第2話
ルイースト軍隊士官学校の食堂には朝食を取る生徒で溢れていた。今日は先日起きたとある部隊の話題で持ちきりであった。
「ルイスやっと見つけたっ!どうしたの~?」
朝食の乗ったお盆を持ちながら半分目が閉じているシドがフラフラやってきた。
「お前まだ寝てんのか?それよりうちの部隊がやられたらしいんだ。」
「まさか…天の裁きっ!」
まだ半分目が閉じているが、もう起きていると言わんばかりにシドが大声を上げた。
「んな訳あるか。」
ポカっ!
ルイスは読んでいた新聞で軽く頭を叩いた。
「暴力反対!僕は国民の味方です!」
軍人の癖に涙目で政治家のような抗議を申し立てるシド。そんな彼を尻目にルイスは話しを続けた。
「なんでも物資の運搬中天使に襲撃されたそうだ。」
「ふ~ん。警備隊は寝ぼけてのかな?」
あなたには言われたくない。
「天使が数機警備していたらしいが、全滅したようだ。」
「なら奇襲だね!夜とかにさ。」
「ああ、そうだろうな。けど天使1体にやられたって事は大天使の仕業じゃないか。」
大天使…聖書や神話では全ての天使を束ねる7人の天使の事を指し、それはこの世界にも存在する。
大天使とは天使の中でも強大なパワーを持つものであり、それに比例しジットール石はバスケットボールぐらいにとても大きいものらしい。なんでも単にパワーがあるわけでなく、普通の天使と比べ特殊な能力を持っていると言われている。
数年前、エバン国内でその石が見つかり、最初の大天使が製造されてた。
その名はミカエル。
世界的に認知されている大天使はこの1機しかなく、シドとルイスも同様である。ミカエルは全身深紅で染められており、そのボディからは炎が立ち上ると言われる。そう、ミカエルは炎を操る大天使なのである。これこそ大天使が大天使と言われる由縁である特殊能力なのだ。
「大天使ってどんな姿しているんだろうね?たぶん翼とか生えてて凄くカッコイイと僕は思うんだよね。」
キラキラ目を輝かせてシドは妄想した世界に浸っている。
「変なこと考えてないで、ほら行くぞ!」
食器を片付けようとルイスは立ち上がった。
「えっ?僕まだ食べてないよ。」
と周りをみるといつの間にか殆どの生徒がいなくなっていた。
「朝礼に遅刻するぞ。」
「うぅ~」
シドは泣きながら一生懸命にパンを口に詰め込んだ。