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13年

 俺がレイス・ヒーヴィルに転生してから13年の時がたった。


 最初こそ何故自分がレイスに転生しているのかと混乱したが考えてもどうしようもなく、理由がわかったからといってどうすることもできないのだからと割り切った。


 そして俺は目標を定めた。


 このままいけば俺はゲームのように命を落とす。

 盲目な"正義"を掲げる主人公によって。


 不愉快だ。


 そんな奴に殺されたくはない

 だから俺はゲームのレイスが手に入れることができなかったものを手に入れ、運命シナリオ壊す。


 背中を預けることのできる仲間を手に入れ、俺を愛してくれる女を手に入れ、運命シナリオを壊すことができる圧倒的な力を手に入れる。


 差し当たってまずは力を手に入れることを優先順位第一位とした。

 貴族として家庭教師からの教育を受ける時間の合間を縫って、3歳ごろから体を鍛え、技を磨いてきた。

 元々レイスにはあらゆる才能があったため俺はメキメキと実力を伸ばしていった。

 

 6歳になった時『召喚魔法』というものを習得した。

 俺はこの魔法を使ってゲームでは一切登場することのなかった悪魔という存在を召喚した。

 その悪魔によって俺の実力は一人の時と比べ物にならないくらい急激に伸びていった。

 

 結果、現在までに帝国上位の実力を手に入れることができた。

 だが、俺はその実力を隠している。


 俺は公爵家の長男であるため多くの人間が家の権力や地位、コネを求めて近寄ってきたり、邪魔をしてきたりする。

 そんな状態で俺に帝国上位の実力があると知られれば、そういった人間はさらに多くなり自由に行動をすることもままならなくなる。

 そのため実力を隠しているのだ。


 だが、実力を隠してもこれ以上増えないというだけで、今いるものが減るわけではない。


 まさに、今のように。


 「ーーですので、レイス様には大変オススメの商品となっております。レイス様は将来必ず大物になるでしょうから先行投資ということで三割引きのお値段にいたしますがいかがでしょう?」


 俺の目の前でニコニコと胡散臭い笑みを浮かべているのは肥えた腹を揺らす男の商人だ

 おそらく俺とのコネを作るために商売に来たのだろうが、勧めてきたのは俺にはすでに必要のない魔道具だった。


 商人の勧めてきた魔道具は人工的に負荷のかかる空間を作り出し鍛錬による効果をあげるというものだ。達人レベルの人間でも効果があるというほとんどの場合は優れていると判断されるものだ。


 俺が体を鍛えているということをどこかで聞きつけて売りにきたのだろう。

 だが、俺はこの魔道具程度の負荷ではあまり効果が無く、自前で用意することができる。

 そのため、俺には不要な物だ。


 「私には必要のないものだ。今回はお引き取り願おう。」

 「えっ!?」


 断られるとは思っていなかったのだろう。

 商人は心底驚いたような顔をしていた。


 「な、何故ですか!?レイス様は体を鍛えておられるのでしょう!?ならば、この魔道具は必要なはずです!」


 公爵家へ商談に行き何も買ってもらえなかったとなればコネが手に入らないどころか商会の名前に傷がつき、他の商人から馬鹿にされることになるとわかっている目の前の商人は必死に魔道具を売ろうとしてくる。


 「だから必要ないと言っているだろう。お前のその耳は飾りか?」

 「‥‥‥本当によろしいのですな?」


 俺が商人を馬鹿にするような言葉を口にした途端、商人はその顔から表情を消し、静かに俺に問う。


 「くどいぞ」

 「‥‥‥わかりました。それでは私は失礼させていただきます。次の機会にはよろしくお願いします」


 そう言って扉に向かう商人は自分に"次"があると思っているらしい。


 「ファーム伯爵」

 「ッ!?」


 俺が呟いた言葉に商人が扉に向かって進めていた足を止め、こちらを振り返る。

 その瞳には驚愕の感情が滲んでいる。

 

 「お前はファーム伯爵家のお抱え商人らしいな」

 「え、ええ。そうでございます」

 「帝国の多くの領地に作物を輸出しているファーム伯爵家とは癒着関係にあり、ファーム伯爵家の作物を輸入している領地に対して悪質な商談を持ちかけ、相手が頷かない場合にはファーム伯爵家から作物の輸出を止めるぞと脅して無理やり商談に頷かせる」

 「な、なぜそれを!?」


 商人が思わず言った様子で声に出し、すぐに自らの失態に気がついて口を閉じる。


 三流商人のこう言った姿は実に滑稽だな。


 俺は商人の言葉を無視し、ソファーに腰掛けたままに口を開く。

 もう外向けの口調はやめだ。


 「実に不愉快だ。死んで償え」

 「な、何を馬鹿なことをっ!私は帰らーー」


 俺の言葉に恐怖を覚えたのか再び扉に向かおうとした商人の首が胴から転がり落ちた。

 首に続くように胴も膝から崩れ落ちて前に倒れる。


 俺はこれまで黙って俺の後ろに立っていたメイドに声をかける。


 「ご苦労だった。レヴィアナ」

 

 レヴィアナ。

 艶やかな輝きを持つ長い黒髪を持ち、理想的な肉付きの体をメイド服に包んだ絶世の美女。

 俺の専属メイドであり、この世界においての異端イレギュラーであり、俺が召喚した最高位の悪魔である。

 そしてーー






 7つある大罪の一つ『傲慢』を司る悪魔でもある。






 

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