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馬車での一幕

 公爵領内のほとんどの街の視察を終え、視察を行う街は残り1つとなった。


 その街に向かう馬車の中。

 俺はルルアから疑うような視線を向けられていた。


 その原因に目を向けるとーー


 「?私の顔をじっとみてどうかしましたか?あ、キスしたいんですか?ルルアの前じゃ恥ずかしいですけど旦那様が望むのでしたら‥‥‥」


 目を閉じキス待ちの姿勢になったリリアがいる。

 

 リリアは聖女にはならないと俺に告げた日からこうした態度を取ることが増えてきた。

 最初こそ人目のある場所ではやらなかったが今では妹の前であろうとお構いなしだ。


 まあ俺もそれに毎回応えているので人のことは言えないし、リリアがこうした行動をやめない理由の一つだ。

 俺がリリアの顔に近づき口付けをすると向かい側に座っているルルアがもう我慢の限界だとでも言いたげに声をあげた。


 「私の前で何やってるの!?ねえ、私もいるんだよ!?なんでそんなこと堂々とできるの!?それにレイス様と姉さんはいつからそんな関係になったの!?」


 一気に大声で捲し立てたせいか大きく肩で呼吸をしているルルアに隣に座るレヴィアナが水を手渡した。


 「ルルア様、お水です。ゆっくり飲んでください」

 「はあはあ‥‥あり、がと‥‥‥」


 レヴィアナから受け取った水をゆっくりと飲み終えたルルアは今度は落ち着ついて先ほどと同じ質問をしてきた。


 「で、もう一度聞くけどいつからレイス様と姉さんはそう言う関係になったの?」

 「うーんと、いつからでしたっけ旦那様?」

 「お前たちと出会って2週間ほど経ってからだ」

 「あ、そうでしたね!」

 「2週間!?そんなに早かったの!?」


 ルルアは俺が言った期間が意外だったのか目を丸くして驚いている。


 「少し前から姉さんの変化はわかってたけどまさかそんなに早かったなんて‥‥‥。ちなみにどういう経緯でそう言う関係に?」


 ルルアは姉の恋愛事情がよほど気になるのか驚いた表情から一変、瞳をキラキラと輝かせて尋ねてきた。


 ルルアの隣に座るレヴィアナも興味深げにこちらを見ている。


 「そうですね。私が聖女になるかならないかで悩んでいたのはルルアも知っていますよね。それでーー」


 リリアがゆっくりとあの夜の話をしていく。

 とても大切な思い出をかたるかのように顔に微笑みを浮かべながら。


 リリアが話を終えると、ルルアは俺とリリアにそれぞれ異なった視線を向けてきた。

 ルルアは以外そうな表情で口を開く。


 「レイス様って案外優しいのね。普段冷たい態度なのに姉さんを助けたりして」

 「気まぐれだ」

 「本当に?」

 「お前を引きずりながら馬車を走らせてもいいんだぞ?」

 「ごめんなさい」


 ルルアが揶揄うような笑みを向けてきたので軽く脅して黙らせておく。

 今だに俺に敬語を使おうとしないのもそうだが、俺を揶揄おうとするなんてコイツはなかなか度胸がある。


 「でも、姉さんが嬉しそうにしてるのは私も嬉しいよ。姉さん小さい頃から体が弱くて、やりたくてもできないことが多かったから」

 「ルルア、ありがとうございます」

 「お礼なんていらないよ。それにしても姉さんはいい人捕まえたよね。見た目が良くてお金持ちで強くて、冷たいのが玉に傷だけどこれ以上ないほどの優良物件だし。あーあ。私もこんな人と結婚したいなー」

 「それなら、ルルアもレイス様と一緒になりませんか?」

 「えっ?何言ってんの姉さん。レイス様は姉さんのでしょ」

 「旦那様は貴族ですから私一人のはずがないでしょう?それにあなたはとても可愛いんだから旦那様も喜んでくれますよ。ね、旦那様?」

 「‥‥‥そうだな」


 俺の言葉を聞いたルルアは一瞬で顔を真っ赤にすると、顔を俯かせながら左右の手の指を突き合わせモジモジし出した。


 「す、少し考えてみる‥‥‥」


 呟くようなルルアの言葉を聞いたリリアは、グッと俺に向けてサムズアップしてきた。


 俺の女はどうやら策士らしい。

 

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