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裏路地  作者: 珠雷
5/9

5件 面会①刑務所編

〈登場人物〉

アイラ

青崎あおざき 蒼汰そうた

七沢ななさわ 大翔はると

星宮ほしみや 夏鈴かりん


御木刑務所に到着するとアイラはタクシーとサッと降りて、刑務所の表門をジーッと見た。

蒼汰はささっと料金を支払い、帰っていくタクシーに軽く頭を下げた。

そして、門や囲いである壁を見ているアイラに話しかけた


「どうかしたんですか?」

「57いや…60かな」

「アイラさん?」


ぶつぶつと呪文のように数字を並べるアイラ。計算のようなものが終わった後門を指さしながら


「多分この門相当古いでしょ。

あちらこちらに錆とか傷が見える。デモでも起きたらすぐに突破されちゃうよ」


そう言って歩き始めるアイラを見て蒼汰が聞く。


「それで、さっきまで並べていた数字は…」

「あぁ。それは、俺がこの門を突破するのにかかる時間。

よく見たらこの門の上、電気通ってるし危ないから超えることはしないなぁとかって考えてただけだよ?さ。中入ろう~」

(この人収監するまでには、どうにか直さないとな…)


アイラの見立ての恐ろしさを実感した蒼汰は、少しフリーズした後また、アイラの前を歩いた。

刑務所の中に入る前に、手荷物検査をしてから金属探知機を通り中に入るのだが…


・・・ピーーー・・・・


その音が響いたのは蒼汰が通った後、アイラが通った時だった。

蒼汰は小さい溜息の後、アイラに近づき


「持っている武器置いてください」

「えー…全部?」

「全部です」


そう言うと、

アイラは上着の内ポケからナイフ、

拳銃、

マッチ、

ダイナマイト、

謎の瓶

その他危険物を、白いトレーの上に並べていった。


そして、また通ろうとすると


・・ピーーー・・・・


「はぁ。全部」


そう蒼汰が言うと、

次はズボンのポケットから

拳銃の玉、

折り畳み式ナイフ等をまた別のトレーに出した


「こんどこそ…」


係員も小さい声でそう呟くなか。

また通る


・ピーーー・・・


「反応するの早くない!?!?」


そうアイラが突っ込むと、蒼汰は最初とは段違いなほどの溜息をついたあと、アイラに提案する


「私が直々に身体検査してから、金属探知機に通るのでいいですか?このままじゃきりがない…」

「もー…今回だけだよ~基本触られるの好きじゃないからさー」


確かに嫌そうな低い声を出したが、静かに手を広げて身体検査を待った。


「失礼します」


そう言って上から下へと服まで調べ上げた結果。合計4つ分のトレーが埋まった。

そのカゴの量を見た係員たちは声すら出ておらずただ唖然としていた。

蒼汰は呆れたような口ぶりで


「じゃあ、通ってください」


と言って通ると


・・・・・・・・


と無事鳴らなかった。

係員は小さく歓喜しているのに対して、アイラはどこか不服そうな顔で頬を膨らませた後。

蒼汰が中へと歩き出した。

その後ろをゆっくりとついて行くアイラ。


「じゃあ面会室に呼びますか…」

「あ、そのやり方以外ってできたりする?」


面会用の書類を書こうとする蒼汰に対してそうお願いするアイラ。


「面会室に呼び出す以外の方法ってことですか?なくはないですけど…なぜですか?」

「いやぁーこの間裏街ウロチョロしてたらさ。

〈面会の呼び出しは面倒〉っていう声聞いてさ~。

確かにいちいち移動しなきゃいけないのはめんどくさそうだなぁって思って」


そう言って、蒼汰を見つめるととある提案をする


「牢屋に俺が行こうかなって思って。結局話したいのってこっちだから」

「・・・分かりました。

ですが、気を付けて下さいね。他の囚人たちも何をしでかすかわかりませんので」


そう警告をすると、アイラは笑って返事をした。


「いやぁ~相当のマヌケじゃないと俺の事〈襲おう〉なんて考えないから大丈夫だよ~」


そのアイラの予想は的中。檻の中にいる囚人はみな静かにアイラを見つめているだけだった。

その様子を見て、蒼汰は驚きつつも面会の事について話し始める。


「では、まずは七沢から行きましょう。

確か彼はこの階のはず…見えてきました」


蒼汰が指さすその先には、少し広めの部屋があった。

