それでもまずは一歩
もしかして俺って、どうしようもないくらい才能がないの......?
「先生、俺は...ダメなんですか?魔術師にはなれないんですか...?」
先生は口を固く結んだまま答えてくれない。返事に困ってるのかな?
「私には―――」
先生がやっと口を開いた。
「私にはまだ断言できません。まだ私も君も知らないだけで、ロッド君には何かしらの魔術に関する才能が秘められているのかもしれません。ですが例え何らかの才能があったとしても、魔力門の脆さだけは恐らくどうにもならないでしょう。何せ君のようなケースは聞いたことがありませんから、前例がない以上門の強度を上げる方法もわかりませんので...。」
マジか。俺って魔術師としてとんでもない欠陥品ってこと......?
とは言っても結局どういうことなのかピンとこないんだけど。まあ、修行していけば俺にも何かしらいいところが見つかる...かもしれないんだよね?何かしらの才能があるかもって先生が言ってるし、そこまで重く考えることもないんじゃないかな?母さんは俺のこと超マイペースで、いざとなったら勢い重視なところがあるって言ってたけどさ、そんなこと言われても今回は無理なものは無理ってことらしいし、とりあえず魔力操作の修行しなきゃじゃない?
「んー、正直俺半分も理解できないんですけど、とりあえず魔力操作の修行はどうします?」
「君という子は......逞しいのか楽天家なのか......しかしなるほど、人を指導するのが久しぶりすぎて、自分の目線と言葉だけで片付けようとしてしまいましたかね。年を取ったせいか、私もつまらない常識に縛られていたのかもしれません。」
ちょっとだけ先生の表情から力が抜けた気がする。
「確かに、何はともあれまずは魔力操作の習得が先決ですね。ロッド君の欠点を補う方法は、一通り基礎が出来てからでも遅くはないでしょう。それで、どうしますか?修行方法についてですが、私が魔力吸引をもっと緩やかにすれば恐らく君にも耐えられるかと思いますが。」
「それでいけるんならそれでお願いします。」
「わかりました。ところで、先程の吸引時に何か感じるものはありましたか?自分の内側に今まで感じたことのなかったものがあったとか?」
「いやー、自分の中には特にはないですね。でも先生が魔力門?っていうのを開けようとしているのは何となく感じましたよ......多分?」
「ほう、具体的にはどのような感覚でしたか?」
「何というか、猫の肉球で肌を優しく押されているみたいな?」
「...自分が何かされていることを感じるだけでなく、私の魔力を具体的な感触で捉えていた...?魔力を物理的な感覚で認識し形容するなど聞いたことがない。私の魔力に触れたのはまだ2回目だというのに...でも私は確かに彼の魔力門には細心の注意を払って優しく扱った。今はまだ無自覚でも、自分の魔力も同様の感触で認識できるとしたら?もしや本当に彼には特異な才能が...?」
なんか先生がブツブツ独り言を始めちゃった。
「先生?どうかしました?」
「あ、いえ、すみません。もう自分に触れてきた魔力を感知できるとは、すごいことですよロッド君!この調子なら自分の魔力を認識するのも遠くないかもしれませんね!」
「先生、なんかテンションが行ったり来たりしてますけど大丈夫ですか...?」
「いや引かないでください!修行初日でこれは本当にすごいことですよ!?正直先程の特別な才能があるかも、というのは半ば慰めで言ったようなものでしたがまさか本当かもしれないなんて...あっ。」
「......先生?」
先生の目が泳ぎに泳ぎまくってる。完全にやってしまったって表情だよこれ。
「...その、無責任な発言をしてしまい申し訳ありません。君と向き合うことから逃げたも同然ですよね...はあ、先生失格です。」
「別にそんな気にしなくていいですよ。半ば慰めってことは、もう半分は俺に可能性があるって信じてくれてたんでしょう?それで充分ですから。それに、先生は俺のことをバカにするどころか同情して謝ってくれたじゃないですか。」
俺は本気でそう思ってる。だって、同情されずに見捨てられるのに比べたら、同情してもらえる方がマシに決まってるもんね。やっぱり先生はちゃんと優しい人なんだよ。
「......本当に、逞しい子ですね。」
「もー、そういうのいいですから早く修行しましょうよ。」
「ふふふっ。わかりました。では先程よりも優しくいきますからね。ロッド君は吸引に抵抗することよりも、私が魔力で何をしているのか、そして私が触れようとしている君の魔力門と魔力を感じることに集中してください。」
「はい!お願いします!」
この日の修行では魔力操作の習得まではいかなかったけど、自分の魔力を自覚するとことまではできた。
先生は魔力吸引を一呼吸ごとにゆっくりやるからその時の感覚をしっかり味わいなさいって言ってたから、その通りに集中したら少しずつ感じ取れるようになった。そのおかげで自分の中から何かが抜ける感覚とその源にあるものを掴むことが出来た。これが俺の魔力ってことか。
日が落ちてきたところで修行を切り上げて家に帰ることになった。来る時と同じ方法で。
やっぱ超怖いよアレ。
母さんもいつも通りの時間に帰ってきたから4人で夕飯にする。父さんと母さんが先生に今日やったことについてあれこれ質問してる。先生は俺に適当なことを言った(と本人は思ってる)と反省したみたいで、俺の魔術師としての欠点を隠すことなくすべて話した。二人とも魔術師ではないとはいえ、俺よりは理解してるっぽい。一時的に空気が重くなったけど、俺に魔力感知の才能があるかもしれないと聞いた途端ニコニコしだした。わかりやす過ぎる...。
「ロッド君、この後は今日の振り返りをしますからね。疲れているとは思いますが、お忘れなく。」
そういえばそうだった。腹一杯食べて眠くなってきたけど、もうひと踏ん張りしますかあ。
第1章⇒序章に変更しました。
少年期はあくまで前置きとなります。
序章はあと2話で終了です。




