フルアーマーハーフエルフ系VTuber
最後まで書けたので投稿します。
全七話、ゆるっとした中編です。よろしければ、評価や感想お願いします。
私がママになった異世界系VTuberが、たぶん隣に住んでる。
ここにおける『ママ』というのは、けっして養育者としての母という意味ではない。VTuberと呼ばれる活動者の外見となる、イラストを手掛けたイラストレーターのことを言う。
つまり私『ハタ・エリザベス』が依頼されて、先日めでたく納品した新人VTuber。こいつがもしかしたら隣人かも? しれん? ……の、だが……? という話。
ことの発端は、強風と、お洗濯ものである。
たまたま拾ったバスタオルと同じ色が、チラリと見えた隣家に干されているのが確認できたので、隣人のよしみで届けようと試みた。……ら、びっくりドッキリ。
依頼書にあったそのままの、西洋甲冑フル装備の人物が玄関先に出てきたもんだからさ。
「わあ~! わざわざありがとうございます! 」だって。
2mくらいあったかな。天井まで届きそうな、真っ黒なフルプレートアーマーから出た声は、とっても可憐というか、ボーイソプラノみたいな美声。
いやあ、こりゃあ……。核心にして確信よ。証拠そろっちゃったわよ。
サンプルとして依頼書にあった写真と声、おんなじだったもんよ。
もうどうも言い逃れできねえよな。
(あのサンプル画像、あの人の私物だったんだなぁ)
この時点での私、ハタ・エリザベスには、『自分があなたのママなんです』なんて名乗り出るつもりはまったく無かった。
(世の中は狭いもんだわね。ま、ただ一回仕事しただけの人にリアルの姿をさらしたくは無いし、こっちもただの隣人として付き合うしかないか。いまどき、ご近所付き合いってリスク高いもんね)
翌日、アルバイトから帰宅した我が家のドアに、紙袋がかかっていた。
『先日はありがとうございました。実家から届いたので、よかったらこれどうぞ。』
紙袋は某服屋の清楚なショッパー。
そこに、キュウリとオクラとトマトがぎっしりと、『関西だししょうゆ味』のポテトチップス(ちょっとレア)。
贈り物はその人を映すというが、まさしくこの紙袋ひとつに、隣人の人柄が投射されている気がした。
(そういえば、依頼のときも丁寧で優しかったな)
私はリビングで『田中ノロ』のSNSを検索して、仕事用じゃないほうのアカウントでフォローした。
ママだって、お仕事抜きでわが子を推したいのだ。