お色直し
「待ったマリュー!だったら僕が戦うべきだろう、君に用があるのは僕だ!うぉお外れねぇ!?どんだけふん縛ったんだよ!!」
僕は必死に体を動かして鎖の隙間を作り打開しようとしたが無理だった。何重にも巻き付けられてどうにもならない!
「あら!やっと呼び捨てにしてくれたわ、嬉しいわリデ!けど駄目!リデは前に私を倒したから戦わせませーん、私が用があるのはそちらの四人なの!」
「いつから!そんなルールに!なったぁ!」
少しも余裕が無く締め付けられる鎖に僕は必死に身じろぎするが、全くもって身動きができない。本来ならば僕を含めて5人で彼女と対峙する筈が、これはまずい。あの4人でどうにかなるのかと不安が募った。
しかし、ヴァルスはやる気なのか、手をポキポキと鳴らして武闘場に上がり始める。
「御託はいいわ、さっさとやりましょうよ真婚凄克とやら」
「ええ、そうしたいのだ、け、ど……貴女達……そのまま戦う気かしら?」
やる気のヴァルスに、マリューが待てと言いながら、パンパンと手を叩けば……この城でマリューを世話するメイド達がカラカラと何かを引っ張って来る。
そこには様々なサイズ、デザインの下着や衣装がずらりとかけられていた。
「真婚凄克は神聖なる花嫁の儀式!ならばその規律に従い花嫁衣装を用意したからそれに着替えなさいな!」
真婚凄克の規律の一つに、花嫁は花嫁衣装を着て戦わねばならぬという決まりがある。それに則って貰おうと宣うマリューが言い放つ。
「あのー、私たちの踊り子衣装は?」
「そう、この衣装達と変わらない気がするのだけど」
エニーとエンディは並ぶ衣装と自らの踊り子の服を見て、これでは駄目なのかと問いかけた。対してマリューの答えは。
「駄目よ、せっかく用意したんだから着てみなさいな、仕掛けも何も無いから」
そこはフレンドリーなのか、全くこの皇女、勇者と共に戦った時から訳分からん奴だったなと、僕は服の袖に指が届かないかとしてみるが、それも駄目だった。
しかしだ、昔の花嫁達はこうして花婿を奪い合っていたのか、僕はその歴史を体感している訳なのかとも頷いてしまう。
ーー十数分後。彼女らはマリューに言われるがままに装いを改めたのであった。
「サイズが無かったわ……」
ヴァルスが着た花嫁衣装は、いや……そもそもこれらを花嫁衣装と呼ぶべき代物ではなかろうと思う。水軍が着込む、セーラーなる装いに短いスカート 、上着もヘソが出てしまっていた。
「メ、メイドにしてはスカート丈が短いような」
ルーナはメイド服を何故選んだのだと問い質したかった、はちきれんばかりの乳房が今にもボタンを飛ばしそうだし、その丈のスカートのメイド服は正式では無いし、何よりピンク主体だ。ニーソックスが太ももに食い込んでいる。
「おーこれいいかも」
革のジャケット、ブラを晒し、ホットパンツという露出はあるが何故か健康的に見えてしまうエンディは、意外にも気に入ったらしい。
「アサシンらしいけどなんか違うような?」
最後にエニーは、白主体に前後ろに垂れ幕が下がる、ある地方の女性の斥候や暗殺者の伝統的形式の装いらしいが……いや目立ちすぎだろうと突っ込みたくなった。
「いやもう、これコスプレキャットファイトじゃん……」
「違うわ闇騎士様!真婚凄克の時代の歴とした花嫁衣装よ!」
僕の指摘にマリュー様がきっぱりと言い切った。つまりだ、昔の花婿はキャットファイトを眺めて花嫁を決めていた事になる。すげぇな昔のアルシャ……それが今僕の目の前で繰り広げられるとなると……。
「それはそれとして、私含めた彼女らの服装は?」
「興奮しないわけないんだよなぁ、もう」
うん、僕の身体は正直だった。ただでさえ皆、元からもう僕を興奮させる要素たっぷりな美女達だ、それが違う服に着替えて、今からくんずほぐれつするのだから……鎖の下で熱くなる分身が痛くなってきても仕方ないわけだ。
が、しかし予定が大いに狂ってしまった。本来ならば皆で戦う筈が、僕が抜けて彼女達で御転婆皇女を相手しなければならなくなったのだから。
「と、ともかくだ……互いに死なないようには頼みます……」
しかし、両陣営共に下手すれば相手を殺しかねない事態になるのは確かだ、僕は心配と保身を胸に、やっと絞り出せた言葉を皆に掛けるのだった。




