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触れたら即投げ

「じゃあ……始めましょうか、真婚凄克を!」


 衣服を着替えた四人を前に、マリューが両手を広げ、開始を宣告する。


 しかしだ、真婚凄克の規律は知ったが、これは4対1で闘う事になるのだろうかと、僕は縛られてマリュー達を見ながら思った。


「皇女さま、これは1対1……よね?確認するけど」


 それに気付いたヴァルスが、確認とマリューに話をかけた。


「いいえ、正確には花嫁一人を決める儀式だもの、だから……貴女達も互いを蹴落としていいのよ、それこそ協力してもいい……真婚凄克はそうだと記述されていわ」


 そう言ってマリューがニヤリと笑った。4対1でもなければ、1対1でもない、これは生き残り戦である。その為には協力あり、裏切りありだとマリューの言葉に、ヴァルスも、ルーナも、エニーも、エンディも反応してしまった。


「リデと、二人で……」


「リデさんと夫婦に……」


 何ということか、マリューは仲間割れを誘い、漁夫の利を得ようとしていた。今でこそ僕と四人は関係を築いて来た、そして彼女らは考え直して欲しいが僕と添い遂げる気満々である。


「お姉ちゃん……」


「エニー……」


 もしもだ、そんな一人を自分だけのものにできたら、蹴落とし合い殴り合い、殺し合いになってもおかしくない!


「ヴァルス、本気にするなよ……これは仲間割れーー」


「ふざけないで!1人なんて無理に決まってるでしょう!」


「はぃい!?」


「なんですって?」


 ヴァルスに僕は声をかけた矢先、彼女からとんでもない返答が返ってきた。マリューは顔を顰め、理解ができないと彼女を睨む。


「あんた、リデと夜を過ごしたのなら分かるでしょうに!私たち4人一晩でぐったりになるのに、リデは余裕でパイプ吹かしてるのよ!?」


「その、求めていてこう言ったらなんですけど……一人で相手は死んでしまいます……」


「うんうん、ルーナさんの言う通り、気持ち良すぎて死んじゃうわ」


「腹上死してもおかしくないわ」


 四人がうんうんと、僕の夜の話に頷いた。それを聞いたマリューが、ゆっくりとだが僕に顔を向けた。その表情はなんとも冷ややかだ。


「闇騎士様……どういう事ですの、私は死ぬほどまで激しくありませんでしたわ」


 私とは遊びだったのかと言いたげだった、いや、お互いそれを承知で交わったはずだがと、僕は彼女の言葉に対して顔を顰めた。


「いや、皇女様……無理がありますって」


 しかし、その時はいくら僕でも無理であった、こればかりは、如何な僕が床上手でも、絶対自分の欲には合わせれない理由があったのだ。


「何故ですの!正直に言いなさい!」


「皇女様……初めてだったでしょう?」


 そうだ、皇女マリューは、僕と交わるまで生娘だったのだ。それを聞いたマリューは、かぁぁと赤くなり、ヴァルスたちは納得してしまい、あぁと唸る。


「いくら何でも、皇女様に請われまして、しかも生娘……騎士でもある私が、皇女様と獣のように交れましょうか?」


「それはぁ、そうだけどぉ……」


「できる限り長く、濃密に、優しくさせては頂きましたのでご容赦を……」


 マリューが赤くなった顔でそれ以上はもう喋らなくなった。そして、キッとヴァルス達を睨みつけてマリューはゆっくりと近づき始める。


「許さないわ、私の知らない激しい闇騎士を知ってるなんて……もう頭来た!貴女達を泣かせて闇騎士を必ず私の花婿にするんだから!」


「動機が無茶苦茶だぁ!というか皇女様もマジで考え直しなさい!?あんた皇室の令嬢だぞ!!」


 この御転婆皇女の独占欲に支離滅裂なワガママに僕は叫んだ、あと皇女なんだからその辺ヴァルス達同様しっかり考え直して欲しいとは伝えておいた。


 そうして走り出した僧侶に、対してヴァルスは右に、そしてエニー、エンディ姉妹は左に逃げた。


「あ、え?皆!?」


 ルーナは色々ありすぎて反応が遅れて立ち尽くしわたつき出した。ルーナは治癒、浄化の魔法こそ素晴らしい僧侶だが、体術や棒術はからきしであり、後衛な為、明らかに場違いであった。


「まずい!ルーナとにかく逃げて逃げて!」


 そんなルーナが格闘皇女の技に掛かれば、例え彼女が手を抜いても死が見えてしまう!僕はルーナにとりあえず逃げろと叫んだが、ルーナは萎縮して動けない!


「まずは貴女からよエルフ!意識刈り取ってやるわ!」


 さながら猪の如く襲いかかるマリューに、ルーナは何もできなかった。しかし、そのルーナを押しのけて、相対した者が居た。


「どいて!」


「きゃあ!?」


 ヴァルスだ、ヴァルスはルーナを押しのけてマリューと対峙し、そのぶつかりを身体で受け止めたのだ。


「くぅうう!?」


 靴が擦れて床に線を引き押し込まれるヴァルス、彼女はマリューをなんとか止めて彼女に言った。


「馬鹿力ね、皇女さま?」


「ヴァルス離れろ!彼女に体を触れさせるなぁ!」


「え?」


 だが違う!止めたからこそマズいと僕はヴァルスに言い放った。


 その瞬間には、マリューは深く沈み込みながらヴァルスの後ろに回り込み、腕を腰に回してしっかり抱きしめた。


「ふんっ!!」


「ーーあ?」


 ヴァルスが感じたのは『抜かれた』という未体験なる感覚だった。


 さっきまで地面に付いていた足裏が、意思に関係なく地から離れて、景色は一瞬に通り過ぎ、逆さの景色で静止して、遅れて来た凄まじい勢いの音が部屋に響き渡る。


 投げ出された足と、捲れ上がったスカート、そして無様に痙攣して広がった足が閉じられずびくついてしまっている。そして白いショーツにはシミが広がり隙間から漏れ出し、布地から1本の緩やかな噴水となり床にパタパタと落ちていく。


 格闘皇女、マリューのバックドロップに、魔族のヴァルスは意識を刈り取られ失禁したのであった。

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