リディアンという名前 下
それは、カンチョーというにはあまりにも強過ぎた♂
大きく♂ぶっとく♂重く♂そして深すぎた♂
されど、正しく♂カンチョー♂であった。
貫かれた衝撃に僕は飛び上がり、天井に頭をぶつけ、床に這いつくばった。
「リデ!?」
「リデさん!!」
無様に倒れ伏す僕へ駆け寄るヴァルスとルーナ、そして僕の前に立ちはだかる、その影は。
「「スァーギタオーナー!」」
エニーとエンディがその名を呼ぶ。高い身長、すらりとし体型、刈り上げたヘアーに、胸から臍までばっくり開いた衣装、そして♂もっこり♂。
そんな男が両手を合わせて人差し指と中指を立てて、ポージングを決めていた。
「かぁほ、おほどおああっっ!て、テメェ、スァーギタ……やりやがったなぁ」
「ひっすぁしぶりねぇ、ルィディアン!私は!あなたのぅ!帰りをぉぉーう!待ってたわ!」
ステップを刻み、僕を指さすは、ラヴィアンのオーナー、スァーギタ。見ての通り、ゲイセクシャルである。いや違う、確かバイセクシャルだった。限りなくゲイ寄りの。
「リデ、こ、この変態と知り合いなの?」
「いぃい、し、尻あいじゃない、知り合い、というか……ふうっ、ふうっ」
assの痛みを堪えて息を吐いて立ち上がる、ヴァルスの質問に僕はそんな仲では無いと言い、スァーギタを睨んだ。
「こいつは……恩人なんだ、くそ、会いたくなかった」
ヴァルスとルーナは、目の前のスァーギタが、リデの恩人と聞いて……色々想像してしまった。
「リデ、貴方にそんな悲しい過去が、大丈夫、私もそっちの勉強するから」
「えぇと、リデさんが例えそっちが好きでも、私は大丈夫ですから」
「違う!そんな仲ではない!」
「ご安心なさいなルィディアンの雌猫ちゃん達、貴女達のご主人は潔白よ」
スァーギタはビシリと直立して胸を張る、演劇のワンシーンみたいに。
「そしてぇ!話は一から聞いてたわルィディアン!貴方、だぁーいぶ勝手じゃないかしらぁ!?」
スァーギタが一喝して僕は眉間に皺を寄せた。
「た、し、か、に……あの時、エニーとエンディちゃんをあてがったのは、私……そしてぇ……ステージを考えたのも私!しかーし!そのステージでこの二人はぁ!貴方無しでは生きれない身体になったのを忘れてないわよねぇ!?」
スァーギタが両腕にエニーとエンディを呼び、頭を撫で上げる。
「それをいきなり帰って来て、魔法使いとして来てくれなんて!例え彼女らを身請けする金を用意しても!!この私が!ゆーるさぬぁーーッい!」
「ぐっ!?」
スァーギタの正論に僕はたじろいだ、反論できなかった。例え、それがあくまで『仕事』であったとしても、彼女らと関係は築いてしまい、ヴァルスやルーナみたくしてしまったのは事実!
「し、か、し……私の目に狂いは無かった」
シャナリ、シャナリてキャットウォークで僕に近づいて、スァーギタが僕の両肩を叩く。
「旅路の中でかしら、貴方は二人も雌を従えここに現れた!貴方は正しく!雌を従えるドSの王子様の才能を有していた!」
「や、やめてくれ、スァーギタ、頼む!」
「目を背けるなルィディアン、いやリデ!貴方が築き上げた伝説の三日間は!もうかき消す事ができない!」
背けて来たさ、あんな事はもう二度とごめんだ。それでもスァーギタさんは、俺を助けてくれた。だが、こればかりはもう、二度と思い出したくない!
「あ、あのスァーギタさん?結局、リディアンとは何なんですか?」
「あら、言ってなかったのね、リデ?」
やめろ、やめてくれ……俺の人生の汚点だ、それは。ルーナの質問に、遂にスァーギタは話し始めた。
「三ヶ月前……いや四ヶ月前、ラヴィアンに彼は現れた……頭を下げて私にこう言ったわ……何でもするから、雇ってくれ……悲壮な覚悟を私は見たの」
かつ、かつとヒールを鳴らし、待合室の壁に、飾られていた乗馬鞭をスァーギタは取り上げた。
「聞けば、勇者の旅路に振り込まれる路銀を差し押さえられたと、反勇者派の仕業で、金が要ると……私に身売りすら考えたでしょうねぇ……けど、私は見てしまった」
「な、何を?」
「彼の瞳は、正しく王の瞳……私はこの鞭を彼に渡して、私をシバかせたわ!」
「うん?は、え?」
「スナップといい!力加減といい最高だった!私は確信したわ、彼は時代最高のドSパフォーマーになれると!そしてぇぇーーッッ」
乗馬鞭を壁に振り叩き、音を鳴らす!壁には、乗馬鞭と共に飾られていた物があった!
黒く染まったブーツ!革製の短パン!レザージャケット!そして冠!
「彼が生まれたの!このラヴィアンをたった3日でカルブキで1番の踊り子ショーハウスに仕上げた、サディスティック・ボンテージ・プリンス!!」
乗馬鞭の先を、僕に向けてスァーギタは言い放つ。
「闇騎士リデ改めて……伝説の雌豚調教師リディアン!それが、リデの正体なのよ!」
それを言い放たれ、僕は膝から崩れ落ちた。




