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私の恨みは水となる


 目の前にぐったりとした私が見える。

 私は死んだみたい。


 そっか……良かった〜。私、ちゃんと死ねたんだ。


 私はホッとして安堵すると涙を流した。



 

 私は……自ら命を絶った。

 原因は同級生からのいじめ。

 

 ただ死んだ今でも私が何でいじめられていたのか自分でもよく分からない。


 すごくモヤモヤしたけどもういいんだ〜!

 私は死んだ!もうそんなことはどうでもいい!


 私はしばらく水の上でぷかぷかと浮いて過ごす。

 時間は無限にあるんだから……



▼それからしばらくして……


 あ!……私の死体が回収されている。

 やっと私の遺体が発見されたみたい。

 自分で言うのもなんだけど真っ青な顔で凄く気持ち悪い。

 回収してくれた人、すいません。


 それに神社の人にも迷惑かけちゃったな。

 ほんとごめんなさい……(。ノω\。)



 私が自殺したのは家の近くにある神社。

 神社には大きな池があって、私はそこで入水自殺をしてしまった。ほとんど無意識にやったことで、あの時の私はそのくらい絶望していた。


 私をいじめて、死に追いやったのは三人。

 小学生からの親友、三浦みお

 スポーツ万能で人気者、斎藤莉子りこ

 容姿端麗の学級委員長、佐々木かえで


「どうしてみんなあんなに酷いことをするの!私が何をやったって言うの!みんなも死んじゃえー!」


 いじめられた時のことを思い出すとモヤモヤと黒い感情が溢れ、いつの間にか叫んでいた。いいも〜ん!どうせ私は死んでいるんだから、誰にも声が聞こえないし迷惑にならないもん!


「わぁーー!ふざけんな!バカヤロー」

「バカヤローはお前さんだ!うるさいよ!」


 えー!?うそ!だれ!どこ?だれ!

 私は周りを見渡す。


「ここだ、ここ、こっちを見ろ」

 

 声がする方を見ると水面からひょっこりと顔を出している蛇がいた。




「キャーへび〜!助けて〜」

「お前さんはアホか、もう死んでいるんだろ」


 あ!……そうだった。

 ヘビは呆れていた。


「キャーでも喋るへびとかこわい〜」

「いやだから、お前さんは死んでいるんだから、喋るへびくらいでいちいち怖がる必要はないだろう」


 え!?……ま〜そうかも。

 ヘビは呆れていた。


「でもでも、へびが喋れば普通驚くよ」

「思いのほかアホだな」

「なんですってぇーー!」

「お前さんはもう死んだんだ。今までの普通、つまり常識は捨てろ。そもそも私はヘビではない」

「え!?そうなの?ど〜う見てもヘビにしか………」

「はぁ〜もうそんなことはどうでもよかろう。それよりお前さん、さっさと成仏しな」

「はい〜?突然なによ!」

「別におかしな話ではあるまい。死ねば天国か地獄かは知らんがあの世に行く。邪魔だからさっさと成仏しろと言っているんだよ」


 喋るヘビは言った成仏しろと、でも私の心はそれを即座に拒否している。このままでは死ねない。このまま何も知らず何もしないまま死んでたまるかと。


 私の身体から黒いモヤが湧き出ていた。


「あ〜もう、面倒くせぇ~、黒くなってるじゃねぇ〜か、思っていたより頑固そうだし、時間もなさそうだな。どーするかね〜」


「ねぇーへびさん、私まだ成仏したくない!どうすればいい?」


「ん〜……はぁ〜、お前さん成仏するタイミングを逃すと後戻りは出来なくなるかもしれないぞ!いいのか?」

 へびさんは少し悩むように言った。


「そんなこと言っても仕方ないじゃない!成仏って未練があると出来ないんでしょ!私にはまだやらないといけないことがあるの」

 私は睨みつけ怒鳴るように言った。


「確かにお前さんの言う通りだ。でも幸いここは神社だよ。神様にお願いすれば未練があろうがあの世くらいなら連れて行ってくれる。ほら行って来なよ」


「………ダメ、やっぱダメみたい。このまま逝きたくない」

 一瞬心が揺らいだ。だけどこのままは絶対イヤ!


