どうも。山田ノロのママです。
「うええぇえんすみませんすみません」
「ええから黙って食いなん」
我が家のリビングで、フルプレートショタハーフエルフが塩トマト食ってる。……どういう状況?
私は食卓のちゃぶ台に置いた漆黒の兜を見て、そしてイケアで19800円だったソファで塩トマト食ってるショタエルフの顔を見た。
エルフといえば美形だが、たしかに美少年級といえる。
髪は淡い茶色。頬はつるっとしていて、髭が生えてくる兆候はまだない。瞳は緑で、耳は長い。
(エルフじゃん)
「……すみません。たびたびご迷惑をおかけしまして……五臓六腑に染み渡りました」
「その顔で五臓六腑の言い回し完璧でびっくりですよ」
「母が日本人なもので」
「あの、つかぬことをお伺いしますが、炎天下になぜ鎧を着て出るなんて危険な行為を? 」
彼は苦笑した。
「ああ、脱げないんですよ」
「それは宗教上の理由だとかで? 」マンダロリアン的な?
「あ、いえ。この鎧、うっかり着たら呪われていて。この体では実家の仕事も手伝えないので、こちらでリモートワークができる仕事を探して来てます……」
「はぁ、それで……」VTuberになろうと……。
「はいぃ……」
「……」
会話が途切れてしまったー!
お隣さんは、「あっ、つい言っちゃった」みたいな顔をしている。
そうだよね! ファンタジー設定いきなり語り出しちゃった人になってたもんね! (その設定、Ⅴのキャラ設定じゃなくてリアルのやつなんだ……)って思ってるよ私でも!
いや、これは私が悪い。好奇心から意図せずパーソナル情報を引き出してしまって、気まずくなって黙ってしまった私が悪い! これだからコミュ障は!
「……あっ! あの、ご挨拶が遅れてしまって申し訳ありません。ぼくはその、301の田中ノロといいます」
「うっ……! 」
私はたじろいだ。気を使って自己紹介の流れを作ってくれた。それは分かってる! しかしこの瞬間、私の目の前には、二つの選択肢がボーンッと展開されたのだ。つまり、職業と身分を明かすか否か!
シンキングターイム!
……するまでもないか。
「あの……すみません実は、ワタクシはこういったものでして……」
すすす。名刺を差し出す。
「こ、これはこれは、ご丁寧にありがとうございます。すみません気を使っていただいて……。
あえ……? ほわ、えっ、ええっ!?
ひぇぇえええええっっっ!!!! 」
いえほんと、こちらこそ。
すみません……。