61話
俺は東の王国の青龍のいる洞窟の最奥に来ていた。
龍泉桃を奪われた時にベルゼに荒らされていて、桃の木は倒れ、像も粉々になっていたままだった。
「青龍はもう現れてくれないのだろうか・・・」
頭の中に声が響いてきた。
[久しぶりだな。今日は何用でここに来た?]
「今日ここに来たのは賢者の石について聞きたくて青龍に会いに来た」
[賢者の石については話す事は何もない]
「そうか・・・では、『風の虹彩』『龍泉桃』『五色鳥の転生羽』『黒蛇亀の卵』について話す事はあるか?月影の白兎はこれを集めようとしているぞ!」
[そこまで知ってしまったのか。よかろう、それでは話すとしよう。月影の白兎の狙いは四獣封印を解いて世界を崩壊させるつもりだ。そのために賢者の石を作ろうとしているのだ]
「やはりそうか。『天悟空』が時間がないと言っていた意味はこれだったのか!」
[『天悟空』か、久しぶりにその名前を聞いたな。では汝は金の力にも目覚めているのだな]
「金の力とは一体なんなんだ?『ジョナ・ゴールド・クリムゾン』ポーションを飲んだ時、たしかにすごい力を感じたが金の力と言われる特別な力はわからなかったぞ」
[金の力とは次元を操る力の事だ。ディメンション・オペレーター、『ディオの力』。その力は空間を操り、時を操る力を持っている]
「空間を操り、時を操る力・・・」
[それは太陽の金猿のみが使える特別な力。使いこなすためのヒントを特別に教えてやろう。すでに汝は空間を操る事ができている。忍び足スキルは空間認識能力を操る力。空間認識能力を操るだけだから匂いに敏感な死獣クラスには効果がないのはそのためだ!スキルとはただの補助輪のようなものだ!]
「テンブ老師も同じ事を言っていた・・・」
[そろそろ補助輪を外して、自身の力で羽ばたいてみよ]
その時、カミナリに打たれたかのような衝撃が走った。
「白き爪と黒き盾を両手に宿す『ホワイトクロー』」
俺の両手には黒虎の小手が具現化され、先端には白き爪が具現化された。
「白き爪と金の力、2つの力が重なり合う時、空間は切り裂かれる『空間断絶・クロープラチナ』」
白金の爪によって空間は切り裂かれた。
切り裂かれた空間によって、目の前にあった洞窟の壁の一部がごっそりとなくなってしまった。
「これが『ディオの力』か・・・」
[成長したな。汝はまだまだ強くなれる。この世界を守ってくれ]
「わかった。あまり時間はないみたいだから俺はこれで行くよ。今度は洞窟を直してゆっくりと話をしたいもんだぜ」
[そうだな。気をつけろよ]
こうして新たな力を手にした俺は龍の洞窟を後にした。




