2-1
2
今日はパチンコだ。
スロットが勝てない。
パチンコも今は大勝ちができないがスロットよりは勝率が高い。
鉄野郎は独り暮らしをしている。
JR中央線の高円寺駅から西武新宿駅の野方駅の中間あたりに住んでいる。
42,000円という掘り出しものの安さのアパートで暮らしている。
利用するのは高円寺駅のほうだ。
いま向かってるのも高円寺にあるパチンコ店だ。
いつものパチンコ店に行くと朝から並んでいる顔見知りがいる。
よく話をするようになった同じパチンカスだ。
鉄野郎は31歳。
そのパチンカス、日光定吉は30歳。
北海道旭川市出身。
神奈川県横浜市出身の鉄野郎よりも都会的な雰囲気がある。
女子にどちらとつき合いたいかとアンケートをとれば多数が定吉を選ぶことだろう。
「よお、今日はなんにする?」
鉄野郎から話しかけた。
朝の挨拶なんかは省略だ。
そんな余裕はない。
今日、勝たないとあとがない。
給料日まではまだあるねぇ。
負けたら生活費がない。
それでも果敢に挑むのがギャンブラーの性ってやつか。
サラ金で借りることができる金額はあと15,000円はあったか?
正直、これ以上の借金は本当にヤバいんだよなぁ。
全部で210万円くらいはある。
今の定期収入だけじゃ返せる金額じゃないね。
だからギャンブルで大きく当てて返してやるのさ。
これはギャンブラー特有の思考であって本人がそのことに気づいてない。
だからクズ鉄と呼ばれることにまでなってしまったんだ。
クズでどうしようもない鉄野郎を略してクズ鉄だ。
開店、鉄野郎も定吉も店内へとそそくさと足を踏み入れた。
待っている連中はそれほど多くなかったので慌てる必要もなかったのだが、これも底辺ギャンブラーの性ということ。
回りが良い台となれば限られてくる。
海物語、エヴァンゲリオン、北斗の拳といったところか。
鉄野郎は狙っていた海物語に座ることができた。
この312番台が調子が良さそうだと予想していた。
見事に当たることもあれば大ハズレのこともある。
ハズレのことが多い気もする。
でもそれこそがギャンブルだ。
わかっちゃあいるがやめられない。
勝負で使えるのはマックス22,000円まで。
それが手持ちの現金すべてだ。
さぁ、いざ勝負。