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エピローグ これからの旅の目的

 朝が来た、天井を眺めていた。


「何よもう、こっちまで強かったなんて、旅の中でこうした女性沢山いるの?」


「僕を知って、それでもって人が数十人は居たかな、それっきりって理解してだけどさ」


 傍にブランケットを羽織るヴァルスが、僕の胸板を指先になぞり、昨晩の事を尋ねる。


「わたしもその1人ってわけ?けどね、あなた残酷、あんな事一晩でされたら既婚者ですら忘れられるものですか」


「それも、よく言われる」


「ねぇ、もう一度いい?」


「朝だよもう」


「朝だからよ」


 ヴァルスがブランケットを取り払った。

 



 結局、チェックアウトが遅れた。しかも声が響いてたからひそひそと噂されたし、店主の目も冷ややかだった。


 ただ、うん、楽しんでしまった僕に責める資格はない。


 追加代金に、クリーニング代まで出して、僕はヴァルスに腕を組まれて宿屋を出た。


「それで、ダーリン?これからどうするの?」


「うっわ気持ち悪、名前で呼べよ」


「リデ、どうするの?」


 どうやら離れてくれないみたいだ。まずったな、気絶している間に金だけ置いてさっさと消えればよかった。


「このまま故郷にさっさと帰る……わけにはいかなくなった」


「どうして?」


「昨日みたいな輩がまだ居るんだわ、多分……勇者がせっかく助けた所にまで、湧き出てるかもしれない」


 勇者一行から離れ、その旅路の一つで起こっていた汚職。僕やジンの旅路を汚した輩がまだまだ居ると僕はヴァルスに言った。


「だから、帰りながらそいつらを残らず叩き潰そうかなってさ、魔王倒して帰ったら国が腐り果ててたなんて、目も当てられないからさ」


「なにそれ、別に貴方がしなくていいじゃないの」


「他にするやつ居ないんだよ、だから、闇騎士なんて呼ばれてるんだ僕は」


 誰もしたくない、やりたくない、そっぽ向く汚濁の清掃だ、そんな汚らしい仕事をするから、僕は闇騎士なのだとヴァルスにそう教えた。


「だから離れたら?魔族とバレたら殺されるし、危険だし、忘れなよ?」


 なので、一夜の夢と忘れろと僕はヴァルスに伝えた。しかし、ヴァルスはニマニマ笑ってさらに腕を絡めて来た。


「スリリングで楽しそうじゃない、ついて行かせなさい、わたしを何度も刺したんだから、責任取りなさいな」


 否定できぬ事実を言われて、僕は諦める事にした。多分こいつ、死ぬまでついてくるだろうなと僕は頭を掻いて彼女に言った。


「一つだけ守れ」


「なに?」


「どんな残酷な死も、受け入れろ、そうなってもいいなら、ついて来い」


 そう言って僕は、正門に歩き出し、ヴァルスは決して腕を離さなかった。

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