第3話 暗黒の新中世:人間と生成型AIによる情報汚染の時代(2030~2100年頃)
「それで、この後、ニホンは…」
講師は映像を示しながら話す。
カラクリとの戦闘がない日は、訓練、座学、視察などを行う。
今日はニホンの新中世史についての講義だった。
入隊試験の出題範囲だが、復習を兼ねて全員が参加必須だ。
シンセングミでは、歴史の知識は戦闘能力の次に重要な能力といって良い。
今から400年近く前、2030年代前半からネット上で正しい情報を判別することが困難になったからだ。
これには2つの要因がある。
1つは、世界中の先進国で台頭した排外型保守主義の政治家やその支持者が、ネット上に大量のニセ情報を投入したこと。
例えば歴史情報の大量削除や捏造、国際機関や科学全般についての事実に基づかない非難などだ。
もう1つは、この時期に普及した生成型AIの影響。
生成型AIは、ネット上の情報を学習し、それを元に情報を生成する。
しかし、その学習する情報が捏造だったり事実と異なれば、生成される情報も当然誤ったものになる。
このときの大きな問題は、<AIが生成した誤った情報を、再度、生成AIが学習していまう>ことだ。
例えば、栄養の再吸収のために自分のフンを食べる動物がいるが、フンを食べてまたフンをし、さらにそれを食べてまたフンをし、また食べて…、というのを無限に繰り返すことに似ている。
クソみたいは情報を吸収し、よりクソみたいな情報を吐き出し、さらにそれを吸収した結果、そこから吐き出される情報はクソしかなくなった。
この人間による情報汚染と、生型成AIによる情報汚染は、最悪の組み合わせだった。
この状況が改善したのは、AIが正しい情報を考え判別する<意識型AI>が登場した2090年代以降。
このおよそ2030年~2100年までを、中世ヨーロッパになぞらえ<暗黒の新中世>と呼ぶ。