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リディアンという名前 上

「さぁさぁ、入ってください、そちらの二人もリディアン様の雌なんですね!」


「いよいよリディアン様の雌に私たちもなれる日が来たんですね!」


「ちょ、二人とも、その名前は駄目だってば!」


 ツインテールの妹であるエニー、そしてポニーテールの姉エンディが僕の両腕を引っ張って、ラヴィアンの中へ連れて行こうとする。そして今更ながら彼女達が連呼している名前に僕は、その名前はやめてくれと注意した。


「リディアン?それがリデの本名なの?女の子見たいね」


「リデは愛称だったんですか、リデさん」


「いや、リディアンは違う、リデがしっかり本名!ていうかキミら雌の部分否定したら!?」


「「事実は否定できないわ」」


「認めちゃったよこの二人!?もっと考えなよ、人生棒に振るよ!?」


 名前に関してはあまり話したくないが、ヴァルスもルーナも雌に関して否定どころかすんなり肯定してしまった。そこは少し考えるなり否定しろよと言っておいた。


 そうして、僕達は踊り子ショーハウス、ラヴィアンの中にご案内されたのだった。



 さて、中に入れば音楽や太鼓に合わせて、踊り子達がステージで各々が踊っている。


 ラヴィアンはメインステージ、そしてサブステージという二つの島があり、普段はメイン、サブの踊り子達を見ながら、気になる子を呼んで、お酒を飲んだり、連れ出したりが基本だ。


 そして、日に2回メインステージで、踊り子達がショーをする事になっている。


 それこそ肉体の神秘や身体能力を生かしたアクロバット、魔法と手品の演出たっぷりなマジック、一種のストーリーを演じるミュージカル。


 そして……一番はやはり、惜しげなく肉体を晒し、嬌声を響かせる、セクシーショーだろう。これを売りにしている踊り子館が中々多い。


 だが、安易に裸体晒せば良いわけではない、菓子のようなエロは必要無い。皆が趣向を凝らし、様々なショーが開かれるわけだ。


 さて、そんなラヴィアンの……客が決して入れない舞台裏の応接室に、僕達は通されたわけだが。


 まず、彼奴が居ない事に安心した。彼奴が居た瞬間、何が起こるか目に見えているからだ。


「と、言うわけで……君たちを頼りに来たのだけど」


 僕は、エニーとエンディの二人に、身請けでは無いが、力を貸して欲しいと、今まで起こった事を全て話して頭を下げた。


 勇者パーティを辞めた事、勇者の救済した旅路で悪事が再発している事、ルーナの同族がドン・ザルバトーレ、ザンビゴファミリーに囚われている事を話す。


 エニー、そしてエンディの反応は……。


「えー、嫌よめんどくさい」


「身請けじゃないなら話にならないわ」


 辛辣な反応だった。


「しばらく滞在して、君たちを買うお金を稼ぐ、だから頼めないか」


「やだ、それって連れ出しでしょう?」


「私たちはリディアン様の雌になりたいの!」


「だから、リディアン様との関係は一度きりと」


「「リデなんて知らない!私たちを従える雄はリディアン様ただ一人なの!!」」


 ぷん!と二人して顔を背けた。


 さて、さっきから彼女らは僕を『リディアン』と呼称していた。彼女達と僕、そしてもう一人と……知ってるやつは知っている名前であった。


「ねぇ、お二人とも、リディアン……って、一体誰なの?」


 ヴァルスがエニー、エンディに尋ねた。やめてくれ、そしてできれば喋ってくれるなと、姉妹を見た。


「えー、まさかおばさん、リディアンの調教受けてないの?」


「なぁんだ、じゃあ雌ですらなかったんだ、貴女」


「はぁ?」


 おい姉妹、止めろ、今おばさん呼ばわりしたヴァルスは魔族で、元魔王配下だ、取り消せ!頼む!


「おばさん呼ばわりとは言ってくれるわねガキ、あんたらちんちくりんがリデを誰と勘違いしてるか知らないけどねぇ、リデの愛情は知らないでしょう?あと私は22歳だ」


「あーら、そのリデの本当の姿を知らずに愛だなんて言うじゃ無いお、ば、さ、ん?」


「あの、喧嘩はやめてくださいな」


「はぁ?駄肉ババァエルフば黙ってなさいよ、そんな駄肉のだらしなボディでリディアンのメスを名乗るとか恥ずかしく無いの?」


「……表に出なさい、久々にキレちゃいましたよ」


 やべぇ、こうなるとは。まぁ仕方ないよな、僕が関係持ったばかりにこんな事態に陥ってしまっているのだから。うん、死ぬか、こんなクソ野郎生きてて仕方ないし。僕は鞘から剣を引き抜いた。


「上等だぁああ!ひん剥いてア××拡張して永久にお××生活にしてやんよぉおお!」


「ふん縛ってオークの森に投げ入れてやろうかオバハンコラァアア!!」


「ローパーの群れに放り込んで苗床にしてやるわぁああ!」


「オートマタに与えて×穴拡×快楽攻めにしたらぁ老婆エルフゥウゥウウウ!」


 うっわー、えげつない口喧嘩。僕は切先を喉に向けて目を瞑った。


 すまんジン、我が使命果たせずあの世に行く事をゆるーー。


『まぁちなすぁあい!レィディたっちっ!』


 そんな雑音が響く待合室、奇声を切り裂く野太い声を聞いて、僕ははっ!と我に帰った。


 そして……。


「マズい!スァーギタ帰って来たのか!?ヴァルス!ルーナ!!ここから逃げーー」


(ぬぅい)ーがさぬぁーいわよッ!ルゥィイイーーディアンヌゥッッ!」


 戦慄!背後斜め下ァッッ!?殺気!!まずい!!死ーーッ!!


天国の門(ヘブンズドァアア)ーーッ♂♂」


「アッーーーー!」


 拝啓、勇者ジン様……道半ばで果てる事を許してくれ。

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