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螺旋を描く魔術師 ~力こそパワーというのは時代遅れだ~  作者: 古賀ノコギリ
第1章 学院の洗礼
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答え合わせ

 店内飲食ができるスイーツショップを見つけた俺達は、各自注文の品を受け取ってテーブル席に着く。


「本当にいいのか?散々迷惑かけたってのに...」

「いいから素直に喜びなさいよ。そんな申し訳なさそうな顔じゃ奢りがいがないわ。」

「すまん、ありがとう。」

「一番大変だったのは本人だからね。遠慮なんかすることないよ。」


 ナスターシャ達には迷惑をかけてしまったので、ここは謝罪の意味も込めて俺が奢ろうとしたのだが、一番大変だったのは俺なのだからむしろこっちが奢ってやろう、ということで押し切られてしまった。

 ナスターシャの言う通り、暗い表情をしては彼女達に申し訳ないからな。味わっていただこう。結構な値段なだけあって、驚くほどうまいプリンだ。


「改めて自己紹介を。ロッド=ナターンです。さっきは巻き込んでしまってすみませんでした。そして、証言してくれてありがとうございます。」

「ちょっと、敬語いらないって言ったじゃない。やめなさいよ。」

「こういうのはしっかり伝えなきゃ気が済まないんだ。ここからは普通に喋るからそれで勘弁してくれよ。」

「うーん、路地裏での乱闘の時とはえらい別人だねー。私はケイティ=ピトネンシエ。ナスターシャとキュリアとは地元からの付き合いなの。ケイって呼んでね。よろしく、ロッド君。」

「わ、私、キュリア=カドゥルナスっていいます。よろしくお願いします。」


 何というか、見た目と言動が見事に一致しない3人だ。見た目ナスターシャ+中身キュリア、見た目ケイティ+中身ナスターシャ、見た目キュリア+中身ケイティの組み合わせが一番しっくりくるんじゃないかと想像したが、先入観の押し付けにしかならないわな。いくら何でも失礼すぎる。


「よろしく。それで、あー、何から話したもんかな..。聞きたいことが多すぎて切り出し方がわかんなくなっちゃった。」

「先にそっちから聞いてくれていいわよ。さっきベンチに座ってるあなたに声をかけた時、何か聞きたそうにしてたでしょう?それの続きからにしたら?」


 すげえ綺麗にまとめてくれたよ。リーダーシップが眩しいくらいだ。


「じゃあお言葉に甘えて。ナスターシャ...さんも何となくわかってるっぽいけど。その、君のおばあさんの名前って、ナナティエラ=アニムカルスだったりする?」

「ナスターシャでいいから。それで質問の答えだけど、その通りよ。ナナティエラ=アニムカルスは私のおばあちゃん。」


 やっぱりそうだよな。そうじゃなかったらえらい恥かくところだった。


「そっ、かあ......。偶然にしては出来過ぎだっての...。」

「そうね、私も同じ意見よ。で、私からも質問というか確認だけど、あなたを指導した教導魔術師って私のおばあちゃんなのよね?」

「その通り。ナナ先生の手紙に俺のこと書いてあった?」

「いいえ。教え子とその家族に関することは、個人情報として国に報告する以外では第三者に教えてはいけないの。例え指導役の親族でもね。あと必須ではなく任意でなら、教会関係者に相談することは許可されているらしいわ。でもおばあちゃん、指導している子が私と同い年ってことをうっかり手紙に書いちゃってたのよね。幸い検閲には引っかからなかったからよかったけど、白に近いグレーだったんじゃないかしら。」


 ナナ先生天然説はますます真実味を帯びてきた。何してんですか先生...。


「それで俺とあいつらの会話から俺が一般家庭出身だって知って、ナナ先生の教え子が自分と同い年だと知ってたからもしかして、って思ったわけか。見てただけとはいえ、あの状況でよくそこに辿り着いたね。」

「別に私だって冷静じゃなかったわよ?学院の先輩が入学前の新入生にお金をせびってるし、その相手があのニーナ=ナターンの息子だとも聞こえたのよ?それらを何とか整理しておばあちゃんのことと結び付けられたのは自分でも驚いてるんだから。というか、見てただけじゃないのよ?私は事が始まる前に通報しようとしてたんだから。まあケイとキュリアとで相談して、状況が悪くなったら止めに入って通報しようってことにしたんだけど。」

「あ、あの、ごめんなさい!」


 突然キュリアさんが謝って来た。急にどうしたのこの子。


「わ、私、その、実はロッド君のことを見捨てようとしたんです!」


 あまり聞きたいとは思えないカミングアウトだ。本人が話す気っぽいから止めるつもりはないけど。

 ナスターシャとケイティさんも止める気はないらしい。庇い立てして甘やかすのではなく、キッチリ清算するのを見届けようってわけ?

