714・白の意味。
足踏みミシンは一時間もかからず再現できたよ。
まあ、オレの知識だけじゃあなく彼女の知識も大いに役に立ったんだ。
「手芸は特に得意でもなかったんだけど友達に得意な子が居たの。
学校のクラブを作っちゃったくらいの子でね。
まあ、設立のための人数集めに使われたのよ。
おかげで少しは出来る様に仕込まれちゃったの。
ミシンはコンピューターミシンだったけど一度壊れたことがあってね。
男の子たちが面白がって分解してしまって……
結局、お店に修理に出したんだけどおかげで中身の構造をちょっとだけ
知ってるのよ」
アハハ、まあオレもオヤジのレトロなゼンマイ時計を分解しちゃってゲンコツを
喰らった口だもんな。
好奇心で分解しちゃった男子学生を責めたりなんか出来ないよなぁ。
衣装担当の侍女さんたちもその部下なお針子さんたちも白いウェディングドレスの
製作依頼に驚いていた。
時間も足りないから無理だ! と言うかと思ったんだけどそんなことは無かった。
な、なんかムチャクチャ気合いが入っちゃってるんですけど?
「もう全部準備は出来てますからね。
あとはお子様のご出産まで大きな仕事はないものと。
白は特別な色ですが何故ウェディングドレスなんでしょう?
魔女王国の習慣でもないですよね」
あー、彼女の事情を知ってる人ばかりじゃあ無いわけか。
ということでちょっぴり口止めしながら事情を明かした。
ウェディングドレスに白を使う理由も。
白色には「純潔」「純真」「無垢」などの意味が込められている。
そうして侍女さんたちが喜んだのは『あなたの色に染めて下さい』というのを
オレが教えた時だった。
「素敵です! 白って赤子と死者のイメージしかなかったです。
産まれ変わってアナタの色に! 素敵です!」
でも布地とかベール用のチュールかレースまで準備出来ますかね?
「大丈夫です。
お子様が出来たと感づいた貴族達から山のように白の布が献上されてます。
百人お子様が出来ても大丈夫なんですよ。
材質は様々ですが花嫁にふさわしい物もございます。
あとはデザインですね」
お子様が百人……みんなオカシイよ!
王家に子供が出来るってことがそんなに喜ばしいことだとは知らなんだ!
でも当然余るだろうその布地ってどうするんだろう?
「ご心配には及びませんよ。
染色して御衣装にもなりますし下賜品にもなったりします。
献上してくださったお気持ちを無駄にはできませんから」
思惑が無いとは言えないだろうけどお祝いの品なんだもんな。
ちゃんとどうするのかは決まってるんだね。
デザイン画は描いたことが無かった。
でも彼女の前世の記憶やオレの姉達のドレスの記憶、魔王国のドレス、
魔女王国のドレス……描きまくるハメになったよ。
オレ、デザイナーでもお針子でも服屋でもないんだけど!