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螺旋を描く魔術師 ~力こそパワーというのは時代遅れだ~  作者: 古賀ノコギリ
序章 少年時代
9/32

誤算

「では始めましょう。まず、ロッド君は自分の魔力を意識的に操れるようになるところからです。」

「はい!どうすればいいんですか?」

「方法は二つあります。ひとつは私の魔力に触れ、その感覚を元に自分の中の魔力を認識する方法。ただしこれは人によっては非常に時間がかかる上、魔力を実際に操るのはその次のステップとして別の修行となるのであまり効率がよくありません。もっとも君は感知タイプですから、長く見積もっても4ヶ月以内には魔力操作まで身に付けられるでしょう。そしてもうひとつの方法ですが、こちらはうまくいけば感知と操作を一度に習得できる上、前者よりも早い。ただし、それなりに苦しい思いをすることになります。」

「......具体的に何をするんですか?」

「昨日と同じです。私がロッド君の魔力を吸い上げます。」

「え、それだけですか?」

「まさか。君は私に魔力を吸われないよう抵抗するのです。要するに魔力で綱引きをするようなものです。」

「ちなみに俺が綱引きに負けたらどうなるんですか?」

 昨日かなり手加減してもらってあの寒さだったのに、もし魔力を吸い尽くされたらどうなるの......?

「別にこれは勝ち負けを決めるためではなく、あくまでロッド君の魔力操作の習得が目的です。当然加減はしますし、君の魔力を吸い尽くしたりはしません。それでもかなりの魔力、体力、精神力を消耗するとは思いますが。」

 一応安心。でも今の言い方からして、魔力を吸い尽くされたらまずいってことだよね?

「先生、ちょっと気になったんですけど、魔力を空っぽにされたらどうなるんでしょう?」

「それについては今後の修行で触れる機会があるのでその時に教えます。それで、どちらにしますか?」

 どうしよう。3年の内の4ヶ月は短く...はないよね。でも綱引きはめっちゃしんどそうだし......

「ロッド君、参考としてお話しますが。」

 ウンウン唸りながら悩んでいると先生が話しかけてきた。

「一般的な魔術師の家庭では、子供が6歳の頃から魔術指導を始めています。つまり、君は既に約4年の遅れを取っている状態です。大変ですよ?学院のレベルについていくのは。君が本気で魔術師になりたいのであれば、この3年間で無駄にできる時間はありません。さて、もう一度聞きます。どちらにしますか?」

 多分、ここで妥協しても先生は最後まで俺の指導を真剣にやってくれると思う。でも最初の一歩目からそんなんでいいのか?先生がさっき言ってたじゃんか。先生は俺に魔術を教えるだけ、最後に頼るべきは自分だって。やってやるさ。男は度胸!

「じゃあ綱引きでお願いします。」

「よろしい。では早速始めましょう。時間は限られていますからね。」


 先生が俺の頭を鷲掴みにしてきた。昨日は撫でるだけだったけど、少しは力を入れてくるってことかな?

「昨日の感覚を思い出してみてください。まずは魔力を認識するところからです。」

 おお、来た。昨日と同じ全身を撫でられてる感覚だ。

「今は何か感じますか?」

「全身を撫でられてるような感じです。昨日も最初はこんな感じでした。」

 昨日は何がなんだかわかんなかったけど、今日は俺を撫で回すこれが何なのか探る余裕がある。何だろう、猫の肉球みたいでちょっと気持ちいい。

「今私の魔力で君の全身の魔力門を強制的に開けるところです。あ、大丈夫ですよ。門が開いたからといってそれだけで魔力が放出されるわけではありませんので。門が開ききったらそこから私が魔力を吸い上げます。」

 魔力門?知らない単語が出てきた。夜の反省会で聞いてみよう。

「ひゅあっ!?」

 来た、昨日とは比べ物にならない寒さだ!しかも何だ、これ?息が苦しい...!?力が、入らない......

「......?これは...まさか、そんなことが!?」

 先生が俺の頭から手を離すと、寒さはまだ少し感じるけど息苦しさはなくなった。だが体に力が入らず、地面に膝をついてしまった。

「はあっ、はあっ、せ、先生...?」

「......ロッド君、申し訳ありません。私の考えが少々甘かったようです......。」

 先生が背中をさすりながら、渋い顔で俺に謝ってきた。

「先生...一体、何が...?」



 俺の具合がよくなると、先生が深呼吸をしてからぽつぽつと説明を始めた。

「...その、ロッド君は魔力放出が苦手な代わりに感知と操作に優れるタイプと説明しましたよね?このタイプは魔力が失われることに対して敏感ではありますが、それはあくまで感覚で理解できる、ということであってここまで負担が大きいわけではありません。先程私がやった魔力吸引ぐらいでは体調を崩すことはないはずなんです。」

「じゃあ、俺はどうして...?」

「理由は三つ推測できます。ひとつはロッド君は魔力総量が常人より少ないが故に魔力が空になりかけたか、もしくは魔力門の耐久力が低く、放出の負荷に耐えきれずオーバーロードを起こしたか、そして君の魔力感知のセンスが鋭すぎるせいで過剰に反応してしまったかのいずれかです。あるいは複数の理由かもしれませんが...しかし先程の吸引時に門に触れていた感覚からすると、門のオーバーロードに関してはほぼ間違いないかと...。」

 どういうことなのかほとんどわかんないな...。でも先生の表情が暗いということは、かなり絶望的ってことなの......?


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