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第4話 カラクリ・テロリスト

シジョー支部にキョート本部から連絡があったとのことで、召集がかかった。

コンドー隊長から説明がされる。


「マルタマチ・ステーションにカラクリによるテロ予告があった。予告日時は明日の13時00分。ヒジカタ・トシエ、ヲキタ・ソウコ、カツラ・コジローの3名で対処する。他のメンバーは待機」


すると、ヒジカタ副隊長か隊長に訊ねる。


「規模は?」

「カラクリ11体」

「カラクリだけ?」

「ああ」

「なら、そのメンバーでも問題ないか」


ヒジカタ副隊長が気にしたのは、たぶん新入りの僕のことではない。

キョート本部から出向しているヲキタさんのことだ。

出向といえば聞こえはいいものの、実質は左遷だと噂されている。

本部では戦闘力より事務処理能力が重視されるが、大きなミスをいくつか起こし、現場とトラブルになったらしい。

本部は現場をわかってない、という批判も上がり、それでヲキタさんを現場に出向させたという。


僕はヲキタさんと一緒に出撃したことはないが、戦闘能力はこの支部の先輩の中では最も低いそうだ。

武器管理担当のヤマナミさんよりも下らしい。

その代わり本部での事務経験者というのは貴重で、そちらの面では重宝されていた。

だから、メンバーから嫌われているわけではない。

ただ、ヲキタさんと新入りの僕とのトリオでは心配になるヒジカタ副隊長の気持ちも分かる。

そして、この出撃メンバーは、初めて僕が3人の戦力のうちのナンバー2として戦うことを意味する。

コンドー隊長の信頼に応えるためにも、無様な戦いはできない。


僕たち3人はテロ予告の25分前にマルタマチ・ステーションに到着した。

駅員からステーションの構造の説明を受ける。

線路は南北に走っている。

当然、テロ時間中は鉄道の運行は停止。

予告開始時刻は13時00分。

予定終了時刻は13時16分。

見物客の侵入は、警備班が防ぐ。

配信班は、数ヶ所に別れて撮影準備をしている。

そして、12時53分。

線路沿いに南北からカラクリたちがやって来る。

ヒジカタ副隊長は少しイラついた様子で言う。


「まだあと7分もあるのに。カラクリ、最近ルーズなんじゃないの?」


ヒジカタ副隊長は飲みかけのドリンクの缶をベンチに置く。


「北は私がやる。カツラは南。ヲキタはカツラを後方から支援。あまりステーションから離れないように。配信班から苦情がくるからね」

「了解」

「わかりました」


ヒジカタ副隊長は北を向いて待ち構える。

武器は使わない格闘型だ。


ヲキタさんは索敵が得意だという。

あとはライフルによる遠距離支援。

もっとも、今回のカラクリはおおっぴらに攻めてきているので索敵は必要ないが。


僕たちが担当する南側のカラクリは6体。

近距離型が4体。

遠距離型が2体。

まず近距離型を倒さないと、カラクリがヲキタさんを狙ってくる可能性がある。

すると、ヲキタさんが言う。


「私がライフルで近距離型の動きを制限します。その間に、近距離型を1体ずつ撃破してください。遠距離カラクリからの攻撃に注意してね」

「了解」


さすが、元本部隊員。

戦闘力はともかく、戦術は的確だ。


僕は近づいてきたカラクリたちに向かって走り出す。

レーザーソードの電源を入れる。

光の刃が出現する。

突き。

カラクリは横にかわす。

回転。

横なぎ。

カラクリを上下に切断。

まず1体。

ジャンプ。

僕かいた場所に遠距離型カラクリからの銃撃。

そのまま、別のカラクリに空中から斬りおろす。

かわされる。

カラクリが槍で僕に反撃。

後退して回避。

ヲキタさんのライフル弾が僕の背後を通過。

僕を背面から攻撃しようとしていたカラクリの動きが一瞬止まる。

正面からカラクリの槍による刺突。

かがんでかわす。

カラクリの槍は僕の背後のカラクリに命中。

僕はレーザーソードのスイッチを押す。

刀身が伸びる。

斬り上げ。

2体目撃破。

斬り下ろし。

3体目撃破。

左側から、遠距離型カラクリの銃撃。

回避。

近距離型はあと1体。

どこだ?

発見。

ヲキタさんに向かっている。

しまった。

僕はヲキタさんの方へ走る。

背後から遠距離型2体からの銃撃。

かわす。

ヲキタさんのライフル。

近距離型は横に回避。

若干、スピードが落ちる。

再度、ライフル。

近距離型は再度、回避。

さらにスピードが落ちる。

そこに背後から、僕のジャンプ斬撃。

槍を持ったカラクリの右手を落とす。

本当は一撃で倒せるが、ファンサービスというやつだ。

ツバメ返し。

斬り上げて、左右に切断。

残りは、遠距離型2体。

僕は振り返る。

すると、遠距離型は既に撃破されていた。

ヲキタさんが撃ったライフル弾2発は、はじめから遠距離型を狙っていたらしい。

しかも、そのついでに自分に向かってくる近距離型の速度を削ったわけだ。

「この程度は、私でもできますよ」


どうやら、僕はヲキタさんを侮っていたようだ。

このメンバーでも僕がナンバー3に違いない。

なるほど、コンドー隊長の狙いはこれか。

お前はまだまだ、ファンクラブができたからっていい気になるな、というわけだ。


というわけで、今回の撃破数も4体。

更新ならず。


「ちょっと。あなたたちもルーズ過ぎない? まだ13時3分なんだけど。これじゃ動画に広告を入れる時間もないじゃない。貴重な収入源なのに」


北側を倒し終わって既にこちらに来ていたヒジカタ副隊長が言う。

それに対してヲキタさんが指摘する。


「えっと、副隊長も倒すのが早いと思いますが」

「わかってないなぁ。ここは私が新人のカツラを助太刀して戦う感じでしょう? あとね」


ヒジカタさんはため息をついて僕に言う。


「カツラ、これ、どうしてくれんのよ。弁償ね」


ヒジカタさんの手には、僕を攻撃した銃の流れ弾で穴の空いた、飲みかけだったドリンクの缶が握られていた。


こうして、マルタマチ・ステーションのテロは予定より13分早く終結した。


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