エルフ、オーク戦争を思い出して
あらすじ
熱に浮かれてヴァルスと関係を築いてしまったリデ、エルフの集落リースタットで、関係を持ったエルフの未亡人に挨拶がてら寄ろうかとしたところ、集落は焼き払われていた。
勇者と共に救った集落を襲撃した輩はどいつだ!?リデの怒りが爆発する!!
路銀はあるが、馬車を使う事は無くなった。また来た道を歩いて、僕は掃除をする事にした。
聖なる都から、魔王へ繋がる赤い絨毯、染料は人間の血液に、魔族の血液、魔物の血液。
せっかく染め上げた絨毯に、足跡つけやがる奴がいる。勇者が歩く為の凱旋の絨毯にだ。
どこのどいつだふざけやがって、掃除したら、二度と足跡付けれぬように殺しておかねばなるまいて。
「そんな思いを抱いて、こうして歩いて帰る事にしたわけなんだけどさ」
「あら、立派な心構えじゃない」
「男と女二人旅の弊害を、今は物凄く感じてる」
僕の真上に跨るのは、つい最近殺し合った、魔族の女。あの時は僕が跨っていたのだけど、今は彼女に跨られている。
「そう?わたしも感じてるわ、貴方と一晩寝てこんなにされたら、どんな女もこうなるんじゃない?」
「僕からしたら手加減してる方なんだけど」
「あれで?本気出したら私死ぬかもね」
肌を蒸気させて、色々揺らして、部屋に水音響かせて。本当、間違ったのだろうなと僕はひしひしギシギシ感じていた。
あれから、ヴァルスと街を出て2日、野宿を一度はさみ、今は街道は関所の宿で休憩している。野宿でもヴァルスは僕に跨って来た、そして今も跨っている。
本当、飽きないなこの女、僕もなんだけどと呆けながら会話は続いた。
「ねぇ、次行く町ってどこよ?」
「リースタット集落だよ、エルフの集落」
次に向かう街をヴァルスに聞かれたので答えた。それを聞いてヴァルスは、顔を近くに寄せて来た。
「エルフの女も居るのかしら?」
ヴァルスの言う女とはつまり、旅路の中で関わった女の事だろう。ヴァルスは僕が、様々な女性と関わっている事を知っている。僕から話した、不潔だと、離れてくれると思った。
しかしこいつは離れずくっついて来た、それを知りながら僕に身体を許したのだ。だから容赦無く、いやと言う程してやったら、むしろ余計にだった。
しかも忠告された、忘れる事なんてできるかと。
「居るよ、悪いか?」
「まさか?むしろ3人でなんて、いいかもしれないじゃない」
こいつ、本当に僕達と死闘を演じたあの魔剣士かよ。本当に信じられないなと思いながらも、僕は身体を起こした。
「あ、待って、それは」
「馬鹿なこと言う口は喋れないようにしてやる」
そう言いながら覆い被されば、床もベッドも大いに軋み、凄まじく揺れ出した。
「シーツ代で路銀が消えそうなんて、笑い話にもならないんだけど」
「そんな身体にしたのはリデでしょうに」
北上する街道を歩きながら、財布の残金を確かめて僕が呟けば、悪いのは僕だとヴァルスが指摘した。シーツの汚れが酷いと宿の主人に言われ、シーツ代も出したのである。
さて……今僕達が通っている『ひたすら北上する』ルートだが、じつはこのルート、国境を何度も通過するルートなのだ。
僕の、ひいては勇者達の故郷、聖都ダールナンは最北端に位置しており、それを擁するアルシャ皇国は西側領地である。東側にはクーラント国と言う国があり、その南側に……魔界という魔族の大地がある、リスティアの町はこの両国が唯一不可侵として、魔族に対抗する要地とされていた。
そんなリスティアから北上する国境上を歩く道が、この二大国の各都市へ伸びる主要道路『連合国境線』と呼ばれていた。
無論まっすぐな道では無い、曲がりくねったり山道もある。ふと立て看板を見つければ、今どちらの領地に入っているかを報せてくれる看板があったり、国境を跨げるという要地も結構あったりする。
リースタット集落は、東側クーラント領地にあるエルフの集落だ。
ここでの思い出……今思い出しても胸糞悪かったものだ。
「二ヶ月前だったかな、リースタットのエルフを狙ったオーク魔族との戦いは……」
「オーク……魔界の下等亜人種が出て来たの?」
「あぁ、メイジオークだったか、それを首魁としたオークの軍団からエルフを守る戦いをする事になってな、数だけうじゃうじゃ出てくるから、僕と勇者と、勇敢なエルフの戦士達で前線をひたすら食い止めて、エルフとうちの魔導士、エドの複合魔法で最後は終わらせたんだ」
ヴァルスに語る、オークとエルフの戦争は、本当に語る気にもなれない最悪なものだった。
「ご存知か、オークはな、異種族の雌を捕らえて無理矢理つがいにさせるんだ」
「知ってるわよ、魔物だもの……」
「なら、特にエルフの雌を狙う理由は?」
「……エルフは、数年に一度しか子を産めない、それを汚すのが、奴らの悦びだから」
「そうだ、しかもあいつら、雌をそのまま自らの防具代わりに纏うんだ……辱めて、犯して、身体に雌を纏わせた数偉いなんて思ってやがるんだよ」




