763・監視者・クワカス。
一体何者なんだ? この連中は!
山登りは辛かった。道すら付いていない斜面を登る。
それだけで難行苦行と言って良いと思う。
オレはともかく相棒は彼女を背負っているのだ。
なのに愚痴のひとつも苦痛の一言も発しなかった。
頂上に着いたと思ったら目に飛び込んできたのは綺麗に整えられた石畳の道。
そしてその先でゆったりとお茶会が開かれていた。
「こんな所まで自力で登ってくるなんて凄いわね。
まあ、一緒にお茶でもいかがかしら?
彼女も疲れてるみたいだし」
怪しい……そう思いつつ彼等に近付いたら風と寒さが消失した。
「結界を張ってるので風も寒さも防いでいます。
大丈夫ですよ。あなた方の敵って訳じゃあないですし。
でもこの場の主人はあの方ですのでソレはご承知置きください」
まだ幼いのにこの子は大人のような口の利き方をする。
主人だという男性はなんだか気配がオカシイ気がするが黙っている。
どこかの貴族の奥様らしき女性は威圧も感じるが優しげだ。
頂上まで登ってきた理由を聞かれた。
ためらっていたら彼女を運んできたサーシディがためらいもせず答えた。
彼女を山の神に捧げるために連れてきたのだと。
サーシディは彼女を愛していた。
だから二人で駆け落ちをするのではないかと案じた上の者達から見張るようにと
オレが付けられたのだ。
だが、サーシディでなければこの山の頂上まで彼女を運ぶなんてのは無理だと
皆が思ったのだ。
実際彼女に逃げようと言ったらしい。でも彼女は拒否したのだ。
お告げを受けた巫女様は彼女の妹だったから。
妹や家族・一族の為に生け贄なることを承知したのだろう。
子供は目的を聞いて主人だという男性を振り向いた。
そうしてゲンコツが落とされた。
「まったくお前は思ってることが全部顔に出るなぁ!
少しは顔に出さないってのを覚えろよ。
オレはそんなお告げなんて出してないぞ!
山の神なんてのにも成ったこと無いしな!」
「でも他に山の神様なんて方がココに居ますか?
神様並みに力の有る方なんてアナタしか居ないじゃあないですか!」
神様並みに力がある?
一体何を言ってるんだ! このガキは!
こんな下品な赤毛野郎なんかに……
そう思っちゃったオレ……普通だよな
赤毛野郎が正体を現したらオレ達三人は全員腰が抜けてしまったのだった。