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第14話

 疲労感はあるけれど、なるべくスキルの練度を上げておきたいし。

 そうと決まればクレイクラフトである。土を掘っては工作を繰り返す。

 たまには農具以外にも作ってみようか。最近では食卓に並ぶ料理も増えたことだし、お皿やコップを作ったらママも喜ぶかな。たまには実用的なものにこだわらず、趣味に走るのも良いかもしれない。

 そうだ、土偶にもリベンジしよう。ママに魔物扱いされたの、まだ根に持っているんだよね。どうせなら可愛い動物の置物なんて良いんじゃないかな。上手くできたら売り物になるかも?

「んんん、なかなか奥が深くて難しい」

 やっているうちに、ある程度かたちにはなってくるものの、職人気質が芽生えるのか妙なこだわりが出てきてしまう。納得ができないと粘土に戻してもう一度……。

 だけど時間と仕事に追われていた前世と比べると、こうして土に触れている時間が天国のように感じる。スローライフ最高。

 最近になって気づいた新事実なんだけれど、ボクって割と単純作業が好きみたいで、同じことの繰り返しも苦にならないんだよね。思い返せば前世の小さいころも、RPGでひたすら最初の街でレベル上げをやっていたり、ブロックを積んで建築するゲームを何時間も続けたりしていたっけ。

 そういえばあのゲームでも農業にハマっていたなぁ。機械を導入して自動で収穫するようになって、最終的に築き上げた大農園を見た友達がドン引きしていた記憶が……そうだ、この世界でも自動化できるようになったら、みんな驚くだろうなぁ。

「でも機械なんてどうやって作ればいいんだか……って、あれ?」

 しばらくあーだこーだ言いながら土偶制作をしていると、材料となる土を掘っている最中になにか固いものが手に触れた。

「なにこれ?」

 他の場所ならいざ知らず、この男爵領で粘土以外が出てくるなんて初めてだ。慎重に手で掘り出してみると、それはビー玉サイズのガラス片……ではなくて、綺麗な水晶(クリスタル)だった。

 六柱状のクリスタルを指で挟んで太陽に透かして見ると、中に小さな炎みたいなのが揺らめいて見えた。キラキラしていて綺麗だけど……うーん、ただのクリスタルには見えないな。

「なんだか魔石にも似ている気がする……」

 思い出したのはママから誕生日プレゼントとして貰った、赤と青の宝石だ。あれも石の中で光が蠢いていた。

 おそらく地中に埋まっていた魔素が濃縮されて硬化したんだと思う。魔物の体内で生まれたのが魔石なら、これは自然が生み出した魔晶石といったところか。サイズ的にはボクが持っている魔石と同じくらい。

「ということは、あんまり高い値段では売れないってことかぁ」

 売り物にすらならないと笑い飛ばした、モージャー侯爵と商人の表情が脳裏に蘇る。あぁ、思い出すだけで怒りが湧いてきちゃう。

 お宝を発見した気分だっただけに、ちょっとだけ残念な気持ちだ。かといって捨てるには勿体ない。なにか使い道はないだろうか。

 そこで目に入ったのは、先ほどボクが作っていた工作の数々である。

「宝石の代わりとまでいかずとも、装飾として使ったら綺麗になりそうだ」

 花瓶につけてもワンポイントになるし、土人形(土偶からレベルアップした!)に嵌めたら可愛くなるかも?

 そうと決まればもっと魔晶石が欲しくなる。よし、今度は魔晶石を探しながら土を掘ってみよう!

 石を探すことを意識しながら掘ってみることに。すると、出るわ出るわ。ものの三十分もしないうちに、数十個もの魔晶石が見つかった。石探しというより、もはや採掘である。

 どうして急に見つかり出したのかと調べてみた結果、とある法則が判明した。どうやら一定の深さを越えると、魔晶石の採掘率が上昇するようなのだ。これまで見つからなかったのは、表層ばかり掘っていたからかもしれない。そもそもこの土地が掘れるようになったのって、ここ最近だしね。こうなると、まだ発見すらされていない謎も多そうだ。

「おぉ、これはこれで面白いな」

 さっそくボクは魔晶石と粘土を混ぜて、とりあえずの造形物を作ってみた。

「おぉ、なんかそれっぽいかも!」

 土の人形に魔晶石を嵌め込むと、よりそれっぽくなった気がする! よし、これをバイショーさんに渡して量産化してみようかな。そうすれば売り物になるかもしれない。

「……ってあれ? もう夕方?」

 ふと空を見上げれば、すでに太陽は西の空に沈みかけていた。夢中で制作していたらいつの間にか時間が過ぎていたようだ。この調子なら新しい商売も始められそうだし、今日はここまでにして帰ろうっと。

「そうだ。せっかくなら魔石も嵌めてみよう」

 今回の粘土工作は会心の出来だった。猫と犬をモチーフにした土偶なんだけど、日本のゆるキャラを参考に作ってみた。猫がお殿様で、犬の方が忍者。我ながら可愛くできたと思う。

 その土偶たちの額に、それぞれ魔石を嵌め込んでみる。ええっと。赤い石を猫に、青い方を犬に……。

「おぉ、これはまた……」

 ディテールにこだわったおかげで、まるで生きているかのような躍動感。今にも動き出しそうだ。額の魔石も良い感じに神秘さを醸し出している。

「って、あれ?」

 そこでボクは気づいた。二体の土偶がボクをじーっと見つめていることに。なんだろうこの既視感……あっ、分かった。ジャガイモが魔物化したときの雰囲気に似ているぞ!?

「偉大なる創造主様(マスター)、はじめましてなのニャ」

「きえぇええ、猫が喋ったぁああ!?」

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