。様子見だよ!」

 そう言って陽葵ひまりの後ろ側が真っ黒になっていた。


「お前さん……意外と腹黒いのか?」

「えーなに言ってるの〜ミズチさん、そんなわけないじゃん」


 そう言うと黒いオーラは消えた。

 なんじゃこいつ、悪霊になったのではないのか?

 元に戻りおった。

 普通は一度侵食されれば、もう止まることはない。まさか私が見間違えたのか?いやいや、そんなわけが………ま〜よい、もう少し様子を見れば分かることよ。



 

 そしてその時は思っていたより早く訪れた。


 みおは一日経ち、昨日のことを幻覚、幻聴だと思いはじめ口を滑らした。バカな女だ。黙って静かにしていればいいものを、陽葵ひまりの死を愚弄するようなことを言ってしまった。


 再び姿を現した陽葵ひまりを見て後退りするみおだが、そこには針のような鋭い形状に変えた水があり、足が串刺しになる。


 みおは激痛のあまり叫び声を上げようとしするが、それは叶わない。なぜなら彼女の顔にはべったりと水が張り付いていたから、必死に外そうとするが外せなかった。




 真っ青な顔で苦しそうにもがくみお

 それを楽しそうに見下ろす陽葵ひまり


「うふふ、みおは細過ぎるんだよ。私みたいにもう少し太らないとれんに好きになって貰えないよ。そうだ!私が手伝ってあげる。だって私達親友だもんね!ぶくぶく太らせてあげるよ〜」


 

 みおは水に満たされ口からぷくぷくと小さな気泡が出ていたが、それもとうとうなくなった。肺まで水がたっぷりと入った証拠だ。あれはかなり苦しかっただろう。


 みおは恐ろしい形相で溺死した。

 陽葵ひまりはそんな親友の姿を満足そうに見下ろす。



 ………………一人目。

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