あー焼畑始めたのか、エルフ達……そんなわけあるかー!
『な、何よあれ、あんな事あり得るの……」
リファが、列をなして進んで来るオーク達を見て驚愕していた。ジンも、エドも、そしてリースタットのエルフの戦士達も、そのオークの様に驚愕する。
首輪に縄で括り付けられた手首、そして宙吊りにされているのは……女。裸の女、人間も、エルフの女も……裸にされて目から生気を無くして揺られている。
腰と足首を巻きつける者も居た、真ん中だけ女を逆さまにして、股座に頭を括り付けた輩もいた。それどころか、紐で括り付けずそのグロテスクな、馬のような証で貫き支えている輩も居た。
オークの戦術装備『雌鎧』オーク達は、多種族の女を自らの身体にくくりつけ、敵の異種の戦意を削がせるのだ!それだけでは無い!矢避けとする木盾にも女人を括り付けて、矢を射る事を封じる下劣なる装備で、リースタットに攻め入ろうとしていたのだ。
『何という、惨すぎる!』
これには、勇者ジンはたじろぐしかなかった。こんな戦い方をする化け物が居たのか、魔族ではない、魔物はこんなに非道を成せるのか。
『つまらん真似しくさりやがって』
僕は、僕はいつも通りだった。
『ジン、リファ、エド……あれは手遅れだ、もう精神も肉体も壊れてる、助からない、一生寝たきりだ』
僕は知っていた、雌鎧にされた雌は……助けても意味がないと。精神はもう砕かれ、肉体はもう日常生活を送れないと。唯一助けてやれる方法は……。
『さくりと殺す事だ、諸共に、俺が先陣を切る、俺がやる、だからジン……エルフ達よ……俺に続け!助けてやりたいなら、殺し尽くせ!!』
「リファとメイジエルフの魔法が完成し、焼き払った時……エルフは雄叫びと泣き声を上げた、ジンも、リファも、エドも泣いた……」
「リデは?泣いたの?」
「泣くものか、すぐに供養の塔を建てたさ、そうしてやらないと浮かばれない」
僕はふと、街道から離れた先にある森を指差した。森が、クレーター状に削られていたのを見て、ヴァルスは感嘆からか、おおと言葉を漏らした。
「あのクレーターが魔法の跡、凄まじいだろ」
「流石は魔法の始まりの種族ね……」
クレーター状に森がくり抜かれ、ようやっと草が生え始めている様にヴァルスが感心しながら首を縦に振った。それが二ヶ月前の話だから、時が経つのは早いことこの上ない。
……まぁ、さっきのヴァルスの言葉を思い出してしまうと、僕はふと口にしてしまった。
「ルーナ、新しい人を見つけただろうか?」
「それがリデの、エルフの女の名前?」
「もう違う……筈だ、新しいエルフの旦那を見つけてる、筈だ」
「旦那って……あんた、未亡人エルフに手を出したの?パナいわね」
「出してない、出されたんだ」
「どっちも一緒よ」
「一緒じゃない、あっちから請われたんだ」
「でも応えたんでしょ?」
「それは……その……」
「抱いたの?」
「抱きましたよ、ええ」
「一緒じゃないの」
ぐうの音も出ないほど、論破されてしまった。しかし変えようもない事実故、仕方ない。一度きりの約束だったし、それを理解して彼女は僕に請うたのだ。
それでも、一夜の仲でも、やはり心配ではある。新たな旦那を見つけて、新たに生活を築いていて欲しいと僕は願っていた。
そして、僕とヴァルスがリースタットの集落にたどり着いたのは、数時間後。昼前と言ったところだった。
僕はリースタットの集落を目の前にして、呆然としていた。片田舎で麦畑や野菜畑やらが広がり、町みたいに何も無いが、エルフ達が和気藹々と生活していたのを覚えていた。
「あれぇー……エルフって、焼畑農業する種族……だったっけ?」
僕は頬をひくつかせ、リースタットの集落だった場所を、眼に映る廃墟、燃焼し損壊した家屋、荒れ果てた畑を見て現実逃避からそう呟いた。
「凄いわねエルフ、集落焼き払う焼畑農業なんてダイナミックね」
ヴァルスが笑いながら僕の言葉に答えてくれた、ありがたいことだ、もし1人だったらこれ耐えれない。
「あははー、集落焼き払う焼畑農業か、すっげー……って!!んなわけあるかぁああああ!!なんぞこれ!?何があった!どうしてこうなったぁああ!!」