「あちゃ〜、やっぱ頑固だよこの子。これは説得は難しいか、あの子の願いを聞いてやれなくて残念だが、これもこの子が選んだこと、仕方ないねぇ〜」


「へびさん、色々と教えてくれてありがとう。私、決心がついたよ!だから行くね!」


 私は立ち上がり池から出ようと足を進める。



「ちょいと待ちな!」

 ヘビさんに呼ばれ私は足を止めた。


「一応最後通告だよ。お前さんは恨みによって魂が穢れ始めている。このままだと悪霊になり、人に害する存在になるよ。そうなれば成仏は出来ず、仮にあの世に行けても、地獄行きは確定だよ。それでも本当に行くのかい」

「行くよ。さっき言ったでしょ、覚悟を決めたって」

「カッカッカッ、こりゃ〜相当な頑固者だったね。脅しを入れたつもりだったが、まるで揺らがないときたもんだ!これ以上は言うだけ無駄だね。好きにしな」

「うん。ごめんね!心配してくれたのに、それじゃ〜」


「待ちな」

 う〜んもう!へびさん意外としつこいな〜

 私は少し苛立ち、声を張って言った。


「ヘビさん止めても無駄だからね!私は……」



「手伝ってやるよ」

 え!?今…なんて言ったの?


「手伝ってやるって言ったんだよ。返事くらいしたらどうなんだい」


「え!?でも……なんで?………」

 私は声を震わせながら喋っていた。


 最初に疑問に思った。ヘビさんが私にそこまで肩入れする必要はないし、もしかしたら危険なことかもしれない。どうしてそんなことを言ってくれたのか?そしてすぐにすごく嬉しく思った。だって一人で恨みを晴らそうとしていたんだから、心細かったんだもん。



「でも……へびさんにはなんの関係もないし」

「私はあんまりグダグダ言うのは好きじゃないよ。それとへびさんはやめてくれ、そうだね〜私のことはミズチと呼びな」

「あの〜答えてもらってないんですけど」

「聞いてなかったのかい、グダグダ言うな!」


「………はい……すいません……」

 へびに怒られた。しかも結構ガチ目に、死んでも怒られるとか、結構へこむ。




「ほらこっちに来な……早く来な!」

 断れる雰囲気じゃないし、これ以上機嫌を損ねて怒られたくない。私はスタスタと早足で行った。


「ほら、水に潜りな」

「え?なんでよ」

「はぁ〜!(怒)」


 私は空気が読める子!怒んないでー!

 水の中に頭まですっぽりと入る。


「しばらく、そのままにしてな。いいか、いいと言うまで水から出るんじゃないよ」




 私は言われた通り、水の中に潜り続ける。

 一分…二分……も、もう息が……


「一応言っておくが、お前さん死んでいるからな。もう一回死ぬとか無理だから」


 またしてもへびさんに呆れさせてしまったようだ。確かに水の中に居るのに全然苦しくない。死んでいるんだから当たり前……だよね!ハハッ。




「ん〜〜〜〜」

 それからどのくらい経ったのか?

 へびさんはずっと唸ってる。

 何をしているんだろう?

 

 私は空気が読める子だったから、怒られると思って声をかけない。



「ん〜〜〜〜…………カァ!………ってぇ!寝るなーー!」

「う〜……はおぇ!?」

「おまえ寝てただろ〜」

「しょ…しょんなことないよ」

「全然誤魔化せてないからな。まったく器用なヤツだ。こっちは苦労して力の譲渡を行っているというのに寝るとは、お前は本当に自殺したんだろうな〜。実はコケて溺れたとかやめてくれよ」

「へびさんそれは酷いよ!いくらなんでも私そんなにドジじゃないもん」

「もんじゃねぇ〜よ!まったく。それと私はミズチだよ。短い間だがしっかり頼むよ陽葵ひまり

「あ!はい、こちらこそ宜しくお願いします」


 私はつい勢いで返事をしちゃったけど……何を頼むのだろうか?




