職務怠慢、横領、不貞罪
教会の鐘には鳴らし方があり、普段こそ時刻を知らせる鐘を鳴らすのが、教会や聖堂の仕事だが、緊急を擁する鐘を鳴らした場合、周囲の騎士が飛んでくる。
そして来たのは……聖女騎士隊に、リスティアの駐在騎士達だった。
リスティア大聖堂の司祭、所属の僧侶、そして方々から呼び寄せた僧侶は逮捕され、馬車により移送された。その間僕は、資料部屋や司祭達の机を調べ上げ、帳簿やらを手に入れた。
そうしたら、もう真っ黒だった。つまり事の顛末は、生臭坊主達が定期的に支払われる運営資金を浮かせる為、指定河川ではなく近場の川から汲み上げた水を使った聖水を作り置きして樽詰にして保管。それを定期的な祓い作業で使っていたことが判明した。
指定河川にも赴いて、河川整備費も出して、さも指定河川を汲んできたカムフラージュもしていたのも分かった。
職務怠慢、業務上横領、さらには聖職者ながら娼婦を呼び寄せた不貞の罪により、彼らは逮捕されたのだ。
「誠に申し訳なかった闇騎士殿、私も目を光らせていながらこのザマだ」
「いや、あんたは悪く無い、書類とかに目を通したけど抜け目なかった、今回避難勧告が出てやっと気付けたんだよ……」
そうして僕はリスティア周辺を統治する辺境伯、アスラ伯の屋敷を訪ねていた。もう、夕方である。朝一に勇者パーティ追われて、村の異変を知り、そして大聖堂行って……大変な1日だった。
アスラ伯はこの不貞を僕に謝るが、アスラ伯に定期的に渡された書類はしっかりとしてあった為、これだけでは察知できないと擁護した。
「それでもだ、魔王討伐の遠征の中こんな事を、申し訳ない」
「ん、んーー……いや、はい、まぁ……大丈夫です」
アスラ伯の謝罪に良心が痛んだ、もう勇者一行じゃないのだ。まぁ、騎士の爵位はあるけど。もうこんな無理矢理には動けない立場だ、書類が送られるまでは。
「あとは私が全て終わらせる、すぐにジン達の元へ戻ってあげなさい」
「あ、はい……よろしくお願いします」
僕は歯切れ悪い返事で、頭を下げてアスラ伯の部屋から出たのだった。
こうして、この一件は終焉を迎えた。
ゴブリン討伐は聖女騎士隊と周辺勤務の騎士により合同討伐が行われるだろうから、そちらはもう心配無い。あ、女騎士にゴブリンは大丈夫だろうか少し心配はある。
リスティア大聖堂は、他の司祭と僧侶達を配属させ、早急に祓い作業を始める事になる。
こんな事態が……ここまでの旅路で何度かあったなと、僕は館を出て思い出した。
勇者と旅を始めた時から、勇者には敵が沢山居たし、国は腐っていた。
魔族の侵攻からできた商売を潰されたくなくて、刺客まで出してきた貴族に、今日みたいな私腹を肥やす重役。
それどころか、珍しい種族を攫う違法奴隷商まで旅路では出てきた。
時に思う、魔王を倒しても、こいつら居なくならないだろうって。
いや、むしろ増えてすらいる様な気がした。
館の門を出て、溜め息を吐く僕。そして、わざわざ僕を待っていた元魔王配下のヴァルスが、腕を組み待っていた。
「ヴァルス、本当に律儀だね、放っておいてもよかったのに」
「まさか、こんな楽しい事してて、待たないわけないじゃ無い」
それに……とヴァルスが僕に近づいて肩を叩いた。
「昼ごはん、食べそびれちゃった、奢って貰うわよ」
現金な女だなと、僕は呆れて笑うのだった。
結局……一度僕らはリスティアに戻って、明日から出発という事にした。勇者ジン達が拠点に使う宿屋とは違う、別の宿屋で食事して、勿論奢って、2階の宿の部屋に2人で入った。
「何故に別部屋を取らなかった?」
ヴァルスが相部屋にしろと言うから、相部屋にしたのだが、理由を僕は聞いた。
「んー?カマトトぶらないでよ、闇騎士のリデくん」
椅子に足を組んで座る僕に対して、ヴァルスは赤らみ顔で僕を見つめていた。
「朝から晩まであちらこちらに、あんな面白い事態、興奮してるし冷めないのよ……それとも、魔族は嫌い?」
僕は黙った。そしてヴァルスが笑いながらシャツのボタンを外し始める、皮膚みたいな筈だろうに、裸同然だろうに、素振りだけを真似ているのだ。
「それとも、童貞だったりする?私を倒した闇騎士さーー」
僕は、ヴァルスの手を掴み、ベッドにゆっくり押し倒した。びっくりしたのか、ヴァルスは僕を見つめて何度も瞬きをする。
「ヴァルスは一つ勘違いをしている……僕が子羊に思ったわけ?」
「え?あ、あの、リデさん?え、え?」
「こんななりだけどね、もう僕は26歳の大人だし、色々と旅路ではあったわけだ、情報聞くためにこの手を使う事もあった」
「うそ、10代かと……」
「先に聞くが、本気で無いなら跳ね除けろ、10秒待つ……」
ヴァルスは僕を見て、全く動かない、カウントダウンが始まる。
10.9.8.7……3.2.1……。
ここから先はR-18、闇騎士リデと女魔剣士ヴァルスのムフフな話はこちらから。
よいこは見ちゃダメよ↓
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