13話
道具屋の親父さんがギルドの扉を開いた。
受付嬢は一緒に入ってきた俺の方をチラ見した後、明らかに緊張した感じで話しかけてきた。
「フワドー様、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「ギルド長をお願いします。後、新素材登録と『商人の証』と独占販売契約書の準備をお願いします」
「か、かしこまりました」
受付嬢は急いで奥の方に行っていった。
「親父さんってもしかして結構偉い人ですか?」
俺はふと聞いてみた。
「王都商会の役員ってだけだよ」
「えっ!そんな偉い人だったんですか!ただの道具屋の親父だと思ってました」
「私は君のそういう純粋なところが好きだよ」
そんな会話をしていたら、奥からギルド長がやってきた。
「フワドー様お久しぶりですね。それではこちらにどうぞ」
俺達は奥の応接室に案内された。
「それでは新素材の確認を行いますので素材をお願いします」
俺は『魔風草』を取り出して見せた。
「たしかにこれは新素材ですね。さっそく言霊を飛ばして全国の匠の皆さんに確認してみます。商人の契約はフワドー様の方でよろしくお願いします」
そうしてギルド長は一度席を外した。
「トリス、これから商人の契約をするが手数料など登録にかかる費用はこちらで全部負担するからお金の心配しなくていいからな」
「はい」
「まずは商人っていうのは2つの形態がある。俺みたい店舗を構えてやるタイプだ。今のお前さんだとこちらのタイプは合わないから後々店舗を持ちたいなら自分でやってくれ。トリスには店舗を持たないで素材の卸しをする商人をやってもらいたい」
「はい」
「それと今回の新素材の独占販売契約を俺のところとしてもらいたい。お前さんに戦闘能力がないのは誰でも知っているから、こうする事で余計なトラブルを防ぐのも狙いだ」
「はい」
「何か質問はあるか?」
「とりあえず俺は何か特別な事はしなくてもよくて、新素材を親父さんに持って行けばいいって事か?」
「まぁそういう事だな。ハッハッハッ!お前さんがどういう方法で新素材をとってきたかはわからねーが間違いなくお前さんがとってきたのは事実だからな。とりあえず新素材は1つ1億リンで買い取りでいいか?」
「俺には相場なんてわからないし、任せます」
「ありがとよ!お前さんにはこれからたっぷりとサービスをしてやるぜ!」
「ありがとうございます」
「そろそろギルド長が戻ってくる頃だと思うけど、店の名前は決まったか?」
俺はいろいろと悩んだが、【特殊】スキル《ヘルメスの達人》を手にしてから人生が一変したから俺は店の名前をこう決めた。
「店の名前は『ヘルメスの旅人』にします」
「『ヘルメスの旅人』か!いい名前だな」
コンっコンっと扉がノックされギルド長が入ってきた。