 この子達、本物の親友(マブ)だな。男より男の友情してるじゃん。


「ロッド君が上級生に絡まれてるのを見て、ターちゃんが通報しようとしたけど私は見なかったことにしようって言っちゃったの。もし治安維持隊が来て喧嘩が収まったとしても、邪魔したってことで上級生に目を付けられるんじゃないかって思っちゃって、そしたら恐くなって...。」


 ほーん、そういうことだったのね。確かにあんな輩に目を付けられたら最悪の学院生活を送る羽目になりそう。しかも相手は曲がりなりにも上級生だったわけだしな。

 というかターちゃんって、まさかナスターシャのことか?


「...まあリスクを意識しちゃうってのはわかる。しかも俺は同じ学院生になるとはいえ所詮赤の他人だしな。結果的に俺は無傷だったわけだし、キュリアさんが自分から言わなければ本来俺は知ることもなかった。許すも許さないもないんじゃないかとは思うけど、そうだな...キュリアさん、君は今何のために自分からこんなことを言い出した?」


 正直彼女がしようとしたことは、善いこととは言えはないが極端に悪いわけでもないと思う。所詮知らなければそれまでの話なわけで。

 だからこそ彼女が謝ろうとした理由が気になった。


「それは...卑怯だと思ったから...。」

「へえ...?」

「確かにロッド君はあの上級生達に簡単に勝っちゃったし、治安維持隊の人からも見逃してもらえたから結果的にうまく切り抜けられたよ?でも、そのままよかったよかった、で普通にお喋りするのは、卑怯で、気持ち悪くて、不誠実だって思ったの。だからちゃんとお話しして、ロッド君がどう感じたのかを受け止めなきゃいけないの......。」

「じゃあキュリアさんは、もし俺に許されないかもしれないとしてもそれを伝えられた?」

「うん......!どんな結果になったとしても、絶対に謝る。」


 目を逸らさずに言ってのけた。俺よりよっぽど心が強いな。天晴だよ。


「そっか......すごいな、キュリアさんは。」

「ううん、私は結局何もしてないし―――」

「ちゃんとケジメをつけようとしてるじゃん。キュリアさんは誠実だよ。それにさっきも言った通り、俺は無傷で終わったんだ。責める気はない。この話はもう終わりだ。」

「......ありがとう、ロッド君。ところで、私のことはさん付けはしなくていいよ。普通に呼んで?」

「あ、私も呼び捨てで呼んでね!そこんとこよろしく!」


 さっきまで静かだったケイが会話に入ってきた。どうやらただマイペースな活発女子ってわけじゃないみたいだな。

 ちゃんと場の空気を呼んで押し引きできる賢さがある。


「俺も呼び捨てでいいよ。無理にとは言わないけど。」

「ん~まあおいおいね。」

「私もその内...。」


 なんで急に遠慮しだした?自分のことは呼び捨てにさせようとしたのに。


「地元だと同年代の男友達がいなかったのよ。だから微妙に距離感がおかしくなってるんじゃない?」

「ええ...不器用かよ...。でもナスターシャは普通だね?」

「こんなのはやってしまえばできるものよ。」

「ナスターシャはメンタル強すぎなんだよー。私達はあくまで普通なの。」

「そうだよターちゃん。」

「そう言いながらもう適応し始めてるんじゃない?」


 女子達がやおら華やかな雰囲気を醸し出した。そのの中に自分がいるのはやや収まりが悪い気がするが、それこそナスターシャの言う通りやってしまえばできるものだろう。


「あ、そうそう。その乱闘のことでちょっと聞きたいことあるのよ。ロッド、あなたあの時一体何をしたの?」

「何って、見てたんだろ?素手で殴ったんだよ。」

「そういうことを聞いてるんじゃないの。魔術が不発に終わるなんて、明らかに普通じゃなかった。なのにあなただけは随分冷静だった。何か知ってるんでしょう?」


 第三者視点だと、流石に俺の動きは怪しく見えるか...。


「ん?どういうことなのナスターシャ?ロッド君がどこか怪しいの?」

「ターちゃん?」


 違った。どうやらナスターシャの洞察力が優れているということらしい。ケイティとキュリアがそれ程鈍いわけでもないだろうし。


「そんなに知りたい?」

「やっぱり知ってるのね。」

「おいカマ掛けたのか?」

「さあ?それで、教えてくれるんでしょう?」


 完全にいいように転がされてる。

 でもナスターシャはナナ先生のお孫さんだし、何より彼女達には助けられたし迷惑も掛けてしまった。誠意を見せなきゃな。


「じゃあ、他言はしないでくれよ?ちゃんと答えるからさ。」

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