雑草魂
俺は雑草だ。たとえではなく、本当に道端に生えていて、花壇なんかに生まれた日には速攻抜かれる存在だ。不遇だろ。で、俺は古くなったコンクリートの隙間から地上に出るところってなわけ。花壇とか菜園とかにうっかり誕生しちゃったやつよりはマシだけど、まあまあ苦労はあるんですよ。がんばんなきゃ地上の空気も据えないわけだし。まったく人間というものは雑草によくないシステムを作る天才だな。
そうこうしているうちに、春になった。俺は見事に誰にも抜かれずに地上に顔を出すことができた。ここ一帯は人間が必要としていないらしく、他の奴らも俺と同じように順調に成長している。
「やあ、今日の気分はどうかね。」
俺よりも先に地上に葉を出したやつが先輩気取りで言った。
「今日は太陽が出てていい気分だよ。でも、もうちっとでかくなって太陽の恵みをもっと受けたいな。」
そう答えると、俺の意見に賛同したように、他の奴らも口々に「僕も」「私も」と言う。
この日を境に、ここに住む雑草たちは全てのエネルギーを己の身長を伸ばすことに費やした。誰もが負けじと伸ばすもんだから、なんだか辺りは鬱蒼としてきた。確かに太陽には当たりやすくなったが、みんながみんな互いに譲歩するなんてことを考えないから、だんだん当たる面積が少なくなってきた気がする。俺はそんな気持ちを払いのけ、どんどん伸びていった。気づいたときには、みんなを見下ろせる位置にまで成長していた。
そんな日々を送ってきたある日の昼下がり、久しぶりに人間の気配がした。ザクザクと他の奴らをかき分けてくる音がする。そして、ふと俺の前に止まった。
「これは良い草だ!一番長いし使いやすそう!」
なにやら俺の下の方で「ポキッ」っていう音がした。すると、みるみるうちに、視界が下がっていく。俺が長い期間をかけて積み上げてきた成果が人間の一存によって崩れていく。シンプルに悲しい。こんな最期は雑草たるゆえんなのか。
その人間は俺を拾い上げた後も、めぼしい奴らを同じように刈っていった。刈られた直後には感じなかったが、だんだんと体から力が失われていく感覚に陥った。さっきまであんなに働いていた俺の頭もぼんやりしてきた。ああ、これが俺の最期なのか。こんな人間の手の中で息絶えるのが俺の最期か。そこで意識が途絶えた。
数刻経ってから、俺はハッと飛び起きた。感覚を呼び起こした。どうやら俺は水につかっているらしい。隣には俺と同じように刈られた奴らが並んでいる。前には何やら見たことのない雑草がいた。俺らみたいな葉っぱだけの奴じゃなくて、赤や黄色の頭を持っていて何だか見た目が豪華だ。
「あら、いい感じに生けたわね。」
「そう言っていただけて嬉しいです。この葉っぱ、実はそこのビルの裏で採ってきたんですよ。」
ふと、目の前を見ると、俺を刈った人間が白い頭をしている人間と何やら話している。鋭利なものを手に、葉を眺めている様は、どこか恐怖も感じられた。
「本当にきれい。今度の華展は期待できそうね。」
そう言って、白い頭の方が去っていった。綺麗と言われて残った人間は嬉しそうにしている。白い頭の奴が俺らの方を見ていうもんだから、俺までもなんだか自分が褒められているように感じて嬉しくなってしまった。
こういうのもありかもしれない。俺の第二の人生としてここでの生活を楽しもうと心に決めた。どこでも生きていける、こういうことが真の雑草魂なんじゃないか。




