726・バーボン。
うわばみ美魔女トリオの助言に従って陛下に援護射撃をお願いした。
今すぐ輸出が出来る訳では無いのは分かってるけど準備と根回しくらいはしたい。
陛下は苦笑いをされた。
「まったくその歳で飲めもしない酒を造って国外にまで売ろうだなんて呆れたな。
セタルが余っているのは聞いたが鶏の飼料だけでは使い切れ無いだなんて……
北部の連中はそんなにセタルが嫌いなのかね?」
嫌いなんじゃあ無いと思う。
でも他にもジャガイモとか麦の味を覚えてしまった。
まあそれは、オレのせいでもあるけど。
そうしてセタルを買うという話が来たのでついつい乗ってしまったんだと思う。
現金収入の少ない地方だったから……
「そうか。まあそうだろうな。
分かった。ドワーフの国へ売れるかどうかはやはり調査が必要だろう。
向こうの好みのものかどうかも分からんしな。
ところでソレの試飲用はもう無いのかね?
私も試してみたいんだが」
あー、うわばみの息子だったよ! 陛下も。
良いのかねぇ。
セタル酒は「安酒」として造るつもりなんだけど。
「安酒か……それにしては美味いな。
特にこの燻したような香りのするタイプは安酒にしておくのは勿体ないと思うぞ」
それはアメリカのバーボンをイメージして錬金術で調整したものだ。
熟成期間が二年くらいあったはずだけどその辺りは錬金術さまさまってことで。
原料も「とうもろこし」じゃあないし樽だってオーク(樫や楢)じゃあ無い。
ちゃんと樽の中を焦がしはしたけどね。
勿論バーボンは安酒じゃあない。
でもオレは好きだったんだよ。
だから気軽に飲める酒をバーボンのイメージで調整したんだ。
そういえば「とうもろこし」は見つかっていない。
「植物大百科」にもそれらしい物は見当たらなかった。
まあ、アレもこの世界の植物を全部網羅してる訳じゃあないもんな。
でも見つかったら絶対! 酒にしてみたいね。
あー、ポップコーンもだった。食べたくなって来ちゃったよ。
「なるほど、前世の酒のイメージか。
輸出が出来るなら今のこの国には有り難い話だな。
行くなら文官を一人付けてやろう。
国としての付き合いが無いわけじゃあないしな」
あれぇ、な、なんか話が大きくなってる気がするんだけど。
ちょっとドワーフの国を見物がてら売れそうかどうか調べられたらって
思っただけなんだ。
さすがに外国となると宰相閣下の許可とか要る。
陛下にちょっと一言言って貰えたら許可して貰えると思ったんだけど。
宰相閣下は国王陛下には反対しませんでしたがヘンリー君はやっぱり別です。
陛下に話を持って行ったことには怒り心頭でした。
例によって特大のカミナリを落としてくれました。
まあそれくらいでへこむヘンリー君じゃあないんですけどね。
一応、閣下にも試飲用のセタル酒を渡しました。
ヘンリー君には感想すら言いませんでしたがどうやら気に入ったみたいです。
褒めるのも癪にさわるみたいですねぇ。
素直に褒めてやっても良いと思うんですけどね。