アイラが窓から覗くと七沢ななさわ大翔はるとはゆっくりと近づいてきた。


「あんたは確か…百鬼家の…なんだ次男か」


元気はあまりなさそうな声で話しかけてきた大翔。

それに対して目を見開きながら、返答した。


「おぉ~俺の事、知ってんだ~ 表で活動してたって聞いてたから少し意外だな」

「少しでも裏社会に足を踏み入れたやつなら誰でも知ってんだろ。特に百鬼家の事なんざ」

「まぁそうだよね。ところで質問なんだけどさ君は盗人なんだよね。

その技術をここから出て、俺と一緒に使ってくれないかな?」


『盗人』

そんな、懐かしい言葉を耳の中に残したまま収監された大翔は自分ば呼ばれていた言葉に身を震わせた。

それに気づいたアイラもその気を逃すかとさらに勧誘を進める。


「もちろん俺のためにじゃなく、自分のために使ってもらって構わない。でも」

「契約書とか諸々書いてからって言いたいんだろ?」


その先読みに驚きながらもアイラは笑顔で首を縦に振った。

それを見た大翔は少し時間を置いた後


「他のやつらは?」

「個性豊かだよ~俺も仲良くなれるか、まだ分かんないけどね」


その弾むように楽し気な話具合に自分まで楽しく思えた大翔は

ゆっくりと立ち上がりアイラに近づいた。


「いいぜ。あんたの仲間になる」


その返答にアイラは嬉しそうに喜んだ。

だが、アイラはふと仲間になってくれた理由が気になった。


「ちなみに、なんで仲間になってくれるの?」

「ん?なつーか…今のあんたの話し方が楽しいときの昔の俺にそっくりな何かを感じたから。

は、理由にぁならねーかな?

あ。あと、全員集まってから俺を出してくれ。正直、ここの生活が気に入ってんだ」


そう言って大翔も初めて笑って見せた。

すると、蒼汰が〈そろそろ〉と声を掛けた。


「そろそろ行かないとみたいだ」

「じゃあ、また。楽しみにしてるぜ。ボス」


声を掛けると小さく手を振って、アイラと蒼汰を見送った。


そうして2人は、階段を使い上の階へと上がった。

その階はやけに天井が高く、電気が真ん中にだけ集まっている場所だった。


「あのスポットライトの檻の中に入っているのが、先日見かけた星宮ほしみや夏鈴かりんです」

「フレンドリーちゃんね。じゃあ行ってきまーす」


そう言って、蒼汰を置いて小走りで中央に向かった。

辿り着いてからは、アイラも驚くものがそこにはあった。

それは…


「すごーい!」

「ん~?え?だれ?」


そこには、ラジカセと洋服が何着か用意された。

まるでテレビのスタジオのような場所だった。


「え?ここって刑務所だよね!すごい!」


そう驚きを隠せないアイラをジーッと見つめて思い出す夏鈴。


「アンタ確か、サツと一緒に居た。謎の女!」

「!?」


その言葉にさらに混乱をしたアイラだが、改めて自分の格好を思い出す。


・すこし長めの髪

・緩めのデニム

・萌え袖のパーカーと上着


「――確かにぱっと見、女だわ」


と自分の中で解決をしたアイラは、丁寧に説明をした。


「まず、こんにちは。俺はアイラ。

確かに格好からすれば女みたいだけど俺は男だよ。

そんで、今日は君を勧誘しに来たんだ」


その勧誘という言葉に興味が沸いた夏鈴はアイラに近寄る。


「何に関する勧誘?」

「君のその身体能力をまた外の世界で生かすことができるっていう勧誘。

もちろんその能力も君の物だから君のために使ってもらって構わない。

ただ、俺のチームの1人になってくれればいいんだ」


そう言うと、夏鈴は目を輝かせて檻の柵に手を触るほどの勢いで近づいた。


「また!また、外で動けるの!?」


その言葉に笑顔で頷くアイラ。

夏鈴は嬉しそうに飛び跳ねるとアイラの方に向き直り、


「アタシ出たい!この刑務所から!また外で動きたい!」

「分かった。じゃあこっちの準備が整ったらまた迎えに来るね」


そう言って、アイラは手を振った後、夏鈴に背を向けて蒼汰の居るところまで歩いた。

夏鈴が舞い上がっている姿は意外とルンルンかもしれません

今回も読んで頂きありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ

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