3件 履歴書
〈登場人物〉
アイラ
青崎 蒼汰
星宮 夏鈴
「何人ですか?」
周りを見渡すアイラとそれを見つめる蒼汰に店員が話しかける。
表街にあるカフェよりも言葉は鋭く、見た目から分かるヤンキーだったがそれでも、アイラも少し雰囲気に慣れたのか笑顔で蒼汰を見る。
「はぁ。2人でお願いします。席はテーブルで」
「わかりましたー」
明らかに態度の大きい店員に対しても手慣れた様子でついて行く蒼汰。
その後に歩くアイラ。
席に着くとメニューを乱暴に置いて去っていった店員の背中を少し見つめた後、アイラは本題を切り出した。
「朝方話したように、この紙は履歴書以上に情報が足りていない。だから、他の情報が欲しいです!」
「はい」
「よっし。じゃあ早速教えて~」
そうアイラが言うと蒼汰は自分の持ってきたカバンからファイルを取り出し、
それをアイラの前に置いた。
アイラは不満そうな顔で蒼汰を見た。
「読んでくれるんじゃないの~〈口頭で〉って言ってたのに~」
そう言うと蒼汰は深く溜息をつき、ファイルを開いた。
「今回はあなたのご所望通り、〈頭のねじがゆるゆるの極悪人〉を集めてみました」
そうして、ペラペラとページを捲りながら話しを続ける。
「このファイルには囚人から、表向きは仕事をし続ける大バカ者。挙句の果てには、前科ありの殺人鬼なんて…載っているジャンルの幅はとても広いです。
その中でもあなたのわけわからない要望に応えていた選りすぐりの5人の情報をお渡ししました」
そうして、初めの方のページに戻り話し始めた。
――ここからは、蒼汰の一方的な音読です――
1人目は、七沢 大翔。
表向きは元スポーツ選手でその歴はたったの3年。
その3年間でとても有名になり世界にその名を轟かせました。
裏では、人の心理をよく理解しているため、高い権力を持つ人の交渉人として動きますが、
その後は依頼人をさらに欺き相手から宝や権威を奪い取る盗人です。
2人目は、赤木 響。
表向きは映画のスタントマンとして、暮らしているそうです。
ですが、裏では自分の芝居のうまさを利用して沢山の人を騙し詐欺などに手を貸しています。
今ではやっておらず、前科を背負いながら職に就いているようです。
今までお話ししていたのが、純日本人です。
そして、今からお話しするのが、ハーフや海外の者です。
3人目は、アメリカ人の両親を持つリーサ・ブラウン。
国籍は最近日本に変えたばかりですが、日本語はしっかりと話すことができます。
彼女は海外では有名な武器商人の1人娘で物凄い武器オタクです。
今は表向き、コンビニのアルバイトをはしごしています。
4人目は、アメリカと日本の血が混ざった橋本 源。
彼は母親がアメリカ人でしたが、父親が分からなかったために2歳で捨てられたとされている者です。
ですが、彼は今は表も裏もありません。
アイラさんのように、裏社会で生活をする者になったのです。
本名は裏社会では通っておらず、その代わり、ゲンという名前で通しています。
彼はハッキングの技術に長けている代わりに、戦闘ではあまり役に立たないという情報もあります。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そう話し終えると、フーと溜息をつき天井を向いた。
字の見過ぎで、天井には模様のようなものが蒼汰の目には映っていた。
その様子を見てアイラは蒼汰が最後に説明するページの顔写真を見た。
「・・・」
1人でその写真を見つめるアイラ。
どこかで、その顔を見たことがあるからだ。
そうして、見つめていると蒼汰が復活した。
頭の位置を戻し、言葉を続けた。
「では、最後の説明に入ります。
彼女は星宮 夏鈴。
橋本と同じように表裏が無いですが、買い物や要があるときは表にでて、その他生活では裏で暮らしています。自由奔放で身体能力がとてもいいと聞いています」
「へぇ~表社会に詳しそうだね」
そう話していると、後ろのお客が席を立ち上がり、足音がどんどんと近づいて来る。
そして、蒼汰とアイラの間に顔を出して、ファイルを覗き込む。すると、
「あれ?なんでアタシの事が書いてあんの?」
「・・・え?」
アイラが後ろを向くと、そこには店の前で出会った女性の姿があったのだ。
しかも、その女性は〈アタシが〉と言いっている。
その顔をみた蒼汰は落ち着いた様子で、
席を立ち上がり、
女性の後ろに立ち、
手錠を付けた。
「――えぇー!!あんたサツだったの⁉言ってよ~」
3コマ漫画のように起こる出来事に目が点になるアイラ。
その後、カフェの前に蒼汰と同じ部署の方が来て、夏鈴と共に帰ろうとした。
その時、
「では、選び終わったら連絡を下さい」
「――蒼汰。俺決まったよ。・・・全員でお願い!」
「ぜ、全員。ですか…中々に個性の強い者共ですが、大丈夫ですか?」
そう確認をすると、アイラは笑顔で
「個性の強い奴ほど、強いって知ってるからね。
でも、仲間にする前に実際に会えないかな?相性もあると思うし」
すると、蒼汰は手帳を見て話した。
「えぇ。大丈夫ですよ。では、今週の土曜日でいかがでしょう。
御木警察署の裏門に12時頃来てください。私と一緒に、面会を行いましょう」
「はーい。お願いしまーす」
そう言って、背中を向けてアイラはまた帰っていった。
その後ろ姿を、夏鈴は静かに見つめてた。
夏鈴は意外と抜けていそうですね
面会ではどんな会話ができ、相性も気になります
今回も読んで頂きありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ




