表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/53

解雇の真実

「本当に良かったのか、ジン……」


「お前達も賛成しただろ、エド、リファ」


 宿から去りゆく背中を見届けた、勇者ジンは、はぁと溜息を吐いた。本当に良かったのか、尋ねたのはリデに路銀を渡した魔法使いのエドだった。


「そうだけど、ちょっと言い過ぎたわよ絶対……私もキツかったもの」


「本当に悪い事をさせた、けど……こうまでしないと、リデが僕らから離れないだろうから」


 女僧侶リファが、胸元に手を置いて首を振れば、勇者ジンは申し訳なさそうに彼女に謝意を示す。


「本当……リデにはこの旅路、幾度助けられたか……幾度彼の力に頼ったか……」


 ジンはリデが去った扉を見てそう言い出す。


「民草を救えなかった時の弁明……僕を馬鹿にした聖女騎士との決闘……魔王に与していた要人の暗殺……僕がしなければならない事、彼が代わりにしてくれた」


「私が貴族子息と無理矢理婚姻を迫られた時も、どこからか余罪を見つけ法廷送りにしてくれたわ、そこからの奴隷市場の摘発までするなんて」


「国内外問わず、政敵として送られてきた刺客も、誰が信じれるかも彼が調べ上げ、守ってくれた」


 三人はここまでの旅路で、リデに助けられてばかりだった。勇者ジンは、国内外、勢力問わず存在が政敵とされていた。


 魔族だけではなく、欲と野心に駆られた人間の敵も旅路の中で出会ってしまったのだ。


「しかもだ、手柄は全て僕がした事に、汚れは自分だけ、彼は被り続けた……彼を恨む輩は、旅路でたくさん出来た、本来恨まれるのは僕なのにだ……」


 それら全てを一身に背負ってくれたのが、リデであった。


「だから、もうそんな事してほしく無いから、帰らせたんでしょう?」


「そうだとも……もう、彼が手を汚す必要無いから……けど、これくらい強く言わないとリデは帰らないだろうと」


「リデは……怖いくらい勇者に心酔の気があったからな……」


 リデに関して語らう三人、ジンは2人を交互に見て、また語り出す。


「何より、リデは強かった……3日前の魔剣士との死闘……僕はついていくのがやっとだった」


「ええ、魔法の強化無しに、ひたすら前に前に切り込んで、傷だらけになりながらで、治癒魔法も追いつかないから見てられなかったもの」


「俺に構わず魔法を放てなんて言い出してさ、手加減したら殺してやるって言われてさ、全く見てない魔法を避けながら戦って……最後に魔剣士を突き刺した時はもうさ、泣いちゃったよ」


 三人して天井を眺めながら語り明かす。3日前の死闘が今でもまだ、ついさっきの様に思い浮かんで仕方ない。


「しかし、勘付かれたかもしれないな、リファの治療薬、わざわざ手製の調合品だろ?使ってよし、売れば中々の買取額になるやつ」


「でもエドだってわざわざ貯金を全て路銀として渡したじゃない、本当なら杖を新調するんだって貯めてた全財産でしょ?」


「それを言ったらジンが自ら慎重に丁寧に研いだ剣はどうなんだよ、他人の剣を研ぐって、信頼を意味するんだろ」


 追い出した際の選別で、絶対勘付かれただろうと、三人はお互いをそれぞれが原因として指摘しながら、朗らかに笑うのだった。


「魔王か、強いんだろうな、配下の剣士であれだったんだ」


「リデ無しなら、私たち全員首を落とされるかもね」


「首を落とされても、噛みちぎるくらいで行こう……リデが戦わなくて済む世界にする、僕たちだけで戦うんだ」


 勇者達の決意は固かった。


 それを闇騎士が、知るよしも無かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] うぬぅ… やはりそうだったのですか! 勇者、あっぱれな心意気!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