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94・「虎」。

 ライオンはチームで狩りをする。

まあ、オスじゃあなくメスのチームだけどね。

オスが戦うのは群れを乗っ取りに来る他のオスだそうだ。


虎はひとりで狩りをする。オスもメスも同じだ。

なので木陰や草陰に隠れて待ち伏せすることが多いそうだ。


キャンプに侵入した「虎」は隠れてもいないし夜の闇に潜んでも居ない。

ベンジャミンさんはオレを下ろすと「後ろを見ないで走れ!」と指示した。

そうして首にぶらさげていたペンダントを口にくわえると吹き鳴らした。

警笛だったのか! 


そうして彼は走って行った。

パーラさんも……

後ろに付いて来ていた他の冒険者達にも加勢に行くように頼んだ。

難民達にそういう戦力があるとは思えなかったから。


オレは塀の頑丈そうな所を選んでよじ登った。

そうして「虎」に向かって火炎球ファイヤーボールを放った。

くそう! 威力が足りねぇ! こうなりゃ数で行ってやる!  

もう打ちまくったね。イメージはマシンガンだ! 


それでも「虎」はしぶとかった。

冒険者たちが何人も爪にかけられ飛ばされていく。

右手で火炎球を打ちながら左手で風魔法を使う。

二酸化炭素[炭酸ガス]を空気中から集めて「虎」の頭にまとわせた。


二酸化炭素は目に見えない。

だからオレが何をしたのか分からなかっただろう。

ありふれた気体ながら濃度3~4%で頭痛・めまい・吐き気がしてくるし

7%を超えると数分で意識を失う。

この状態が続くと麻酔作用によって呼吸が停止して死んでしまう。

いわゆる二酸化炭素中毒だ。


前世ではドライアイスも炭酸飲料もありふれた物だったけどね。

役に立つ物ながら危険もあるというのは炭酸ガスだけじゃないよね。


「虎」はふらついたと思ったらパタリ! と倒れて痙攣けいれんしていた。

トドメは無事だった冒険者達に任せてオレは負傷者の治療に廻る。

何処から湧いて出たのか神官様たちがいつの間にか治療をしてたよ。

後で聞いたら神殿から派遣されてキャンプ村の炊き出しとか病人の治療をして

巡回してたんだそうだ。

ご苦労様でーす。


魔力をほとんど使い切るまで治療のお手伝いをしてベンジャミンさんに

回収された。

そ、そんなコワイ顔をしないでくださいよ。

ちょっと神官様達のお手伝いしてただけなんですから……


「まあ、お知り合いのようですから治療のお手伝いのことはイイんです。

その歳で回復魔法ができるってだけで驚きですけどね。

でも、攻撃魔法までできるなんてのは驚きなんてもんじゃあないですよ。

魔道士でも両方できるヤツは特別扱いされるんですから」


あー……火炎球はできても威力が足りないんです。

だから連射するしかなくて……

ちょっとでもダメージが増えれば冒険者さん達のお手伝いになるかも……と。


「パーラが風魔法が使われてた気がするって言ってました。

アレは身内に魔道師がいるんで魔法の気配に敏感なんですよ。

差し支えなかったらちょっと解説してもらえませんかね?」


ベンジャミンさんは剣士だ。

魔法は専門じゃあないハズなんだけど……

でもサスガにベテランなんだねぇ。

さて、どう言い逃れたらイイかなぁ。

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