女性冒険者お悩みのモンスター達
「ナーロウ冒険者ギルドへようこそ、冒険者資格をご提示お願いします」
「こちらを」
僕は冒険者資格の代わりに、騎士勲章を置いた。それを見て受付嬢は、あら、と少し驚いた態度を見せる。
「アルシャの騎士様でしたか、ご無礼をおかけしました、ではそちらの方々4人はパーティというわけですか?」
「そうです」
「では、こちらにパーティの登録をお願いします」
そうして僕は受付嬢から羊皮紙を渡される。
「これは僕が書けば?」
「名前の欄だけ皆様直筆でお願いします」
「だって、みんなここだけお願い」
名前だけは皆が直筆で必要だと羊皮紙を見せ、まず僕が書いてヴァルスに渡し、書いたら次へと回していく。エンディが書き終わると、僕は羊皮紙をエンディから受け取って、受け付けに渡した。
「どうぞ」
「はい、あ……すいません、パーティ名も書いてもらっていいでしょうか?」
パーティ名も決めなきゃダメだったか……適当に書いとくか、リデパーティとでもと、羊皮紙に羽ペンを走らせようとすると。
「待ってリデ、パーティ名はちゃんとしたの付けないと」
ヴァルスが待ったをかけた、パーティ名はちゃんと決めなさいと。
「何か希望があるの?」
ヴァルスにはパーティ名に希望があるのだろうかと、僕は尋ねてみる。
「リデと穴どれーー」
「却下」
なんつー名前にしようとしてんだ、この魔族は。
「じゃー、リデと雌猫団」
「いや、リデと雌犬団」
「え、イジメ?僕いじめられてる?」
エニー、エンディ姉妹にもあからさまなパーティ名が提案され、受付嬢が僕をジト目で見つめていて、周りの冒険者からヒソヒソ声が響き渡った。
「あの、そんな酷い名前はダメですよ」
ルーナ、ああ唯一の良心は君だけだ、三人に待ったをかけるルーナに、僕は笑顔を見せる。
「そんなありきたりじゃダメです、リデ・ハレム・パレドなんてどうでしょう?」
「「「それだァッッッ!!」」」
「それだじゃなかろうよ!」
前言撤回、ルーナのノリが良くなりすぎてた。
こうして、リデパーティにしようとした僕に飛びつき腕十字を極めたヴァルスに動きを封じられ、ルーナにより羊皮紙を奪還され、僕達のパーティは『リデ・ハレム・パレド』と決まったのだった。
「そ、それでは、あちらに今できる依頼がありますので」
明らかに関わりたく無いオーラが受付嬢から醸し出され、僕達は依頼板に案内された。羊皮紙には色々な依頼が書かれて打ち付けられており、僕はそれらに目を通す。
今受けたいのは、全員のウォーミングアップを兼ねた、討伐依頼だ。それこそ、弱いモンスターに依頼料も安くていい、普通にモンスターを探して倒す程、血を見たいわけでは無いのだから。
「薬草摘み、材料採取……平和だな」
しかし、あるのは薬草摘みやら、魔法薬材料採取ばかり……それはそれで、モンスターばかり出て来てないから平和でいいなと僕は頷いていると。
ふと、依頼板の右側に、纏められて打ち付けられた羊皮紙に目がいった。
なんだ?これだけ何故、離して打ち付けられているのだ?僕はその羊皮紙を一枚一枚めくってみた。
「あれ、討伐依頼だ……スライム討伐、ローパー討伐……依頼主は……え、ギルド?しかも、異様に高くないか、報奨金」
モンスター討伐の依頼が纏まっていたのである。しかも、スライムだ、ローパーだの……弱いモンスターばかりだった。なのに報奨金が高いのだ。まさか、突然変異体か、騎士案件ではなかろうかと僕の眉間に皺が寄った。
「あ、あの……その依頼はおやめになった方が」
すると、受付嬢が僕に声をかけて来たのだ。
「あらどうして、スライムだのローパーだの……今この場の冒険者達なら簡単に討伐出来ると思うのだけど」
僕の考えをヴァルスが代弁して、受付嬢は赤面しながら首を横に振った。
「その……実はこの辺りのローパーやスライム、依頼モンスターは特殊でして……女性を重点的に襲ってくるのです」
「なんですと?」
「はい、だから特に、女性冒険者は決して受けないようにお願いしているんです、確かに討伐は成功しているのですが……大変な目に遭うと冒険者達にはもう不評で」
そんなモンスターが居るのか、つまりはオークのような特性を持つモンスターかと、僕はならダメだなと羊皮紙を話そうとしたのだが。
「リデ、これ全部受けましょうよ、金も出るし、私達に襲いかかるなら纏めて退治できるじゃない?」
ヴァルスがニヤニヤ笑って羊皮紙を破り取り、全て受けようと提案するのだった。