 ミズチさんに水の中から出るように言われ池から上がる。


「うんうん、上手く行ったようだね」

 ミズチさんは満足そうに言った。………なにが?


「分かっていなさそうだな。足元の石を拾ってみな」

「アハハハ、ミズチさん何言っているの、私死んでいるんだよ!持てるわけないじゃん」

「いちいちズレた発言が腹立つわ、ま〜いい。確かに死んで幽霊になったお前さんが石を持つことは普通出来ないが、百聞は一見にしかず、取り敢えず持ってみな」



 ふぅ〜失敗失敗。また怒られるところだったよ。

 私は急いで石を掴んだ。



「え!……あれ?なんで!持ててる〜!?」

 私の手にはしっかりと石ころがあった。




「お前さん恨みをどう晴らすつもりだった」

「ん!ん〜っとね〜……」

「まさかなにも考えてなかったわけじゃ……」

 ミズチさんがジト目に変わり私は慌てて答える。

「も、もちろんです!幽霊なんで触れられないと思ったから取り憑いたり生気を吸ったりしてその……」

 その……その後、私はどうしたいの?

「思っていたよりかは悪くはない回答だが、取り憑くには弱らせなければ出来ないぞ。毎日枕元に出てウラメシヤ〜とか言って怖がらせれば、そのうち出来るかもな。生気に関してはお前さんみたいな幽霊なりたての低級霊では吸うより相手の回復の方が早い。ほとんど効果はないだろう。つまり先までのお前さんでは大したことは出来ない」

「そ、そんな〜、じゃ〜どうすれば……ん!さっきまで?」

「そう、さっきまでのお前さんならその石を持つことは出来なかった。なぜならただの幽霊は肉体を持たず物理的行動を起こせない。だから私の力を一時的に譲渡してやった。今のお前さんは周囲の水と同化し肉体の代わりに扱える」



「はぁぇ〜それで石が持てるんだ」

 普通に石を持っている手にしか見えないんだけど、これが水なの?


「ん!…え!?…うそー!」

 突然石を持っていた手が崩れこぼれた。

 石ころが地面を転がる。

 ……え!え!なんなのこれ!?


「気をつけな。水を自由自在に操れるようになっているとは言え、お前さんの意識に呼応してその姿を、形を変えれる。人の姿に簡単になれたのは元のイメージが出来ていたからだ。形を変えたいなら多少訓練が必要かもしれないね」


「ゴムゴムのピ◯トル!…!?……わぁ!腕が伸びた〜」

 私は試しに人気漫画の必殺技を使ってみたら、超腕が伸びたよ!おもしろ〜い!

 

 キャッキャッと飛び跳ねて喜ぶ私、それをジト目で見るミズチさん。そうなれば当然……


「はぁ!?違うんです!ミズチさんこれは……」

 ミズチさんはへびなので表情が分かりにくい。なのに私はどんどん分かるようになって来たみたい。あれは怒ってない。呆れてる。


「お前さん、今なら成仏出来るんじゃないのかい?」

「いえそんなことありません!私超恨んでいますから、全然成仏出来ません」

「ま〜私は暗い人間が面倒くさいから嫌いだけど、前向き過ぎる幽霊って言うのもどうかと思うけどね〜」

「えへへ、どうも」

「別に褒めてないから。お前さんと話をしているとすぐに脱線するから進まないねぇ〜。まったく、ほら、力は貸してやったんだから、この後どうするかを考えな」



「うん!分かったよ」


 私は真剣な顔で言った。ミズチさんのおかげでやれることがグッと増えた。ターゲットはもちろん三浦みお、斎藤莉子りこ、佐々木かえでの三人、絶対に許さないんだから。

 


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