1.おっさんの生活
おっさん。こんな人もいるという事で、お付き合いを宜しくお願い致します。
古着生活30年。
新品なんて買ったことないが、それが当たり前。
昔からテレビを見ていて思うことがある。視聴率を上げるためか、富裕層の方々の生活の様子だとかニュースや番組で面白おかしくお金に関する企画などの放送をしているが、それがどうしたというのだ。
そんなニュースや番組を見せられて不快になる人の身にもなって放送して欲しいものだ。まあ、見なければいいのだけどお金を使わない暇潰し代わりだから仕方ない。
着ている服に対しても考える事があるが、貧乏していて生活するのに、古着だからって嫌な目を向けられるシーンがあったりするが、別に着れたらいいだろってイライラする自分がいたりする。
少年時代から古い物を着せられ、食べるものの中には試食品コーナーで頬張る姿が歳月の中でワンシーンとして存在する。
そんな少年も成長につれ、色々な事を学び、本年38歳。
おっさんになって、自分でお金を稼げるようになってみたら、新しい服を買うのか。
・・・そうでもない、偶には買う。何故だって?
新しい服を買い、古着に出す若者は傷んでいるわけでもない美品を手放していて、それに対して「もったいない」って思わないのだろうな。
時代のセンスとか、流行だとか、そんなものに生活の基軸を左右させる余裕ある生活を送ることが、どんだけ我儘で贅沢なことか分かってないのかな。
っていうのはその人の育ってきた環境や、その時の状況もあるだろうから、俺のいうことがどう反応されるかは人それぞれ受け入れ方が違う。
いつの日か後悔することもあるだろうし、生活していく上で幸せを感じられることもあるだろうから。今を生きていけてるならそれで良いのではないだろうか。完璧でないのも人間の個性だと思うよ。
男の名前は、志布見 渉。
38歳独身で、飲食店で社員をしている。
創業して20年の単体企業。
2年以上単体の企業を存続させるというのはなかなかに出来るようで出来ないもの。
資金繰りもそうだが、環境設備を安全かつ信用のおける状態に維持するってのは地道な作業が積み重なった上で成り立っていると現場に従事しているから分かる事だ。
渉の職場では調理の種別ごとに担当が割り振られている。
今月の渉は揚げ場、麺場と調理担当をしていて、月に30万くらいは給料で貰っている。休みは週休2日あるから不満はない。
そんな渉も私生活では貯金しつつ、美品の古着を探してはお金の使い所には慎重になっている。
今日は亡くなってしまった両親の墓参りだ、好きだった苺大福をお供えに用意して、電車で30分の山墓地に向かっている。
今日の電車は混んでいて、いつもより空間が狭く、電車が揺れては隣の人に肩が当たってしまう。
珍しいことではないが、あまり気のいい話では無い。
発車すること、20分後、時刻は14時45分。
突如として予測もできなかった地震が発生する。
人生何が起こるか分からんものだ。
− 渉は意識を失うのであった・・・
お読み頂きありがとう!
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