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風騎士もまた色狂い

 ベッドの横の椅子に腰掛け、僕は風騎士ゼヘリと再会した。ゼヘリは僕以外に入って来た女性4名を見て、クスクスと笑う。


「何だリデ、遂に女の子から訴訟されたのかい?子どもできちゃったの?」


 ああ全く、ゼヘリはそうなんだ。黙ってキメ顔してれば大層女が放っておかないのに、早速下世話で僕と再会の言葉を交わして来た。


「いや、避妊はしてる、間違いは一切ない」


「いやいや、君の情欲自体がイカれの間違いみたいなものだろう、避妊薬も意味を成さない絶倫め、絶対誰かはできているさ、お嬢さん方がそうなのだろう?」


「「「「はい、実は妊娠三ヶ月で」」」」


「そーなの君達!?5Pしたのかリデ!凄いな!!」


「本気にするな本気に!まぁ……したけどさ」


「ちきしょー!羨ましいなぁあたっったた!」


「ほらー、傷響くから声抑えろバカ」


 冗談を交わしあっていたら、ゼヘリが騒いで傷に響いて呻く。それはさておき、彼女らもお腹を押さえて微笑む冗談は、流石に肝を冷やすから今後は止めるようにお願いしておこう。


 大丈夫だよな?避妊薬、ちゃんと服用してるし。少し心配にはなる。


 と、彼女達にこの風騎士の紹介をしておこうか。


「こちら、アルシャ皇国の七騎士が一人、風騎士のゼヘリ……包帯の上からも分かる通り美男子だ」


「どうも、リデのお嫁さん達」


「「「「夫がお世話になってます」」」」


 もー、こいつらノリというか合わせるのが凄いな、まぁそんなゼヘリだから、訓練兵時代から仲は良かったんだけど。とりあえず仕返しを一つしとこうかと、僕は咳払いをして言い放った。


「ちなみに、彼は風騎士であると同時に貴婦人のスカートを風魔法で捲り上げる会の名誉会長でもある」


「おまっ!?女性の前で言うなよ!!」


 ヴァルス以下、僕が連れて来た女の子達は皆驚いたが事実である。こいつは『強風に煽られまくり上がるスカートから見えるパンツ、それを必死に押さえ赤面する貴婦人』が大好きなのであり、風魔法を極め騎士になったのもその延長線だったりする。


「君もさ、そんなだから今まで童貞なんだぜ?いい加減押し黙ってたらいい子の一人くらい見つかるだろうに」


「色狂いに言われたくない、僕は僕の風魔法で赤面して、み、見ました?って可愛らしい反応してくれる女性と巡り会うまでやめないさ」


「で、僕が勇者と旅に出てからは?」


「全敗さ!張り手を何回も食らった!しかし、悔いはない!」


「だろうさ」


 HAHAHAHA!!僕は、久々に同期と会えたし話もできて嬉しいが、しかし本題に入らねばならない。


「ところで……お前勇者と魔界侵攻に行った筈だよな……何故ここに」


 そして、まぁ聞かれるわなと僕はその質問に答えを返した。


「こちら側で魔族が……犯罪に関わっている情報があってね、勇者から僕はそっちを調査、解決してほしいと言い渡されたのさ」


「成る程……で、ここに来たわけは?」


「戦力確保、あの御転婆皇女を連れて行こうかと」


 それを聞いてゼヘリの顔は笑顔から、すんと真顔に変わってしまった。


「マジ?お前……あの御転婆に首輪つけて連れて行く気か?」


「あぁ、だから……しばらく休めるぞゼヘリ、これからしばらくは不正受給できる特別手当で、カルブキで遊んでこい」


 屋敷から連れ出せば、しばらくは特別手当を受給できるぞと肩を叩く。しかし、ゼヘリはその話に対して言葉を返して来た。


「やめとけリデ、死ぬぞ、いや、死にかけたんだろう?話を聞いてないとでも?勇者達と彼女に挑んで、四人して勝ちはしたが、皆この医療舎に運ばれたのは城にも伝わって、僕も知っている!」


 ゼヘリが止めろと止めて来た。まぁ、そう言うだろうなと僕も思った。それに対して、ヴァルスは顎に手を当てて僕に尋ねて来た。


「リデ?その、第四皇女様はそれ程までに強いの?」


 この答えに対して……僕は彼女との死闘を思い出して比較し……苦い顔が彼女の瞳に映ってしまった。


「勇者達と挑んだ時は、まだチームワークなり戦い方が未熟だったのもある、はっきり言うと……魔王配下の魔剣士とタメを張れるかもしれない」


 遠回しに、ヴァルスとタメを張るとだけ伝えた。それを聞いたヴァルスは、まぁと口元を押さえた。


「けど、5人がかりでしっかりチームワークで戦えば、押さえ込めると思う」


 僕は頷くと、ルーナ、そしてエニー、エンディ姉妹も、少しばかり震えながら頷いた。


「そうか……じゃあ期待せずに休んで待っているよ、死ぬなよリデにお嫁さん達……」


 最早止まる気無しと見たゼヘリは、そのままベッドに寝転んだ。



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