721・日常。
王女様方の興味をひいたのは布地や小物類、そうして写真やオレは描いた
スケッチだった。
特に花嫁のドレスが目を引いたみたいだった。
「まさか白のドレスだなんて考えてもみなかったわ。
彼女も転生者だったそうね。
アチラの世界だと白の花嫁衣装って普通なのかしら?」
そうですね。
こういうドレスではなく国の民族衣装でお式をする方も居ますがソチラも白の
衣装がありますよ。
白には色々な意味がありますが結婚に対する決意の現れでもあるんです。
「この写真、お母様達にもお見せしたいわ。
貸して貰っても構わないかしら?」
お気に召されたならお持ち下さい。
カメラは何台かございますから差し上げますよ。
まあ、それだけじゃあ済まなかったけどね。
結婚式とかの報告はメインの招待客の宰相閣下がすでに済ませていた。
オレはオマケで付いて行っただけで役目は無いようなものだった。
でもねぇ……
女性陣の好奇心というかファッションその他への興味はスゴかった。
結局、延々とデザイン画を描かされるハメになったよ。
う~ん、コレも自業自得なのかねぇ。
「ホホホ、まあ輸入もおいそれとは出来ない状況ですもの。
相手が魔王国でも王の結婚式となれば興味を引くイベントよね。
写真が花嫁だけじゃあ無かったから楽しませてもらったわ。
今までは戦争中だったからパーティも平時より少なかったのよ。
以前のように出来るまでにはもう少しかかりそうだけど、こういう写真を見ると
また皆でパーティがしたくなるわね」
貴族はパーティばっかりしてるわけじゃあ無い。
それでも社交は必須事項だからね。
楽しいばかりじゃあないしある意味戦いの場でもある。
そうしてそれは当然な日常でもあったんだ。
戦争で日常ではなくなってしまった。
以前を思い出して懐かしく思われても誰が責めることができるだろう。
オレは女性達のご要望にそってデザイン画を描きまくったよ。
少しでもお慰めできるなら……と思ったんだ。
楽しげにデザイン画を批評される女性達を陛下も微笑ましく思われたようだ。
大規模なものでなくとも以前のようにパーティを開かれるのも遠いことでは
無いだろう。
まだまだお金も物も足りないけれどそれでも先への希望が感じられる。
それはとても大事な事に思えた。