第8話 実戦
コンドー隊長から召集の連絡が来たのは、休日でオオサカ藩タカツキシティーで開催されていたジャズ・フェスティバルに来ていたときだった。
召集は今月3回目だ。
多いな、と思っていたら、隊長は続けて言う。
「今回はマッキナだ。場所はキヨミズ・テンプル。全員、現地に直接集合」
するとヒジカタ副隊長が通信で問う。
「何人?」
「3人。カラクリは87体から91体の確率79%」
「了解。多いな」
僕にとって初めての実戦だ。
すぐに車に乗り、行き先をキヨミズ・テンプルに指示。
走り出す。
昔は渋滞というものがあったらしいが、人口が減少した今はそんなものはない。
緊急車両として走ったこともあり、19分でキヨミズ・テンプル付近に到着。
既に戦闘は始まっていた。
ヲキタさんがライフルで狙撃している。
僕に気づくと言った。
「カツラさん、そこの坂道を上がって、ヤマナミさんと合流してくたさい」
そのとき、カラクリがヲキタさんの背後から攻撃してきた。
僕はレーザーソードのスイッチを入れる。
しかし。
ドシュゥ!
ヲキタさんのライフル弾が正面から飛んできて、カラクリを撃破した。
いわゆる咷弾。
あえて正面の壁に撃ち、反射させて自分の背後のカラクリに撃ち込んだのだ。
「早く。ここは任せてください」
「了解」
僕は坂道を駆け上がる。
ヤマナミさんを発見。
15体ほどのカラクリと戦闘している。
ヤマナミさんは武器兵器管理担当だが、今回はマッキナ案件なので戦闘員として参加ている。
武器はショットガンのようだ。
「来たね」
「僕が最後ですか?」
「いや、ナガクラくんがまだ。イタミシティーに視察に行ってたから」
ヒョーゴ藩イタミシティーはニホンの副首都だ。
かつて空港があったらしいが、その場所に今は庁舎が乱立している。
「僕はどうすれば?」
「このショットガン、試作品でね。広範囲なのはいいんだけど、威力不足なんだよね。私がどんどん撃つから、とどめをさしてくれる?」
「了解」
ショットガンは、一撃で3~4体に同時にダメージを与えていく。
確かに、カラクリを行動不能にはできるが、完全撃破には威力不足のようだ。
僕は次々と斬っていく。
残り4体となったところで、新たに7体出現。
合計11体。
うち3体は遠距離型。
ショットガンの射程外だ。
僕はスロウナイフを3本投げる。
すべて命中。
3秒経過。
爆発。
撃破。
カラクリ相手だと、これくらいの威力がちょうどいいな。
「爆破の出力調整機能がついて、わりと使いものになってるじゃない」
「ナガクラの犠牲のおかげです」
2人で23秒で残り8体を撃破。
「よし、ここは制圧…いや」
ヤマナミさんの視線の先に、女がいた。
マッキナだ。
僕のほうに走って向かってくる。
ヤマナミさんが叫ぶ。
「カツラ! 離れて!」
僕は指示に従って引く。
敵マッキナのデータがシステムから飛んでくる。
名前はイトー・ヒロミ。
ヤマナミさんはイトーを迎え撃つ。
ショットガンでの攻撃。
イトーは回避。
回避?
あの広範囲を?
敵はヤマナミさんを通過。
あくまで僕から仕留めるつもりか。
「私に背を向けるとは、ナメられたものだね」
ヤマナミさんはレーザーソードを取り出し、イトーの背後に向けて突撃。
僕はイトーを正面から迎え撃つ。
挟み撃ちだ。
イトーの行動予測は左回避61%。右回避13%、ジャンプ回避が9%。その他17%。
イトーは武器を取り出す。
物理的なサーベルだ。
その他17%が91%に上昇。
そのまま来る気か。
ガキィ!
僕はレーザーソードでサーベルを受け止める。
その背後からヤマナミさんの斬撃。
イトーは左に回避。
そのままヤマナミさんのレーザーソードが僕に向けられた…ように見せかける。
ヤマナミさんは斬撃前にレーザーソードのスイッチを切っていた。
刀身は無い。
フェイントだ。
ヤマナミさんが再度、スイッチを入れる。
イトーの背後から切り上げ。
僕は正面から横薙ぎ。
2人で十字に斬るので、上下前後左右に逃げ場はない。
ドガッ!
「ぐっ!」
イトーは僕の腹部を蹴り飛ばした。
回避できないなら、そう来るよな。
ヤマナミさんの斬り下ろしを、回避。
しかし避けきれず、斬撃はイトーがサーベルを持っている右腕を切り落とす。
イトーはヤマナミさんに蹴り。
それをジャンプで回避。
僕は言う。
「最大出力ですけど」
ヤマナミさんは応える。
「かまわないよ」
ドゴォォォン!
爆発。
僕は蹴られる直前に、スロウナイフを地面に投げていた。
3秒は、マッキナ相手では長すぎる。
爆破出力と同じように、爆発までの時間も使用者が調整できるよう、改善要望のデータをキョート本部に飛ばした。
思ったとき済ませてかないと、すぐ忘れるのが僕の悪いクセだ。
煙の中から、イトーが姿を現す。
破壊できたのは右脚のみ。
「まあ、上出来じゃねぇの?」
「遅いですよ」
イタミからやって来たナガクラが二丁拳銃で撃つ。
あの脚なら回避は不可能だろう。
しかしそこに別のマッキナが現れ、ナガクラの弾丸を防ぐ。
装甲タイプだ。
「ふん。ここは引こう」
敵2人はその場を去った。
「正直、引きこもりの武器担当と新人じゃ、ちょっと厳しいわ」
スロウナイフの爆発で軽いダメージを負ったヤマナミさんが言う。
「サーベルはおとりで、格闘型だっていう情報は、システムにアップしておきました」
僕はイトーの蹴りで、上半身と下半身を切断されていた。
テロは鎮圧し、集合。
僕はヤマナミさんに担がれている。
残り1体のマッキナは、コンドー隊長とジェシーさんが撃破したそうだ。
コンドー隊長が言う。
「取り逃し2体か。本部からどやされるね」